大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人を本当に育てるのは、反骨心や反抗心だ!

   

ミュージシャン仲間に、有名なおしどり夫婦と呼ばれたカップルがいました。
旦那さんはどこに行っても、
「オレ、かみさん、愛してんのよ」と言ってはばからない。

大きなお子さんもいたんですが、
おかまいなしで、お互いを独身時代の名前で呼び合っていました。
当時まだ独身だった私が、アツアツぶりの秘訣を聞くと、

「オレたち、親に大反対されて駆け落ちしたんだよね。
だから、何が何でも、2人でやっていこうって思ったからじゃないかな?」

 

感情は抑圧されるほどに高まるもの。
そういえば、アーティスト時代、マネージメント・スタッフを好きになってしまい、
「こいつとだけは絶対にダメだ」と思うほどに、恋が燃え上がって
結局、結婚してしまったという人もいたっけ。

 

なぜこんなことを書いているかというと・・・

最近の学生たちを見ていると、
もしかして、親御さん、
あまりに物わかりがよすぎるんじゃないかと思ってしまうことしばしばなのです。

 

欲しいという楽器を買い与える。
時には、親御さんが、品物を吟味したり、選んだりさえする。

習いたいという習い事をさせる。
うまくいかないと、先生のせいにしたりする。

行きたいという学校に、あの手この手で入学させる。

そして、

体調が優れないから学校に行けないと言えば、
「可哀想に」となぐさめ、
イマイチ成績が上がらないと聞けば、
「やっぱり学校が厳しいんだね。がんばらなくちゃね。」と応援し、
「この学校は自分に向いていない」と言えば、
なだめたり、すかしたり、おこったり、頼んだりしたあげく、
「仕方ないね」とあきらめ、新しい進路を親身になって探し・・・

 

 

そこまで聞くと、なんて心優しい親御さんたち、
素晴らしい環境だろうと思うのだけど。

・・・なんだか優しすぎる。

 

そして、そんな「恵まれた」学生たちの日々に、
どこか脆弱で、希薄で、イージーな印象を受けてしまう。

 

 

「本当にやりたいのか、もっとよく考えろ」と、問いただされた経験。

「うちにはそんな余裕はない。自分でなんとかしろ!」と、突き放された経験。

「そんなことは絶対に許さない!」と断固として拒絶された経験。

 

結局、人を本当に育てるのは、反骨心や反抗心、責任感。

思うようにならない葛藤の中で、
突き動かされるように生まれ、育つ情熱しかないのではないか?

 

物事を深く見つめる力。
とことんまで考え抜き、自分自身で結論を選び取る力。
周囲を納得させようという責任感。
やり抜こうという使命感。

 

本当に与えなくてはいけない財産は、そんな力なのではないか?

 

 

 

生徒たちに厳しいことばを投げかけるたびに思います。

適当にご機嫌をとって、「よかったね」「いいんじゃない」と、
言ってあげることが、必要なときもあるかもしれないけれど、

誰かが厳しいことばをかけなくちゃいけないなら、
それで、彼らの中で、何かが変わるなら、
それは私であろう。

もしかしたら、それは彼らを、今は傷つけることばかも、
私を「嫌い」と思わせることばかもしれないけれど、

10年、20年、いや、私が死んだ頃にふと思い出して、
きっと、「あの時厳しいこと言われたこと、よかったな」と、
思ってくれると信じよう。

 

そんなことを考えた、学期末試験最終日の夜でした。
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【Day-to-day】
試験前になると、学生たちは急激にうまくなります。
そして、卒業ライブの直前になると、さらに、劇的にうまくなります。
日頃から、このくらい一所懸命練習してれば、みんなプロ顔負けになるだろうにと、
思うわけですが。。。そうはいかないのも、学生のおもしろいところですね。

きっと、私の大学時代の先生も、同じようにいらっとしていたんだろうなぁ。。。

 - Life, ヴォイストレーナーという仕事

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