大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「あの〜、お仕事あったら、よろしくお願いします。」

   

「あの〜、なんかお仕事あったら、よろしくお願いします!」

 

ミュージシャンとなって、
一度も、一言も、
営業的なことばを発したことがないとしたら、

そして、それでも、
がんがんお仕事がまわってきて、
仕事に困ったことがないとしたら、

 

よほどの天才か、超ラッキーか、
その両方かのどれかでしょう。

この業界では、お仕事は、
どどどと来たかと思うと、ぱたりとこなくなる。

毎日、「もういい加減、電話してくるのやめて!」と、
叫びたくなるほど、忙しいかと思えば、

あるとき、突然、誰からも連絡がこなくなり、
「みんな、私の連絡先、なくしちゃったのかしら・・・」
と、地味な気持ちになる。

 

まぁ、株みたいなモノと一緒で、
長期的に、腰を据えて取り組む仕事であって、
短期的に、一喜一憂する人は負けるようにできているわけです。

 

さて。

 

私自身、駆け出しの頃は、
お仕事がぱったりなくなって、
先輩ミュージシャンに、「なんかあったらお願いしま〜す」くらいのことは、
言ったことがあります。

欲しいものは欲しいと口に出して言わなくては、と、
思っていた時期です。

 

しかしです。

残念ながら、「お仕事あったらください」と言ったくらいで、
簡単にお仕事はきません。

 

たとえば、近所のケーキ屋さんのチラシが入って来ても、
人は、わざわざ、ケーキを買いに、そのお店に出かけません。

コンビニで十分美味しいお手頃なケーキが買えるのに、
わざわざ行ったこともない,美味しいかどうかわからないお店に出かけて、
高いお金を払う理由がないからです。

 

では、ケーキ屋さんがサンプルをくれたらどうでしょう?

あなたは、通りすがりの人にもらった、
ケーキのサンプルを食べる勇気がありますか?

デパ地下や、スタバなどのサンプルは別です。

実際、知らない人にもらった食べ物は口にしないこと、という
鉄則まであります。

食べ物のサンプルは、よほどお店に信用があるか、
知り合いにもらったものでないかぎり、
口にしてもらえないもののひとつです。

 

音楽も同じ。

ただデモをばらまいても、聞いてくれる確率は、そう高くはありません。

 

「え〜〜っ!?
じゃあ、どうしたらいいんですかぁ〜、MISUMIさぁ〜ん!!!」

 

 

話はシンプルです。

いきなり商品を売ろうとしても売れないんです。

 

だから、

 

周囲の人に信用を得られるような関係性をつくること。

 

自分自身が口コミを起こせるようなクオリティになること。

この人の役に立とうと思ってくれるような人と出会うこと。

 

親しい人に、損得抜きで、美味しいものを精一杯振る舞えば、
そして、ご馳走になった人が、感動して、感謝すれば、
誰かにしゃべってくれます。

「しゃべりたくなる」から口コミがおき、
影響力のある人の口コミが、自分を次のステージに連れていってくれるのです。

 

「こんなもんか」と仕事をしない。
「この人に気に入られても、得にならない」と高をくくらない。

 

ひとりでも多くの人に、届けられるように、
どんどん世の中に出て行き、

届けた人がしゃべりたくなるクオリティになるように、自分を整え、

可能な限り、世の中に、周囲に貢献できるよう、
自分の環境をつくる。

 

結局、どんな広告を打つよりも、
効果的なのは、自分のクオリティを上げること。
そして、感情移入してくれる、協力者をつくること。

これに尽きるのです。

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 - The プロフェッショナル, 音楽人キャリア・サバイバル

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