反面教師という大切な存在
「こんなピッチの悪い歌をわざわざ持ってきて、人に聴いてくださいって言える神経がわからないわ」
これがダメだったら歌を諦めようと、決死の覚悟で挑んだはじめての単独ライブ。
友達に絶賛されて、嬉しくって、そのときのライブの音源を、
当時通っていたボーカルスクールの先生に聴いてもらったときのことばです。
S先生はみんなの前で、その音源を流したかと思うと、
ものの数十秒でパチンと音を止め、音源を機械から出して私に返してよこしました。
今、自分の生徒たちにこんな話を聞いたら、
私は瞬間に激怒して、こう言い放つでしょう。
「そもそも、自分の歌が自分でジャッジできないから高いお金払ってレッスン受けに通ってるわけでしょ?
ピッチが悪いのも、自分の歌の善し悪しが判断できないのも、
お前の教え方が悪いからだって言ってあげなさいっ!」
S先生は私のことが嫌いだったのかもしれません。
もしかしたら、休憩時間に、他にやりたいことがあったのかも、
生理中で気が立っていたのかもしれません。
それでも、なんでも、
人にものを教える立場の人間が絶対にやってはいけないこと。
1.思考ではなく、感情でものを言うこと。判断すること。
2.自分が相手よりも優れているということを確認させるためにパワーや時間を使うこと。
3.生徒たちに嫉妬したり、対抗したりすること。
4.生徒たちの過去や現在、さらには未来をも否定すること。
5.可能性でなく、限界を語ること。
6.教えるのではなく、傷つけること。
私も、もちろん人間だから、ときには(しょっちゅう?)感情的になるし、
イラッとします。
激しいことばで生徒を傷つけることもあるかもしれません。
それでも、毎日、自分のレッスンを振り返り、
傷つけてしまったんじゃないか、誤解させちゃったんじゃないかと思う生徒とは、
必ず会話の機会を持つようにしています。
短い間でしたが、S先生の元に通った時間は、
そんな風に、本当にたくさんの気づきをくれました。
ものを教える人間として、背にして歩くべき、
そして、可能な限り遠ざかるべき指標を、
日々、徹底的に傷つきながら学んだ気がします。
人生に無駄はないのよね。ほんとに。
ちなみに、S先生は優れたボーカリストであります。
その数年後スパッと先生業をやめて、素晴らしい活躍をされました。
先生も迷っていた時期だったのでしょうね。そういうことです。
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