パフォーマンスは「鮮度」と「完成度」が命!
「僕は自分の過去には一切興味がないんです。
だから自分の作った作品も全部処分しちゃうんで、CDも一枚も手元にありません。」
少し前にお目にかかった元音楽家で、
現在はビジネス系の本の執筆などをしているという方のお話です。
これはずいぶん極端な例ですが、
「創り終わった瞬間に、自分は次に向かっているから、
あえて完成した作品を聴くことはない。」
というミュージシャンは、かなりいるようです。
一方で、「自分の作品の最大のファンは自分だから」というミュージシャンもいる。
「自分自身が何度聴いても楽しめるようなものを創りたい。」
というのが、彼らの原動力。
苦労してできあがった作品を聴くことは自分自身へのご褒美というところでしょうか。
さて、ではライブはどうでしょう?
「ライブは打ち上げ花火みたいなもの。
振り返ったって、しょうがないでしょ?」
と、自分のライブの録画や録音をチェックしないミュージシャン、
パフォーマーも多く存在します。
何事も物の考え方、それぞれの主義のようなもので、
何が正しい、正しくないというのはもちろんありません。
ここであえて、いつものように持論を展開させていただくなら・・・
CDなどのように、時間をかけて創り上げる「作品」と、
ライブのような「パフォーマンス」は、少し意味が違います。
「パフォーマンス」は、いわば生もの。
鮮度が大切なのはもちろんですが、
鮮度がいくらよくてもパフォーマンスそのものの完成度が低ければ、
受け手の満足度は低い。
そして、その完成度を上げるためには、
やはり1回1回のパフォーマンスを、細部に至るまで、客観的にチェックし、
ダメ出しし、反省し、
よかったところは、よりよく、ダメだったところは、修正し、
次に向けて最大限の努力をする。
これだけです。
パフォーマンスは「生もの」だからこそ、回を重ねるたびに変化します。
2回と同じものはありません。
むしろ全く変化しないパフォーマンスなら、家で完成度の高い「作品」を聴く方がいい。
変化するなら、それは退化ではなく、変質でも腐敗でもなく、
成長でなくてはいけないのです。
もちろん、自分のライブ、パフォーマンスを研究したり、
練習したりすることばかりが、成長する方法ではありません。
自分自身が新しいことに挑戦したり、さまざまな人に出会ったり、
思い切った変化を遂げることで、
パフォーマンス自体も大きく変わる可能性があるでしょう。
そして、忘れてはいけないこと。
努力の末、どんなにパフォーマンスの完成度が上がっても、
「まぁ、こんなもんかな」と手癖でライブをやるようになったら、
自分のパフォーマンスの鮮度はどんどん落ちていくということ。
鮮度の低いパフォーマンスに人は感動しません。
鮮度と完成度。
パフォーマーである以上、肝に銘じておきたいことばです。
関連記事
-
-
「ミュージシャンズ・ミュージシャンなんか嫌じゃい!」
「ミュージシャンズ・ミュージシャン」ということばを聴いたことがあるでしょうか? …
-
-
究極の正解を探せ!
カバー曲はいい感じで歌えるのに、 オリジナル曲になると精彩を欠く。 こうしたケー …
-
-
歌の魅力。〜SInger’s Tips#7〜
「今の声の初々しい魅力はそのままに、 もっと声が抜けるように、パワーをつけてくだ …
-
-
「そういう素人臭いのじゃなくて、ちゃんとフレーズ歌って!」
「声くださ〜い」 音楽の現場に長くいるので、 この「声ください」と …
-
-
「500円玉大の打点」を求めて、今日も声出していこうっ。
先日、よくご一緒する、某有名ドラマーの楽器の前に座らせてもらう機会がありました。 …
-
-
プロフェッショナルの徹底ピアノ調整!
10月末から1週間ほど休業&家を留守にするということで、 思い切って、ピアノの一 …
-
-
レッスンでは、トレーナーの「アーティスト性」は無用どころか、邪魔なんだ。
レッスンの折には、多かれ少なかれ、 生徒たちに、歌を歌って聞かせるシーンというの …
-
-
「なんでも歌える」と言わない勇気
「どんなの歌ってるんですか?」 どんなちっちゃなご縁も仕事に繋げようと躍起になっ …
-
-
誰もが自由に発信できる世の中では、 「プロフェッショナルな送り手」は不要なのか?
インターネットのおかげで、 個人が自身のコンテンツを自由自在に 広められる時代が …
-
-
「こんなもんでいいか」の三流マインドを捨てる!
ニューヨークのドラムフェアで、世界的に有名なドラマー、テリー・ボジオのクリニック …