高揚感を抱えて眠れ〜LIVEの夜の過ごし方〜
演奏者がLIVE終了後にどんな気分でステージを降りるかは、
ミュージシャンの性格や状況、LIVEの出来、音響の善し悪し、
お客さんの入りや、反応、スタッフの反応・・・などなど、
さまざまな要素に左右されます。
「いやぁ、最高だったぜ!いぇ〜い!」と盛り上がって、
全身汗びっしょりで、メンバーやスタッフみんなに、
握手やハグを求めるプレイヤーもいれば、
タオルも不要なほど冷静で、
「お疲れ様」とクールに言うだけの人もいます。
気分はそれぞれ違っても、
人前で、ライトを浴びて、大きな音量で演奏すれば、
人は、多かれ少なかれ「高揚感」を感じるもの。
私は、この「高揚感」が、
ボーカリストやプレイヤーを育てる、と考えています。
どんなベテランにとっても、人前に立つということは「非日常」です。
強いライト、音響、
そして何十人、何百人、ときに何千人もの人たちの視線。
何十時間リハーサルしても、
この特別な感覚を疑似体験することはできません。
高揚、興奮、そして、緊張することで、
表現力が豊かになったり、
アドレナリンが出て、ダイナミックな演奏ができたり、
一方で、気合いが入りすぎて演奏が一本調子になったり、
覚えていたはずの歌詞やコードが飛んでしまったり・・・
高揚感を体験することで、自分の中にさまざまな発見があるのです。
さて、この高揚感。
LIVEが終了しても、しばらくの間、カラダの中を駆け巡っています。
この、暴れ馬のような「高揚感」を落ち着かせるために、
打ち上げをする人もいれば、
高揚する気持ちを起爆剤に、反省会をする人もいる。
中には、その日のLIVEのビデオを持ち帰って、
一人チェックする人もいるかもしれません。
私の個人的感覚としては、
どんな過ごし方をしても、
その夜のうちに、「高揚感」を燃やし尽くしてしまわないことが、
次に繋げるポイント。
実は、最も冷静にその日のプレイを分析したり、
素直な気持ちで振り返り、しっかりと味わえるのは、
高揚感から自然に覚めるタイミングです。
興奮して、なにがなんだかわからないようで、
人は、実はいろいろなことを明確に感じ取っています。
単に、それが、高揚感でマスキングされて意識に昇ってこないだけです。
こんなときに、ダメ出しをしても、
冷静な判断はできません。
不必要にお互いを傷つけたり、反対に誉めすぎたり。
時間ばかり使う割りには、建設的な議論も出ません。
自分1人でビデオを見れば、
「こんなはずじゃなかった」と不必要に落ち込んだり、
過大評価してしまったり。
また、打ち上げで朝まで思いきり飲んだくれて、
気がついたら、二日酔いで気分悪くて・・・というのでは、
「高揚感から覚める黄金のタイミング」を完全に逃してしまいます。
それではあまりにもったいない。
暴れ馬をおとなしくさせるために、軽く打ち上がる。
気楽にメンバーとしゃべる。
もしくは、自宅に帰って、ちょっぴりのんびり過ごす。
そうして、余韻のように残る、心地よい高揚感を抱えて眠るのです。
朝起きると、脳の中でさまざまなことが整理整頓され、
次に繋がるようなアイディアや反省や感情が出てくる。
そこからが、本当の次へのスタートです。
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