大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

高揚感を抱えて眠れ〜LIVEの夜の過ごし方〜

   

演奏者がLIVE終了後にどんな気分でステージを降りるかは、

ミュージシャンの性格や状況、LIVEの出来、音響の善し悪し、
お客さんの入りや、反応、スタッフの反応・・・などなど、

さまざまな要素に左右されます。

 

「いやぁ、最高だったぜ!いぇ〜い!」と盛り上がって、
全身汗びっしょりで、メンバーやスタッフみんなに、
握手やハグを求めるプレイヤーもいれば、

タオルも不要なほど冷静で、
「お疲れ様」とクールに言うだけの人もいます。

 

気分はそれぞれ違っても、
人前で、ライトを浴びて、大きな音量で演奏すれば、
人は、多かれ少なかれ「高揚感」を感じるもの。

 

私は、この「高揚感」が、
ボーカリストやプレイヤーを育てる、と考えています。

 

どんなベテランにとっても、人前に立つということは「非日常」です。

強いライト、音響、
そして何十人、何百人、ときに何千人もの人たちの視線。

何十時間リハーサルしても、
この特別な感覚を疑似体験することはできません。

 

高揚、興奮、そして、緊張することで、

表現力が豊かになったり、
アドレナリンが出て、ダイナミックな演奏ができたり、
一方で、気合いが入りすぎて演奏が一本調子になったり、
覚えていたはずの歌詞やコードが飛んでしまったり・・・

 

高揚感を体験することで、自分の中にさまざまな発見があるのです。

 

さて、この高揚感。
LIVEが終了しても、しばらくの間、カラダの中を駆け巡っています。

 

この、暴れ馬のような「高揚感」を落ち着かせるために、
打ち上げをする人もいれば、

 

高揚する気持ちを起爆剤に、反省会をする人もいる。

 

中には、その日のLIVEのビデオを持ち帰って、
一人チェックする人もいるかもしれません。

 

私の個人的感覚としては、

どんな過ごし方をしても、

その夜のうちに、「高揚感」を燃やし尽くしてしまわないことが、
次に繋げるポイント。

 

実は、最も冷静にその日のプレイを分析したり、
素直な気持ちで振り返り、しっかりと味わえるのは、
高揚感から自然に覚めるタイミングです。

 

興奮して、なにがなんだかわからないようで、
人は、実はいろいろなことを明確に感じ取っています。

単に、それが、高揚感でマスキングされて意識に昇ってこないだけです。

 

こんなときに、ダメ出しをしても、
冷静な判断はできません。

不必要にお互いを傷つけたり、反対に誉めすぎたり。

時間ばかり使う割りには、建設的な議論も出ません。

 

 

自分1人でビデオを見れば、
「こんなはずじゃなかった」と不必要に落ち込んだり、
過大評価してしまったり。
また、打ち上げで朝まで思いきり飲んだくれて、
気がついたら、二日酔いで気分悪くて・・・というのでは、
「高揚感から覚める黄金のタイミング」を完全に逃してしまいます。

それではあまりにもったいない。

 

暴れ馬をおとなしくさせるために、軽く打ち上がる。
気楽にメンバーとしゃべる。
もしくは、自宅に帰って、ちょっぴりのんびり過ごす。

 

そうして、余韻のように残る、心地よい高揚感を抱えて眠るのです。

 

朝起きると、脳の中でさまざまなことが整理整頓され、
次に繋がるようなアイディアや反省や感情が出てくる。

 

そこからが、本当の次へのスタートです。

 

20433881_s

 

 

 

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

練習を「単なる時間の無駄」で終わらせないための3つのポイント。

歌を志すことになったのは、 私にとって、ある種の「挫折」でした。 そんなことを言 …

苦手な「リズム感」や「タイム感」を徹底的に磨く3つのポイント

「リズムが悪い」「タイム感が悪い」と自覚している人や、 「自覚はないけど、人にそ …

理屈は後付け。

先日の『イケてないロック・ヴォーカルは、なぜイケてないのか?』、 たくさんの方に …

「慣れる」と「油断しない」の塩梅がムツカシイ。

今日、久しぶりにひとりで買い物に出かけました。 買い物に出たのは文具なのですが、 …

「切り替え」と「集中」で精度を上げる!

インプットとアウトプットを、 高い精度で両方一度にこなせるという人は 一体どのく …

no image
歌の構成要素を分解する〜ラララで歌う〜

大好きな曲を、オリジナルを歌っている歌手と一緒に歌う。 何度も、何度も、繰り返し …

「なんか、できちゃうかもしれない」妄想

ロックダウンを機にスタートした英語のレッスンも8週目。 今日も、”S …

「とにかくやる」

「やりたくないときほど練習をすると、やってよかったと思えるわよ」   …

練習の成果は「ある日突然」やってくる

はじめて「上のF」が地声で出た瞬間を、 今でも鮮明に覚えています。 学生時代は、 …

「歌うことをはじめる」はじめの一歩をどう踏み出すか。

「ずっと歌をやりたかった。」 そんな風に思っている人は、数え切れないほどいるよう …