大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ヴォーカリスト必読!マイクとモニターの超絶役に立つお話!!!〜前編〜

      2016/03/09

昨夜のブログ、そしてメルマガにて、モニターやマイクのお話を書いたところ、

なんと音響のスペシャリストの方から、
fbのコメント欄に素晴らしいレクチャーをいただいてしまいました!

コメント欄で読んでくれた方もいるとは思いますが、
少しでも多くの方に幅広く読んでいただきたいので、
ご本人の許可を得て、また難しそうなところは、ちょびっとコメントを入れながら、
前後編に分けて、ご紹介させていただきます!
ヴォーカリストには、本当に必見の素晴らしいレクチャーなので、
難しくてもがんばって、必ず最後まで読んでくださいね。

 

レクチャーをしてくださったのは音響の専門家中の専門家・岡田辰夫さん
音響界のカリスマと呼ばれる方です。ひぇ〜。。。

 

岡田さんには1度、Guitar☆Manのイベントでお世話になったことがあります。
また、私がブログに音響関係のことを書くと、
いつもためになるコメントをいただいております。

正直、こんな方々に私の文章を読んでいただいてると思うとドキドキです。。。

岡田さんの他にも、各方面の、ドキドキする方からよく「いいね!」をいただき、
その度に、迂闊なことを書いてはならぬと、身を引き締めていますが・・・

 

さて、本題。

ここから岡田さんのレクチャーです。

 

ボーカリストがマイクやモニターの機能を知っていると音響家として心強いです。

PAを準備する立場から申せば、自分の声が聴こえなくても構わないと調整しているエンジニアは一人も居ません!
しかし現場ではボリュームを上げて欲しいという要求しか来ない不思議が存在します。」


そう。リハーサルで自分の声が聞こえないと、真っ先に言ってしまいがちなのが、
「声上げてください」なんです。
でも、耳がかゆくなるほどヴォーカルを上げてもらっても、解決しないときは解決しない。

 

「・・・やはり声が出ていない・小さいと言うのは問題外とします。ただアマチュアライブを担当する事も多いので、最初からボーカリストのせいにはしません。

PAさんはモニター・システムの性能や限界を考慮しつつ、これで大丈夫だろう・・と合わせます。しかし聴こえない・・何が原因???」

やはり、ある程度の声量は絶対大事。
でも、どんなに強烈な声で歌っても、聞こえない時は聞こえない。

・・・岡田さ〜ん、どうしてですか??

 

「一番の要因は「マスキング現象」
マスキングとは何か別の要因で自分の声が邪魔されてしまう現象です。

舞台に自分一人しかいない状況で声を出せば、先ず聴こえないという人はいません。その時のバランスを0:100(要因:自分)とします。

そこへもう一名のボーカリストが加わると50:50に下がります。

4名のボーカルが居れば75:25と 1/4まで下がってしまいます。

マイクの音量(フェーダー)は一切触っていないのに、自分のマイクだけ1/4にされたように感じてしまうのがこのマスキング現象です。」

 

マスキング現象については、メルマガでも触れましたが、
数値化されると、本当にわかりやすい!

なるほど!なるほど、です。

さらに岡田さんは続けます。
「この時の音量差は6dB(デービー)と覚えてください。これをミキサーのフェーダー目盛りに換算すると12dBも下がって聴こえるとなります。

まあ、、プロのボーカリストでも聴こえませ〜ん!と要求してくる状態・・
要するに「このモニターなんとかして〜!」とクレームが飛び交う最悪な状況と考えていいでしょう。」

12dbも下がって聴こえる!!!

どんなに声を出しても、音量上げてもらっても、聞こえてこない原因は、
マスキング現象にあるんですね。なるほどです。

さぁ、ここからが、めっちゃ大事なところです。

「・・・マイクの音量はモニターやハウス(客席向けスピーカー)とのバランスを考えながら決めます。エンジニアはハウリングしない音量、尚かつ低音から高音まで平坦でクリアな音質を目指します。
 ところがこれには様々な条件が重なります。

その一つがマイクの種類、その角度(向き)、スピーカー(SP)との距離。
スタンドに立てたマイクを一切動かさない条件だと、音量も音質も合わせ易いとなります。」

 

