大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「腕は良いのに仕事が来なくなる人」

   

音楽業界には、

「なんであの人に、あんなに仕事くるんだろうね〜?」と影で噂される、
謎の多忙ミュージシャンがいる一方で、

 

「あの人、仕事なくなっちゃうの、しょうがないよね〜。
腕はいいのに、本当にもったいないね。」

と、暗黙ながら、誰もが納得する、残念なミュージシャンがいます。

 

実力至上主義のミュージシャン稼業。
飛び抜けて実力があれば、まわりが放っておかないし、

1回1回きちんと、周囲をうならせるレベルの結果を出していけば、
仕事は口コミでどんどん広がるはず。

・・・そう。はず、なのです。

 

が、しかし、
十分な実力があるにも関わらず、お仕事が広がらない、
または、減ってしまう人には、
やっぱり周囲が「しようがない」というだけの、理由があるもの。

 

今日は、いつものように、自分の胸に手をあてながら、
真摯な気持ちで、「腕は良いのに仕事が来なくなる人」の特徴
を書いてみたいと思います。
 

注:
この文章はあくまでも一般論であって、
誰か特定のことを書くものではありません。
文中に特定の人物を思わせる表現があっても、あくまでも偶然です。

 

1.時間にいい加減。

 

一流の人に時間にいい加減な人はいません。

なぜなら、時間にいい加減な人は端からお仕事が来ないからです。

 

バンドメンバーが1人でもいなければ、リハーサルははじまりません。

レコーディングの現場に1時間入るのが遅れて、
ギャラの高い人を何人も待たせれば
何十万というお金を捨てることになった時代もあります。

新幹線に乗り遅れれば、
地方の駅から会場まで、自分1人のためにスタッフを動かさなくてはなりません。

飛行機に乗り遅れれば、
最悪はコンサートに穴を開けることさえあります。

 

そんな大事な「仕事」に、
時間がいい加減な「やばそうなヤツ」は絶対に呼ばれません。

そして、そういう噂は瞬く間に広がります。

 

2.準備が悪い。

 

当たり前のことなのですが、

「リハーサル」というのは、音合わせをする場です。

つまり、個人が準備をしてきた成果を、今度はバンドとして確認する場所です。

 

用意してきた音色が他の人の音色と合わないから微調整しようとか、

グルーヴの解釈が違っているから、どういうアプローチでいこうとか、

このままのアレンジじゃ芸がないから、アイディアを出し合おうとか、

とにかく、1X5を20にも、30にもする場。

 

ところが、この肝心の、当たり前の準備ができない人が多すぎる。
コンサートレベルの現場で、そういう人に遭遇することは非常にレアですが、

ライブの現場だと、
こんな当たり前のことがクリアできていないミュージシャンも、たくさんいます。

もちろん、そういうスリルを楽しむ音楽もありますから、一概には言えませんが、

「きちんと準備のできないヤツ」を人に紹介したり、
お仕事に誘ったりするのはこわいですね。

 

 

3.お金にうるさい。

 

誤解しないでください。

「いくらでもいいよ」などと、いい人になれとか、
相手の言い値でばかり仕事をする、便利屋になれと言っているわけではありません。

 

人には人のスタンダードがある。
自分が納得できない金額で仕事をすれば、
それだけモチベーションが下がって、仕事のクオリティに影響が出ます。
とはいえ、制作現場には「バジェット」というものが必ずあって、
それ相応の金額を提示されるのが普通。

バブル時代のように、湯水のように予算があるわけではありませんから、
ある程度折り合いをつける努力も必要です。
「お金にうるさい」人というのは、
相手の立場を顧みず、
かつて自分がもらったことのある最大のギャラをしつこく要求したり、

少ないギャラで仕事せざるを得ないことに、ねちねち文句を言ったり、

機材費だ、移動費だ、ローディー代だと、
細かくちょっとでも多くのお金を引き出そうとしたり・・・

 

