「好き嫌い」と「興味」は別物です。
大学のようなところで教えていると、
生徒たちに学んでほしい歌、教材にふさわしい曲とは何か?と、
頭を悩ませることがしばしばあります。
そのたびに、生徒たち一人一人の顔を思い浮かべ、
それなりに頭を使って選曲してはいるのですが、
それでも生徒たちの不満は絶えません。
音楽くらい趣味や世代が反映されるものもないので、
当然といえば当然ですね。
それでもプロが、「これは勉強になるはず」と思って選曲している曲。
「なぜ、この曲を学ぶんだろう?」ということを
自分自身で考え、感じ取ってくれたらいいなと願っています。
たとえ好きになれなくても、
「これも勉強だから、それなりにものにしよう」と素直に練習できる子は、
ビックリするくらいどんどん伸びます。
ボーカリストとしての幅もどんどん広がります。
一方、気に入らない曲にシャッターを下ろしてしまう子もいます。
「これ嫌い。」
そうそう、そういう風に感じることは自然です。
私だって、そういう曲、たくさんあります。
アーティストならそれでいいのです。
そういう風に、好き嫌いをジャッジする力も大切です。
問題はその先です。
好き嫌いと、興味は少し別の問題だと思います。
面白くないと感じるのは、たいがい、面白さがわからないから。
だからこそ学ぶべきなんですが、
好き嫌いの段階で、シャッターを下ろしたら、それでゲームオーバーです。
アーティスト志向で、自分の好きなことを極めたい、
好きなことしかやりたくないなら、
大学のようなところで学ぶ意味はゼロ以下、時間の無駄です。
これは、イヤミで言っているのではありません。
学習や勉強は興味の持てることしか身にならないからです。
私を含め、ほとんどのプロミュージシャンは音楽大学で、
ポピュラーミュージックを学んだりしていません。
その代わり、中学高校時代から、必死にバンドをやっていた。
自分でどんどんレコードを買いあさって、
次から次へとコピーして、泣いたり、笑ったりしながら一所懸命練習した。
必死に音楽をやり続け、プロになり、
プロになってからも現場で悔しい思いや辛い思い、恐ろしい思いをたくさんして、
今があります。
後進の指導にあたるに際し、そんなミュージシャンたちが真っ先に思うことは、
一日も早く、少しでも楽に、できるだけ確実に、
学生たちが一人前のミュージシャンになる手助けをするにはどうしたらいいか?
これに尽きます。
自分たちが重ねてきた苦労を、
学生たちが少しでもしないで済むようにするにはどうしたらいいかと、
先生となったミュージシャンたちは常に考えているのです。
そんな思考の行き着いた先がメソッドであり、教材なのです。
嫌い、面白くない、やりたくない・・と食わず嫌いをする前に、
選んだ人の思いをくみ取る。
なぜこの曲を学ぶのか、自分の頭で考える。
自分はそれがわからないから、面白くないのだということに気づく。
まずは「やらされている」意識を捨てないとダメなんです。
好きになれない曲だけど、課題として、がんばって取り組んで、
ある程度歌えるようになって、
面白さはわかるけど、やっぱり好きじゃない、とならなければ、
人に歌を習う意味はないわよね、と思うわけです。
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