大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

声の優先順位

      2015/12/20

「いい声」とはどんな声でしょう?

ハッキリ、くっきり聞こえれば、「いい声」というわけではありません。
深い響きがあっても、暗い印象の声もあれば、
明るくて、よく抜ける声なのに、どこか軽薄な印象の声もあります。

弱々しい声と、セクシーな声は、ときに紙一重ですし、
信頼感を感じる声と、押しつけがましい声は、似ているようで微妙に違います。

ことばで読むと、複雑で、専門家にしかわからない、
特別な特徴があるかのようですが、
なんのことはない、ほとんどの人が、声に乗った情報を本能的にキャッチし、
「この人はこう言う人」と判断するのに一役買っているのです

「私、正直、自分の声のことなんか、考えたこともありませんでした。」

そんな人の方が、寝ても覚めても声のことを考えている私のような人間よりも、
きっとずっと多いのでしょう。

声のことが気になるのは、風邪をひいたときや、
なんらかの原因で声が出にくいときだけ。

それで成立している人がほとんどなのです。
12124461_s

ではあなたはどうでしょう?

自分という人間を構成する要素を考えた時、「声」は何番目くらいですか?

見た目。思考。言語能力。運動能力。パーソナリティ−。嗜好。
経済状態。センス。。。。

そうやって考えて行くと、声そのものの優先順位は驚くほど低いかもしれません。

しかし、人が人をジャッジするとき、声の優先順位は非常に高い。

声を聞いた瞬間に、
相手の年齢、性別、伸長、体重、体格、
さらにはパーソナリティや健康状態などを本能的にキャッチします。

男性は女性の性ホルモンの状態までをも、「なんとなく」わかるといいます。

「見た目が大事」と考える人はこんなにたくさんいるのに、
同じくらい、印象を左右する「声が大事」と、
声の優先順位を高めに考えている人は、まだまだ少数派。

それでも、綺麗な人がだみ声だと、「残念」と感じ、
どんなに若々しくしていても声を出した瞬間に年齢がバレます。

 

「声に興味がない」「問題を感じたことがない」という人たちも、
自分で気がついていないだけで、
声に抑揚がなかったり、音域が狭かったり、強弱が感じられなかったりと、
声にフォーカスすれば、さまざまな「印象」のマイナス面が出てきます。

「声」で、損をしているんです。

視覚に偏りがちな意識を、どうしたら、聴覚に、「声」に持ってこられるか・・・

最近の私の大きなテーマです。

 - 声のはなし

  関連記事

「声が低けりゃ威厳を感じるのか問題」を考える。

ヴォーカリストの悩みで一番多いのは、 「高い声が出ない」。 一方で、ビジネスパー …

風邪でもなんでも 「声を出さなくちゃいけない時」に絶対やること

現在アニメディレクターとして仕事をする姉が、 まだ、ただのアニメオタクだった、中 …

「聞き心地のいい声」で話して。

先日、とある人がYouTubeで話しているのを聞いて、 「この人、ホントはすっご …

誰も「いい声」になんか、興味ない。

『アラジンと魔法のランプ』の実写版、 『アラジン』が話題です。 こどもの頃、 3 …

歌を学ぶ人の3つのステージ

私は歌を学ぶ人には、 3つのステージがあると考えています。 ひとつめは楽器として …

あなたの楽器、いい音出てますか?

楽器は音色がすべて。 ピッチを正確にとか、 リズムをしっかりとか、 ダイナミクス …

精度の高い”フォルティッシモ”を持て!

ダイナミクス、すなわち音量の強弱のコントロールが 音楽表現の大切な要素であるとい …

退化か?最適化か?顔筋がなくなる日。

この秋から、新たに、新人グループの育成を担当しています。 高校生から20代前半の …

臨界点を突破する

「どんなに練習しても、高い声が出ない」 「毎日ボイトレしているのに、声量が上がっ …

声のリハビリ

3月からのライブ・ラッシュに向けて、 朝トレをしているわけですが、 ここ半年あま …