大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「答えは本の中にある」。きっと。

   

「わからないことがあったら本屋へ行け」

父が教えてくれたことです。

「世界中これだけ人間がいれば、自分と同じ悩みや疑問を持つやつが必ずいる。
長い歴史の中で、その答えをみつけたやつが必ずいる。
たいがいの答えは本屋で見つかるよ、MISUMI。」

そして、最後にこう言いました。

「どこを探しても、自分の求めている答えが見つからなかったら、
そんときはお前がその本を書け。
それはひとつの発見だぞ。」

歌い続ける中で、歌に対する疑問や、声に関する疑問がたくさん生まれ、
その度に、本屋の店先に立ちました。

しかし、探索は、けして容易ではありませんでした。

探しても、探してもなかなか答えが見つからず、
ひとつ、またひとつと、さまざまな本の中から見つけたヒントを
自分なりに組み合わせて、試行錯誤して、
ちょっとずつ、前に進んできました。

そして、そのヒントの多くは、ボイトレの本ではなく、
健康の本や、科学関係の本、自己啓発系の本の中で見つけたことでした。

声や歌を教えていこうと決意したきっかけは、
そうやって私が拾い集めてきた答えを、ただ知らないだけでなく、
その答えを探す努力も、いや、そもそもの疑問を持つこともないトレーナーが、
信じられないほど多いと知ったこと。

そうしたトレーナーにつくことで、
時間とお金と若さを無駄にしてしまう不幸な若者が
あまりにも多いと知ったからでもありました。

根性論も、精神論も、感情論も、
「私のマネをすればいいのよ」という経験論や、ある種の洗脳も、
科学や解剖学や物理学という、オタッキーなうんちくも、
クラシックのお行儀のよい発声も、
それぞれ一理ありますが、
それだけでは十分ではありません。

発声のメカニズムは非常にシンプルで、こどもでも理解できることです。

そして、そのメカニズムを正確に、過不足なく学ぶだけで、
発声効率はぐんとアップします。

また、声に関するいくつかの知識を持つだけで、
声感度は高まり、声がいきなり魅力的に変わったりもします。

歌う技術は、そんな、日常の発声の先にあるのです。

だからこそ、声のリテラシーを広めたい。

いつか、声に悩んで、本屋の店先に立つ人のために、
私が答えを用意したい。

そんな思いで、毎日のように、
文章を綴ったり、教材を試行錯誤しながら作ったりしているのです。

 - 未分類

  関連記事

結果を出すことの意味

音楽の仕事をはじめて、徹底的にたたき込まれたのは、 「この業界、努力賞はないから …

525600minutes〜新年によせて〜

新年おめでとうございます。 新しい年がはじまりました。 新しい年はいつも真っ新な …

no image
「そんなの歌ってても売れない」!?

時々、不思議な質問を受けます。 先日のキャサリン(仮名)の質問がまさにそれ。 「 …

no image
「仕事に困らないミュージシャン」の3つの特性

仕事がなくなると、景気だの、時代だのと世の中のせいにしたがるのは、 ミュージシャ …

プロフェッショナルの徹底ピアノ調整!

10月末から1週間ほど休業&家を留守にするということで、 思い切って、ピアノの一 …

no image
上達と進歩は一瞬でやってくる!

どんなに練習しても、ちっともうまくならない・・・ そんな時はだれだって、心が折れ …

「ミュージシャン」という人生を生きる

先日マーリンズに入団が決まったイチロー選手が、 「現役最年長の野手として 開幕を …

no image
反面教師という大切な存在

「こんなピッチの悪い歌をわざわざ持ってきて、人に聴いてくださいって言える神経がわ …

no image
「歌う環境」をつくる。

5年ほど前、某レコード会社のディレクターさんに連れられて、 女性R&Bシ …

no image
声の印象を変える?

声は人の印象を決める上で、とても大切な役割をしています。 ある研究によれば、人は …