大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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「ライブの時、自分の声が全然聞こえないんですけど・・・」

      2016/10/27

「MISUMIさ〜ん。ライブの時、自分の声が全然聞こえなくて、
音痴だ、がなってる、って叱られるんですけど、どうしたらいいですか〜?」
自分の声がちゃんと聞こえなければ、ピッチが取りづらいのは当然です。
また、ニュアンスや表情をつけたりすることも難しくなります。

自分の身体感覚を磨いて、
どんな状況でもピッチが乱れないようにするのは、プロなら当然とはいえ、
聞こえない状態でいいパフォーマンスは、なかなかできませんね。

 

さて、アマチュアや新人アーティストが、
ステージ上で自分の声が聞こえない主な理由は3つです。

 

1. 声量がない。

3つの理由のうち、最も深刻で、エンジニアさん泣かせなのが、この「声量がない」です。

どんなに立派なマイクをつかっても、どんなにモニター上で音を上げようとしても、
出てない音は拾えません。

声の小さなヴォーカリストの声は上げれば上げるほど、
マイクに別の音も乗ってしまって、
なおさら聞こえづらくなったり、ハウリングを起こしたりしてしまうもの。

歌手」を名乗るからには、しっかりマイクに乗る、
鳴る声を持つのは、基本中の基本です。

 

よく、息混じりの声で歌う歌手のマネをして、きちんと声帯を鳴らさないままに歌って、
これでいいのだという顔をしている人がいますが、
きちんとした歌手で、声帯がちゃんと鳴らせず、息の音ばかりするような歌手はいません。

レコーディングされたものは、声に味付けをするために、
EQやエフェクターなどで息の音を強調していることも多々あります。

しっかり鳴る声を育てない限り、ライブは無理です。

 

2.マイクの使い方がまずい。

ある程度の音量のあるライブなどでつかわれるマイクは、
マイクを持つ角度やマイクと口との距離によって、拾える音量が大きく変わります。

しっかりとマイクの特性を研究して、ベストなポジションを見つけましょう。
アマチュアでよく見かけるのが、マイクとの距離を安定させられない人。

マイクとの距離が安定しないと、エンジニアさんとしては
どの距離で入って来る音量を基準にしたらいいかがわからなくなります。

また、動き回るうちに、マイクをスピーカーに向けてしまったりすると、
ハウリングが起きやすくなるため、
あまり音量を上げてもらえない可能性もあります。

マイクについては、そのうちまた改めて、詳しく書きますね。

 

3.モニターの調節がうまく行っていない。

モニターの調節は実にデリケート、かつ大切な作業です。

特に、ある程度以上音量のあるバンドでの演奏の場合、
自分の声が他の楽器の音にマスキングされて、聞こえなくなることしばしば。

 

リハ時間をつかって、

自分の耳の高さとモニターの向きが合っているか?

他の楽器、特にギターアンプやベースアンプからの音などが
自分の耳を直撃していないか?

モニタースピーカーから余計な音を出していないか?

ステージ上の他のメンバーのモニターの音量が必要以上に上がっていないか?

横あてのスピーカーからどんな音が出ているか・・・

 

などなど、可能な限り、しっかりモニターの調整をしましょう。

 

 

いかがでしょうか?

知識として知っただけでは、いきなりすべてが改善できるわけではありませんが、
うまく行かないことがあったら、ひとつひとつ原因をチェックして、
試行錯誤しながら改善していくことで、
少しずつ、歌いやすさやパフォーマンスをアップできるはずです。

日々精進ですね。

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