大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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英語の歌詞って、どうやって覚えるの?

   

「歌詞を覚える」というのは、ある種の習慣です。
何を当たり前と思うか、という気構えのようなところがある。

個人的には、人前で歌詞カードを見ながら歌う、なんてことは、
アマチュアバンド時代から、まぁ、あり得ないことのひとつ。
1ヶ月に何本もセッションに呼ばれていた時代もあるし、
いわゆるお仕事のステージもたくさんあったから、
絶対やらなかったかというと自信はないけど、
まず、やりたくない、やっちゃいけないことです。

理由は簡単で、
ティナターナーもチャカカーンもロバートプラントもスティングも、
歌詞カード見てる人なんか、ひとりもいなかったから。
役者さんが台本持って舞台に上がらないのとおなじくらい当たり前のことなんで、
逆に当たり前のように歌詞カードをガン見している人を見かけると、
ドキッとしてしまうんです。

とはいえ、「英語の歌詞が覚えられない」という人の中には、
歌詞を書き写す、歌詞カードを見ないようにしながら、練習する、何度も歌う、というように、がんばってもがんばってもアタマに入らない、と悩む人も多くいます。

J-popなら直ぐに覚えられるのに、英語の歌詞だと頭に入ってこないという理由は簡単。
英語が自分の言語じゃないからです。
つまり、歌詞が単なる符号になってしまっている。
だから、「じゅげむじゅげむ…」と唱えるように覚えるしかないわけですね。

反対にJ-popが覚えやすいのは、ことばがすぐに映像化され、自分の実体験と結びつくから。
たとえば、「夏の日」というひとことで、次々といろんな想い出や感覚、匂いが引き出されて、歌詞の中の「夏」と自分自身がリンクしていくからです。

英語をつかって生活した経験がないと、これが置きにくいわけです。
“Summer time”ということばで蘇るのは、せいぜいサラやジャニスの歌声。
レコードジャケットくらい。
ことばがポンと、いろんな想い出と紐付くという人は、日本人には希ですよね。

歌詞が覚えられるか否かは、この連想ゲームが起きるか否かと大きく関係があると考えています。

外国語の歌詞を覚える時に、まずやるべきは、一旦、自分のことばに落とし込むこと。

そう言うと、翻訳ソフトかなんかで、ちょちょいと訳した文章を読んで聴かせてくれる人がいるんですが、それだと、「単なる符号」が「わかりやすい符号」に変化したに過ぎません。

自分のふだん使っていることばに置き換える。
これ、めちゃくちゃ効果あります。

たとえば、
“And I will always love you.”
を翻訳ソフトみたいに訳せば、
「そして、私はいつもあなたを愛しています。」
となるわけですが、このことばで体温感じますか?感情移入できないでしょ?

「だから、ずっとずっと好きだから」だったらどうですか?
そこに感情が生まれませんか?

これをやると、J-popを歌う時とおなじように、歌詞を口にしながらさまざまな光景が浮かぶようになります。

文化が違うので、どうしても腑に落ちないことばも出てきますが、
そしたら、自分の文化だったらこんな感じかな?ってことばに置き換える。
自分自身の生活と歌詞の世界をリンクさせる。

ぜひ、試してみてください。

 

よく読まれているこの記事も、どうぞ↓
英語の歌詞を完璧に覚えるオタッキーな方法


 

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