大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

オーディションに失敗したくらいで、いちいち落ち込んでる暇なんかないのだ。

   

長年業界におりますが、
いわゆる「オーディション」を受けたのは2回だけ。

2度とも見事に玉砕しました。

1つ目は、大学を卒業して間もない頃。
音楽学校で知り合った仲間に誘われて受けた、
なんと、東京ディズニーランドの、
園内で演奏するバンドのオーディション。

(え〜〜〜〜っ!??←街の声)
 

演奏する曲は自由ということでしたが、
選んだのはこともあろうに”What’s Going ON”。
しかもシンディ・ローパーのバージョンを、
かなりハードにシャウトして歌った記憶があります。
 
バンドは音楽学校の中でも評判の腕利き揃い。
ほとんどがすでにプロで活躍していました。
 
会議室のような場所で、
スーツ姿の人たちの目の前でやったにしては、
演奏も歌もなかなかのできで、
本人たちは至って満足でした。
 
しかし、落ちますね。
当然です。
 
ルックスも、選曲も、歌も・・・
どこをどう輪切りにしても、
東京ディズニーランドの求めている人材とは
かけ離れた存在だったに違いありません。
 
私がオーディションをやる側だったら、
「あらあら。なんかおかしなの紛れ込んで来ちゃったわね〜。」
と苦笑したでしょう。
 
「お呼びじゃない。」です。

 

それに気づいたのは、何年も経ってから。
 
おとなになって、
東京ディズニーランドに何度か遊びに行って、
やっと、そのとき求められていたのはどんなものだったかを知ったのです。
 
オーディションを受けた当初はお金もなくて、
ディズニーランドという場所にはほんの2〜3回出かけただけでした。
 
だから、オーディションに落ちたときは、
結構落ち込んだのを覚えています。

 

2つ目に受けたオーディションは、
某ミュージシャン事務所のオーディションでした。
 
すでにお仕事もそこそこしていて、歌にも自信がありました。
しかし、まだまだ仕事は不安定で、
事務所に所属するミュージシャンというものに憧れていた時期です。
 
そこに所属すればメジャーのお仕事がどんどんもらえるのでは?
という期待(幻想?)をいだき、
オーディション料を支払って、
その、大がかりなオーディションに応募しました。
 
ところが、先方から送られて来た課題曲は、
ユーミンの『土曜日は大キライ』。
 
さすがに、その頃は少しはものがわかるようになっていたので、
その曲を聴いた瞬間に、
「終わった・・・」と思いました。
 
年齢不問&経験不問と謳われたミュージシャンオーディション。
 
しかし、その課題曲に、
彼らが求めるミュージシャン像が、
メッセージとして、しっかりと刻まれていたのです。

 

「なに、この曲?
これ、どう歌えって言うの〜?」
 
課題曲を受け取って、そう思った時点で、
オーディション終了。ちーんです。
 
まぁ、せっかくお金を払ったので、
当日、オーディションを受けには行きましたが、
もちろん、なしのつぶて。落ちました。

 

 

オーディションに落ちて、嬉しい人はいません。
誰だって、落ち込みます。

 

しかしね。
 
落ち込む前に、いや、
そもそも、そのオーディションを受ける前に、
今一度、冷静になって考えてみるべきことがあります。

このオーディションは、誰が、なんのために開いているのか?
彼らは、どんな人材を求めているのか?
そもそも、本当に人材を集めるためのオーディションなのか?

 

オーディションを受ける人の多くが(若かりし頃の私も含め)、
勘違いしているようですが、
 
オーディションは、偏差値の高い順に受かるというような、
優劣を競う場とは少し違います。
 
ある種の才能を求めている人が、
その才能を持っている人を探すためのお見合いのようなもの。
 
お見合いで失敗していちいち落ち込む必要はありません。
 
そもそも、相手に望まれて、いざ付き合いだしてみたら、
こちらから願い下げということも、よくあることです。

 

お見合いに成功する秘訣は、
ベストパートナーに出会うまで、お見合いをし続けること。
 
落ち込んでる暇はないんですぞ。
若者よ。


【第4期 MTLヴォイス & ヴォーカル レッスン12】お申し込み終了間近です!
◆通えないという理由でレッスンをあきらめていた方のために【MTL Online Lesson12 10月生受付中!】
◆コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』。限定公開のレッスン映像もごらんいただけます。購読はこちらから。

 - My History, プロへの突破口, 夢を叶える

  関連記事

人に年齢を言うのをやめてみる。

年功序列文化の日本人は、年齢をアホほど気にする。 「何才ですか?」からはじまる会 …

「これでいいのだ」と言い切る勇気。言い切れるまで追い込む努力。

中学時代、先生や英会話部の先輩たちが口々に、 「カーペンターズの英語はきれい」 …

「認められたい」という思いを叶える方法

「音楽ビジネスって、社交クラブみたいなものなのよ。 一度中に入れば、そこから自然 …

情報か?経験か?

生まれて初めて弾いたギターは、 姉が持っていたクラシックギターでした。 中学入学 …

「いい仲間」いますか?

近年の私しか知らない人には全く信じてもらえないようですが、 かつての私の自信のな …

音楽を仕事にできる人

「音楽なんて仕事にならない」 「音楽で食べていくのなんて無理」 音楽を志し、日夜 …

1度きり、しかも1曲だけしかチャンスをもらえないとしたら?

「ちょっと歌ってみて」   長年自分の歌を認めて欲しいと思っていた人に …

「私、脱いだらすごいんです!」

「もっと自信を持たなくちゃ」 そう思っても、なかなか自信が持てないのが人間。 自 …

自分が生きてきた時間を過小評価しない。

誰にでも、自分が取るに足らないと感じるときはあるものです。 傍からは、順風満帆に …

「無理」って言うな!

「限界」は自分が設定するもの。   これが、かれこれ、半世紀ほど人間を …