どんな世界でも、お金にうるさい人、せこい人、細かい人というのは、
やっぱり好かれることはありません。

 

4.私生活に問題がある。

 

たいがいのことは笑って許されるミュージシャン稼業ですが、
それも程度問題。

 

 

たとえば・・・

アルコールの問題を抱えているミュージシャンは実にたくさんいます。

朝起きるとすぐから、ビール程度でも、
とりあえずアルコールが入っていないと仕事に行けないという人や、

入り時間からライブ終了時間までの間にボトルを空にする人など、

ツワモノたちも・・・

 

しかし、問題なのは飲む量ではありません。
お酒に飲まれる頻度です。

 

アルコールが原因で本番に大きなミスを繰り返したり、
人にケンカを売ってしまったり・・・

そんなことが続けば、とうぜん、目に余ると思う人も出てくるでしょう。

 

アルコールだけでなく、
ドラッグやギャンブル、
中には女性問題(これは、たいがい許されるのがミュージシャンですが)・・・。

私生活に問題がある人は、
芸能界、大きなイベントやコンサートなどの
ちゃんとしたプロジェクトではNGを出されることが多いものです。

 

 

5.”俺様”すぎる。

 

いっぱい仕事をして、キャリアを積めば、
人はどんどん自信がつくもの。

と同時に、年齢が上がって、
周囲のミュージシャンやスタッフが自分よりも年下になってくると、

自分の格を相手に見せつけたいという、「俺様根性」が出てくるのが人の常です。

上から目線でいろいろと物事を指南しているうちはまだいいのですが、

思い通りにならないことに文句をつけたり、

俺様がどんなにすごい人なのかを、相手にわからせようと、
次々、自分のキャリアをひけらかしたり、

気に入らないと「俺様を誰だと思っている!?」と相手を脅かしたり・・・

 

そんな”俺様”系をつかいづらいと思うのは、みな同じ。

 

また、レコード会社もプロダクションも世代交代が必ずあるものですから、
AD時代にいじめられた人を、
自分が出世してからわざわざつかってあげようという奇特な人はなかなかいません。

 

 

いかがでしょう?

 

なんだか当たり前のことばかりですが、
当たり前のことをずっと続けるのがプロ。

見失わないように、見失ってしまったと気づいたら、
素直に悔い改められるように、精進したいものです。

 

20742896_m

 - The プロフェッショナル, イケてないシリーズ

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

確信だけが、人の心を動かす。

「MISUMIさん、バッチっす!OKです!」 レコーディングのお仕事では、 歌っ …

早急になんとかしたい、姿勢・筋力・体力。

「最近の若者は・・・」などということが言いたくなるのは、 お年をめしてきた証拠で …

譜面台を立てる時のチェックポイント〜プロローグ〜

こちらのブログで繰り返し語っているように、 「ヴォーカリストたるもの、 人前で歌 …

歌は1人で歌うものではなく、チームプレー

「歌は1人で歌うものではなく、チームプレー」 今日、週末に大きなライブをひかえた …

音色の決め手は「箱」なんじゃ。

昨日、「音」はプレイヤーの命であるというお話をしました。 声は持って生まれるもの …

感情に翻弄されない クールに傾きすぎない

ずいぶん昔、サラ・ヴォーン(だったと思う)の来日公演を かぶりつきの席で見て、 …

音楽をやる理由?

自分とおなじくらい「音楽に夢中」という友達に出会えないことが、 学生時代の悩みで …

極度の緊張に負けない自分になる|本番で力を発揮するコツ

「極度の緊張」のため、肝心な舞台でしくじる。 舞台度胸がないとか、練習が足りない …

「ダメ出し」は信頼の証し(あかし)!

レコーディングなどで、歌っている最中、 自分自身が、「あ、イマイチだ」と思った歌 …

出音=声にこだわるべ〜し!

出た瞬間の「音」が勝負。 いろいろなところで、そう書いてきました。 一流は「音」 …