マスクは「声」をダメにする!?
先日、新宿駅を歩いていたときのこと。
背後でおしゃべりしている若い女性たちの声を聞いて、
「あぁ、2人ともマスクしてるのね」と、
なんだかピンときて振り返ってみたら、
案の定、2人ともピッタリと、
正しくマスクをつけていました。
インフルも怖い。
コロナはなんだかもっと怖い。
なにより、花粉が冗談じゃない。。。
こんなご時世ですから、
日ごろアンチマスク派の私にも、
みんながマスクを手放せない気持ちはよ〜くわかります。
ばい菌や花粉から身を守ってくれるマスク。
ノドを乾燥から守ってくれるマスク。
自分が体調不良の時には、
他の人に迷惑をかけないためのマスク。
今や売り切れ店続出で、値段も高騰している超人気のマスク。
しかし、このマスク、
「声」にとってはいいことばかりではありません。
今日は、毎日マスクと付き合う今だからこそ、
知っておきたい「マスクと声」のお話をいたします。
●マスクは人を「鼻にかかった声」にする。
マスクをかけると、
人の耳に一番届きやすいと言われている、
2〜4kHz周辺の周波数が弱まります。
これが、マスクをすると声がこもる理由。
聞き取りやすい周波数が弱まるから、
言っていることを聞き取ってもらえない、
聞き返される、ということが増えてきます。
そこで人は何をするか。
鼻に声を響かせるんです。
つまり鼻にかかった声を出す。
若き女子たちのみ〜み〜聞こえるような声、
というとわかりやすいでしょうか?
鼻にかかった声はマスク声と反対に、
2〜4kHzがめちゃくちゃ強調されます。
声を鼻にかけることで、
マスクでカットされた周波数を補って、
音のバランスを取るわけです。
声を鼻にかけるのは、いわば知恵ですから、
マスクをしている時に意図的に使うだけならOKなのですが、
多くの人は、これを無意識にやります。
無意識に、習慣的に、こうした声を出していると、
それが「自分の発声」「自分の声」として、
脳に、カラダに、染みついてしまう。
これが、マスクを常用している人に、
鼻にかかったような発声の癖を持つ人が多い理由と考えています。
●マスクは人を無表情にする。
マスクをしながら話すとき、
表情筋を大きく動かしたり、
口を大きく開閉したりして話すと、
マスクがずれまくって、
鬱陶しくて仕方ない、という経験はあるでしょうか?
実は、私がマスクを好まない大きな理由のひとつに、
私の表情筋の動きの激しさがあります。
マスクをしたままおしゃべりをすると、
しょっちゅうマスクの位置を直さなくてはならないのです。
ところが、マスクを常用している人たちは、
そんなことまったく気にならないようす。
そこで、彼らを観察してみると、
マスクを取っても表情筋が動かない、
ということが多々あります。
マスクをつかっても不自由を感じないように、
表情筋の使い方を最適化したのか?
それとも、そもそも表情筋が発達していないから、
マスクをつかってもずれないのか?
こうなるとニワトリとタマゴですが、
いやいや、これはゆゆしき問題です。
欧米でマスクが流行らないのは、
もしかして、
欧米人の表情が日本人よりも圧倒的に豊かだから、
というのもあるのじゃないのか?
使わない筋肉は退化します。
マスクをかけている時間が長くなるほどに、
顔の筋肉はつかわれなくなり、どんどんやせ細る。
筋肉の上に老廃物や脂肪がたまって、顔まわりが重くなる。
すると筋肉はさらに動かなくなる。
負のスパイラルです。
さらに、
「マスクで顔が見えないんだから、愛想笑いは無駄」
というのでもないんでしょうが、
みんな顔の下半分の筋肉が、
どんどん落ち、口角が上がらない、
無表情な顔になっています。
声の表情は顔の表情。
お医者さんに、声の表現が苦手な人が多いのは、
一日中マスクを着用しているせいもあるのではないか?
うちにいらっしゃるお医者さんや医療関係者のみなさんには、
ずいぶん前から、そのようにお話しています。
まぁ、お医者さんにあんまり表現力豊かに話されても、
患者さんは困るでしょうから、
淡々とした、クールな表現は、
お医者さんという職業の人たちの
「サウンド」とも言えるかもしれません。
慣れとは恐ろしいもので、
無表情で話していると、
無表情な自分の声に慣れる。
自分が無表情でいることにすら、気づかなくなります。
ただでさえ、SNSの発達で
声のコミュニケーションの機会が減っている昨今。
声の表現力は、表情筋と共に、
どんどん退化していると言えるでしょう。
●マスクは人を口呼吸にする。
我が家にやってくる、
マスク派のみなさんにインタビューをしたところ、
マスクをしている時、
無意識に口を開けっ放しにしている、
という人が実にたくさんいました。
マスクをしていると息苦しい。
そもそも、口元を人に見られていないんだから、
口を閉じる必要もない。
なんといっても、マスクをしているから、
口の中が外気から守られていると感じる…etc.etc.
いやいやいやいや。
実は、この習慣のせいで、
マスクをしているときの方が、
ノドが乾きやすいという人も多く見られます。
ちょっと考えてみてください。
周囲のばい菌から身を守るためにマスクをつけているのに、
口を開けっ放しって、なんだか本末転倒じゃないですか?
マスクのwith、withoutに関わらず、
口元はしっかり閉じて、鼻呼吸を心がける。
鉄則です。
いかがですか?
当分、マスクとの付き合いは続きそうです。
マスクをかけても口をしっかり閉じ、鼻呼吸を心がける。
時々、マスクをはずして、しっかり顔の筋肉を動かす。
マスクを使わなくていい場所では、
声をしっかり響かせ、表情豊かに話す。
自分は大丈夫と思っている人ほど、危ないもの。
今日からぜひ、心がけてくださいね。
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