大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

本当の声。好きな声。売れる声。

   

私、「自分の本当の声」がわからなくなっちゃって・・・。
私の「本当の声」って、どんな声なんでしょう?
どんな声を出したらいいんでしょう?

そんな悩みを聞くたびに、
日本人って、どれだけ「ひな形文化」に毒されているんだろうと、
残念な気持ちになります。

今ある声が、自分の声。
どんな色も、どんな音も、どんな形も、全部含めて自分自身。

こんな悩みを持つ人のほとんどが、
本来出るはずの声が、
緊張や自意識で押しつぶされ、押し戻され、
声を出すという行為に
「こんなはずじゃない」と、
無意識のフラストレーションを感じています。

「本当の声」がわからないんじゃなく、
気持ちよく声が出ていないから違和感を感じているんですね。

 

「自分の声が嫌い」という人に、
「じゃ、どんな声なら好きなの?」と質問すると、
たいがいの人は、「え?」と黙ってしまいます。

嫌いなのは、「自分の声」じゃない。
「自分が出す声」。

つまり、自分が出している声だから嫌いなんです。

そうした場合、変えるべきは声そのものではなくて、
自分自身に対する態度である場合がほとんどです。

自己認識や自己評価を変えれば、
声に対する意識も変わっていくものです。

 

業界では、こんな、「好きな声」「嫌いな声」「ホントの声」、
などというカテゴリーの他に、
「売れる声」というカテゴリーがあります。

 

「キミの声は売れないって言われたんです」。

デリカシーのない人間の心ないことばに振り回されて、
歌うジャンルを変えたり、
自分自身の歌い方のスタイルを変えたり・・・

そんな不毛で、悲しい努力をしてしまう人がたくさんいます。

 

じゃあ、どんな声なら、売れるのか?

 

答えを知っている人は、誰もいません。

 

「売れた人の声」というのはある。

でも、「売れた人の声」に似た声だったら、
「あぁ、○○みたいな声だね」と言われ、
一段価値が下がるのが業界というもの。

二番煎じやキャラかぶりはNGだからですね。

 

「ぐっとくる声」というものある。

でも、「ぐっとくる声」は人によってみんな違う。

ハスキーなロック声にぐっとくる人もいれば、
限りなく透明な、滑らかな声がたまらないという人もいる。
初音ミクの声に萌える、なんて人もいる。

ぐっとくる声の売れてない歌手なんて、
ごまんといるじゃありませんか。

 

仮に、「売れる声」という声のジャンルがあったとして、
そんな声のシンガーばかりが登場したら、
あっという間に飽きられて、
それは「売れない声」になってしまう。

「なに?この声?」が、やがて時の声になるときもある。

 

声は人なり。

自分自身を愛するように、
自分の声を愛したい。

自分の声を信じたい。

タグ付けなんか、どうでもいいんですよね。

 

◆ ビジネスマンのためのヴォイトレ・ワークショップBizLab(ビズラボ) 開講!詳細はこちら。◆2019年7月7日(日)MTLワークショップ in 鹿児島 vol.3
『ボヘミアン・ラプソディー』開催!

 - 声のはなし, 質問にお答えします

  関連記事

「自分の音域を知らない」なんて、意味わからないわけです。

プロのヴォーカリストというのに、 「音域はどこからどこまで?」 という質問に答え …

no image
サイレント映画俳優の「声」が聞こえるとき

昨夜、『アーティスト』という映画を見ました。 (詳しくはMISUMI offic …

音色の決め手は「箱」なんじゃ。

昨日、「音」はプレイヤーの命であるというお話をしました。 声は持って生まれるもの …

人間がカラダをつかってするとことは、 「なんでもおんなじ」。

「パキンっ!って音をとらえるのに大切なのは、 チカラじゃなくて、タイミングなんで …

no image
鼻呼吸か?口呼吸か?

ボイストレーナーをはじめて間もない頃、 生徒のひとりに、 「私、歌う時に、うまく …

no image
ボイトレHacks!?

昨日のブログでご紹介した8月3日のクリニック。 下記のような、3つのステップを踏 …

音は「楽器」じゃなくって、「人」が出すものなのです。

かつて、ドラムの神様と言われたスティーヴ・ガッドが来日した際のお話です。 &nb …

「これって、声の老化じゃないですか?」

クライアントの声のお悩みはさまざまですが、特に多いのが、 「年齢のせいもあると思 …

うまくなる人の5つの条件

「うまくなりたかったら、やっぱヴォイトレしなくちゃダメですかね?」 「学校みたい …

声のリハビリ

3月からのライブ・ラッシュに向けて、 朝トレをしているわけですが、 ここ半年あま …