「これが正しい」は自分で選び取る
アーティストや学生たちと接していると、
「何が正しいのかわからなくなってしまいました」と、
打ち明けられることが頻繁にあります。
多くが社長やディレクター、もしくは先輩や先生たちに、
「お前は間違っている」「こうするのが正しい!」と、
意見されたり、指導されたりすることから生まれる悩みです。
自分が信じていることを否定されるほどつらいことはありませんね。
少し話は飛びますが、
かつて、ユーゴスラビア出身の女性シンガーのお仕事をしていたことがあります。
まさにその時、彼女の母国ユーゴスラビアで紛争が起こりました。
家族の元に戻ることも、連絡を取ることもできず、本当に辛かったことでしょう。
そんな最中、彼女が言ったことばを今でも鮮明に覚えています。
「昨日まで正しいと思っていたことが、今日は間違っていると言われ、
以前信じていたことを信じ続けようとすれば、それは罪だと罰せられる。
それがどんなに苦しいことか、わかる?」
「これが正しい」と言い切れることが、世の中にいくつくらいあるでしょう?
昭和の小学生は理科の時間に、
「太陽系の惑星は『水金地火木土天海冥』である」と教えられました。
刷り込みというのはすごいもので、いまだに、太陽系の図を見ると、
反射的に「水金地火木土天海冥」ということばが頭をよぎります。
それがいつの間にか、海王星と冥王星が入れ替わり、
やがて、冥王星は1つの星でないことがわかったとかで、
今では、冥王星は惑星からはずされてしまったといいます。
宇宙の話まで大きくならなくても、
それに類する、真実と信じられていたことや、世間的な価値観がひっくり返り、
無価値な物に転換していくことを21世紀に生きる私たちは日々体験しています。
私は万人にとっての「これは正しい」は存在しないと考えています。
100人いれば、価値観や真実は100通りあるのです。
「正しい」はあふれるような情報の中から自分が選び取るもの。
それは苦しく、気の遠くなるような作業ですが、それこそが生きるということ。
自分の価値の基準を他人に決めてもらうことはできないのです。
あきらかに「間違っている」と断言できるのは、神様が作ったものを壊すこと。
つまり、意図的に人を傷つけたり、殺めたり、自然を破壊したり。
それに類すること以外ないはずです。
「自分の信じることが自分にとって一番正しい!」と信じることが力です。
他人の価値観に振り回されることなく、また、盲信に陥ることなく、
積極的にさまざまな情報や価値観に接し、
その中から、自分の「正しい」を選び取ること。
それが、学習というものです。
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