話す発声と歌う発声?
「話す発声と歌う発声って違うんですよね?」
よく耳にする、不思議な疑問文です。
実は、スピーチ系のボイストレーナーの方の本などでも、
しばしば見かけるこのフレーズ。
「歌う発声と話す発声は違う」
・・・本当でしょうか?
結論から言えば、それは「ウソ」です。
人間のカラダには発声器官はひとりにつき、1セットしかついていません。
その発声器官は素晴らしい機能を持ち、その見事な働きによって、
「声」が生まれるのです。
そして、その発声器官のパフォーマンスを最大限に引き出すための、
合理的かつ、正しい発声方法は、たった一つしかありません。
なぜなら、私たちのカラダは精密機械と同じ。
完璧にデザインされているからです。
完璧にデザインされている道具には、完璧な使い方がある。
パソコンを使って行うのが、IT関連の複雑な業務だろうが、
ミュージシャンの作曲作業だろうが、
子どものゲームだろうが、
その根本的な使い方になんの違いもないのと同じです。
完璧な発声の基本は、どんな声を出すときも、同じであるべきなのです。
では、なぜ、「話す発声と歌う発声と違う」と言われることが多いのでしょうか?
ひとつには、歌というと、
クラシックのような声を思い浮かべる人が多いということがあります。
話す声とは、明らかに違って聞こえる、いわゆる「クラシック声」。
日常話すときより、呼吸の圧力を高め、声の通り道の状態を整え、
共鳴の多い、よく響く声をつくっています。
また、歌う時の音域が、
話す時に使われる音域よりも明らかに広いということもあるでしょう。
どんなに表現力のある人でも3オクターブもの音域を使って話すことはありません。
でも、こうした歌の特徴は、
あくまでも、「正しい発声」の延長線上にあるものです。
小学生が走るのと、オリンピック選手が走るのと、
走り方は同じでも、パフォーマンスが大きく違う。
そうした違いであって、根本が違うわけではないのです。
歌うことは、すべての声を使う人のための、スーパートレーニング。
このことに疑いの余地はありません。
関連記事
-
-
肉体は変化する
ずいぶん前のことになります。 クラプトンのコンサートのチケットがあるからと、 友 …
-
-
ミュージシャンに向いている人って?
「ミュージシャンに向いている人ってどんな人ですか?」 そんな質問を時々受けると、 …
-
-
「運」を手に入れる方法
「どんなに才能があっても、どんなに努力しても、運がないヤツは成功できない」 そん …
-
-
本気でぶつかりあう。
一所懸命やっている子には、一所懸命教えたくなる。 めいっぱいがんばっている子は、 …
-
-
本番に強くなるマジックワード!?
「あんなにリハーサルうまく行ったのに・・・」 「どうして本番になると、いつもボロ …
-
-
「知は力」・・・発声の科学を学ぶ意味
歌の上達の一番の早道は、 なんといっても優れた歌い手を徹底的に研究し、真似てみる …
-
-
変声期後の、いわゆる「音痴」をなおす方法
さて、昨日は変声期とはどういうものかについて書き、 興味深い資料のリンクをご紹介 …
-
-
「おかあさん声」の主は・・・
昨日、近くのストアにお買い物に行ったときのとこです。 商品に見入る私の横で、親子 …
-
-
結果を出すことの意味
音楽の仕事をはじめて、徹底的にたたき込まれたのは、 「この業界、努力賞はないから …
-
-
「そんなの歌ってても売れない」!?
時々、不思議な質問を受けます。 先日のキャサリン(仮名)の質問がまさにそれ。 「 …
- PREV
- 孤独を怖れず、自分自身と向き合う。
- NEXT
- まずは母音の発音をチェックする