本当の声。好きな声。売れる声。
私、「自分の本当の声」がわからなくなっちゃって・・・。
私の「本当の声」って、どんな声なんでしょう?
どんな声を出したらいいんでしょう?
そんな悩みを聞くたびに、
日本人って、どれだけ「ひな形文化」に毒されているんだろうと、
残念な気持ちになります。
今ある声が、自分の声。
どんな色も、どんな音も、どんな形も、全部含めて自分自身。
こんな悩みを持つ人のほとんどが、
本来出るはずの声が、
緊張や自意識で押しつぶされ、押し戻され、
声を出すという行為に
「こんなはずじゃない」と、
無意識のフラストレーションを感じています。
「本当の声」がわからないんじゃなく、
気持ちよく声が出ていないから違和感を感じているんですね。
「自分の声が嫌い」という人に、
「じゃ、どんな声なら好きなの?」と質問すると、
たいがいの人は、「え?」と黙ってしまいます。
嫌いなのは、「自分の声」じゃない。
「自分が出す声」。
つまり、自分が出している声だから嫌いなんです。
そうした場合、変えるべきは声そのものではなくて、
自分自身に対する態度である場合がほとんどです。
自己認識や自己評価を変えれば、
声に対する意識も変わっていくものです。
業界では、こんな、「好きな声」「嫌いな声」「ホントの声」、
などというカテゴリーの他に、
「売れる声」というカテゴリーがあります。
「キミの声は売れないって言われたんです」。
デリカシーのない人間の心ないことばに振り回されて、
歌うジャンルを変えたり、
自分自身の歌い方のスタイルを変えたり・・・
そんな不毛で、悲しい努力をしてしまう人がたくさんいます。
じゃあ、どんな声なら、売れるのか?
答えを知っている人は、誰もいません。
「売れた人の声」というのはある。
でも、「売れた人の声」に似た声だったら、
「あぁ、○○みたいな声だね」と言われ、
一段価値が下がるのが業界というもの。
二番煎じやキャラかぶりはNGだからですね。
「ぐっとくる声」というものある。
でも、「ぐっとくる声」は人によってみんな違う。
ハスキーなロック声にぐっとくる人もいれば、
限りなく透明な、滑らかな声がたまらないという人もいる。
初音ミクの声に萌える、なんて人もいる。
ぐっとくる声の売れてない歌手なんて、
ごまんといるじゃありませんか。
仮に、「売れる声」という声のジャンルがあったとして、
そんな声のシンガーばかりが登場したら、
あっという間に飽きられて、
それは「売れない声」になってしまう。
「なに?この声?」が、やがて時の声になるときもある。
声は人なり。
自分自身を愛するように、
自分の声を愛したい。
自分の声を信じたい。
タグ付けなんか、どうでもいいんですよね。
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