大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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発声のためのベスト・バランス

   

マジカルトレーニングラボの初回カウンセリングでは、
音楽経歴とともに、必ず運動経歴を聞いています。

発声は運動。

スポーツの経験がある人は、神経系が発達していて、
カラダの細部とのコネクションがうまくいきやすいものです。
運動能力の高い人ほど早く、
発声に必要な筋肉と繋がる感覚を得ることができます。

発声のときの基本的なフォームを教える時も、
その人の得意なスポーツを例に取ると、即座に「なるほど」となる。

例えば、テニスなら、レシーブをするために構えている状態。
野球なら、バッターボックスに入ったときの状態、
または盗塁を決めようと、バランスを取っているときの状態。
武道なら、相手の隙をうかがいながら、
どこから攻められても大丈夫なようにカラダを柔軟にしている時の状態。

つまり、攻撃の動作に移ろうとしてカラダに力が入りがちな状態より、
相手の攻撃に反応しようとしている時の状態がバッチリなのです。

このときカラダは外部からの刺激に対し、過不足なく反応できる状態にあります。

軸が整い、重心がカラダのど真ん中、丹田に集まり、
全身の筋肉は次の動作に即座にうつるためにリラックスしています。
カラダ全体が刺激に対してオープンになっている状態といえます。
これが、発声にとってもベスト・バランスなのです。

なぜなら・・・

声を出すということは、「反応」することだからです。

自分の感情や感覚に反応する。
相手から投げられたことばに反応する。
音楽に反応する。

カラダがオープンになっていれば、
あらゆる刺激に即座に反応することができます。
同時に、必要な筋肉だけが過不足なく力を発揮することで、
最大のパフォーマンスが可能になります。

スポーツのわかる人なら、今の話をするだけで、
「いい声を出そう」と身構えてしまっている状態が、
実はカラダを硬くしているということに気がつきます。
次の瞬間にカラダの力抜け、発声に最適なバランスが整うのです。

カラダを使ってやることは、なんでも同じなんですね。

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