「感覚の違い」を教えることが、一番難しい。
家の近くのチェーンで有名な定食屋さん。
最近、どうもようすが変わってきました。
通されたテーブルや座席に、油っぽい汚れがついている。
ワインを頼んだら、とんでもなく汚いグラスを持ってくる。
箸箱の中の箸は染みだらけ。
料理の盛りつけも、どう見てもメニューと全然違う・・・。
ついには味付けまで、あれ?こんなだっけ?
・・・と言うのが出てくる始末。
あぁ、困ったなぁと、
こんな時、思ってしまいます。
最近、そのお店、
外国人を中心に回っているんです。
モンゴル系の人、
インド系の人、
中国系の人・・・
みんな、おそらくは、
母国ではけして要求されなかったに違いない笑顔で、
終始一所懸命働いています。
しかしね。
日本人の清潔感覚や味覚を彼らに伝えるのは、
おそらく一番難しいこと。
日本人には独特の、
「気持ち悪い」「気持ちいい」という清潔感覚があり、
レシピには表せない、絶妙な「塩梅」があり、
「きちんと」や「だらしない」という美意識があります。
どんなに社員教育をがんばっても、
こればかりは、そう簡単に教えることのできない、
「育ち」の領域なのでしょう。
そういえば、
近くにある、超人気カレー店でも、
外国人の女性が盛りつけを担当している時は、
頼み慣れたメニューが、
「アレ?こんなだっけ?」という姿で出てきます。
なにが違うか、と言われると、答えに困る。
ライスの盛り方も、添えてあるマッシュポテトの盛り方も、
カレーやトッピングの盛り方も、おそらくはマニュアル通り。
本人も、けして手を抜いているわけではないでしょう。
真面目に、一所懸命働いている。
だけど、やっぱり出てきた料理は雑な仕上がり。
お客としてお店に行く方とすれば、
「なんか最近、雑だな」と感じてしまうかもしれない。
外国人ばかりではありません。
「感覚」や「塩梅」を教えることが、
人を教育する上で、もっとも難しく、
そして、最も大切なことなのだと、
しみじみ考えさせられる日々です。
「なんでわからないの?」と漠然と注意すれば、
「こんなに一所懸命がんばっているのに、一体何が不満なのか?」
と思うかもしれない。
「もっと○○して」「もっと△△に気を配って」と事細かに注意すれば、
「こだわりが強すぎて、窮屈でやってられない」と、
言い出すかもしれない。
面倒になって、放置すれば、
こちらが作り上げたブランドやイメージをぶちこわしにするような、
突拍子もない行動を取るかもしれない。
「感覚の違い」を埋めることは、たやすいことではありません。
お互いがそれを望み、逃げ出さず、
徹底的に向き合って、やり合うしかない。
どんなに時間がかかっても、
向き合うだけの覚悟や、
お互いへの信頼感があれば、もちろんそれがベストでしょう。
しかし、お互いにそれほどの忍耐も信頼も持てないなら、
やはり、勇気を出して、
離れる決意、離れてもらう決意をするしかありません。
ずれているのは「思い」ではなく、
「感覚」ですから、
決意をする側は、なんと思われようと
バサッと切り捨てるくらいの覚悟が必要です。
覚悟がないと、情に流されて、
判断するタイミングを見失ったり、
「こんなにがんばっているのに」、
「悪意を感じる」などと、
感情論に持ち込まれたとき、
自分自身の価値観がぐらついたりするからです。
感覚が違うということは、善でも悪でもありません。
「違い」です。
ある者が構築してきた世界観において、
その「違い」が致命的な欠陥になるなら、
離れてもらうしかない。
離れるしかない。
ブランドを築き上げることの厳しさ、
人を教育することの難しさ・・・
そんな観点から、世の中を見てみると、
褪せることないブランド力を保ち続けている企業やコミュニティの、
勇気や決断力をひしひしと感じたりします。
なにごとも勉強です。
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