「そしてボーカリストが歌う時、口元とマイクの距離・角度が大きなポイントになります

どんなマイクにも「指向性」と「感度」が存在します。

指向性の狭いマイクはマイクの正面から来る声(音)に対して最大の感度を持っています。
横から声を入れても数十分の一に下がってしまう。つまりその性能により足元や舞台横にモニターがあってもハウリングし難くなるのです。

皆さんご存知のマイク「SHURE SM58・BATA58」というダイナミック型マイクが良く使われるのはその為です。

では口元とマイクとの最善の距離は・・? <5cm>です。

これ以上近づけるとポップノイズ(吐く息のノイズ)が強くなってしまい、ミキサーさんは低域を下げ軽減させてしまう事が多いのです。
 それは明瞭度を損なってしまう一番の要因が低域です。低域を下げないとバックで演奏する楽器の音(ベースやドラムの共振)も拾ってしまうからです。」

 

マイクとの距離はデリケートかつ、難しい問題です。

特にパフォーマンスでは、夢中になっているので、
適度なマイクの距離を保てない人が多く存在します。

自分の腕や手の角度、鼻の先とマイクのヘッド部分の大きさの関係などを覚えて、
カラダにたたき込むしかありませんね。
もちろん、声を聴きながら調整できる余裕があれば最高です。

 

「そして・・マイクの網部分は絶対に手で被わない! 
一度でもそれをするとミキサーさんは音量を上げてくれません!!

 ここ重要なポイント φ(゚0゚*) フムフム…φ(。_。*)メモメモ…」

 

昨今のアーティストたちのマイクの持ち方を真似て、
網の部分を囲んじゃう人がいるんですが、あれ、本当にNG!

後、マイクの持つ部分を思いきり鼻の方に上げるのも、
先ほど書かれていた音響面やマイクの指向性を考慮すればあり得ないですね。

アーティストの中には特注マイクを使っているという人もいるようですから、
マネするならその辺もよく研究する必要がありそうです。
「・・・指向性の広いマイクは広範囲に音を拾ってくれます。

その分だけハウリングにも弱いのですが、ジャズやシャンソンのように囁くような声のライブであれば問題になりません。
逆に歌手はマイクを意識しないで歌える大きなメリットが活かせます。 

 最近出回っているコンデンサー型ボーカルマイクがこうした音質重視のライブでよく使われるようになりました。その背景には音響システムのデジタル化によりクォリティも格段に進歩したからです。昔は使えなかったマイクが今は使える・・ 熟練エンジニアがよく発します。

SHURE「BATA 87」「KSM9」、NEUMANN 「KMS104・105」、DPA「d:facto II」等など・・ 他にもマイクメーカー各社から販売されていて、お値段は2万台〜12万。高額だから良いかは何とも言えません・・ 高額なのはそれなりの性能や安定性を保持していると言えます。但し、お値段と音質との関係は、使われるPAシステムとの相性なので決定打はありません。無難なのはダイナミック型マイクとだけ申しておきます。」

 

そ〜んな囁くようなライブをしたことのない私にとっては夢のようなマイクです。

爆音の中で楽器の音量と戦うのも、まぁ、ロックっぽいですが、

いつかライブで、レコーディング・クオリティの声で歌ってみたい。
そんな夢もあります。

 

「 ☆ここで朗報・・ SHURE社から新しいダイナミック型ボーカルマイクが8日から販売されます。「SHURE KSM8」 このマイクは今後数十年間のトレンドになると思います。SM58 から BATA58 へ進化、今度は KSM8へ・・」

 

おぉ。なんだか素敵なマイク。
早くも欲しくなってきましたぁ。。

 

(*KSM8について、補足コメントが入りましたので、追加でご紹介します。

こうした新しいマイクをライブハウス等へ持込んでも、暫くは良い状況に至らない可能性があります。それはライブハウスに備わっている音響システムとのマッチングが「未知数」だからです。ハコのエンジニアさんも困惑します。購入されるのは自由ですが、その辺りを考慮した対応を心掛けください。しかもリハーサルなしで、いきなりマイマイクに差し替えるような荒行は避けて欲しいと願っております。
使用する前にエンジニアさんに相談、リハーサル等でマイク調整を行うのが鉄則です! )

 

 

はい。岡田さんのレクチャー前編、今日はここまでです!

 

早く最後まで読ませろという方はfbのコメント欄をご覧くださいね。
明日は後編をお届けします〜。

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 - The プロフェッショナル

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