大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

“I know what I’m doing”

   

「今の、どうでした?できてませんでした?」

そんな質問を繰り返す子に限って、レッスンを録音さえしていないものです。

「自分のやっていることを、正しくジャッジ、チェックできてこそ、
プレイは上達する」と、
以前、『自分のチェック機構を磨け!』という記事でも書きました。

他人の耳や価値観ばかりを頼りにしているから、
冒頭のような質問になるわけです。

想像力や思考のない人、くふうのできない人は絶対に上達しません。

ボイトレをしていても同じです。

何度かアドバイスしながら声を出してもらって、
「あ、今いい声出たでしょ?」「あら、さっきの方がよかったね。」と言うと、
「そうですか〜?」「何が違うのかわかりません」
という答えが返ってくることがあります。

ときに、私の説明が悪い場合もありますし、
初心者なら、わからなくて当然のような微差でしょう。

しかし、ベテランのシンガーの中にも、ムッとしながら、
ただ、そう言う人がいるのです。

このとき、本来なら、「何が違うのか、なぜ自分にはわからないんだろう」と
疑問に思うべきなのです。

その疑問の答えこそが、
ベテランと言えるほど何年も歌っているのに、上達してこなかった理由なのです。

その道のプロフェッショナルが、自分のやり方に意見されて、
切り返して応えるときの英語の言い回しで、
“I know what I’m doing”(自分のしてることくらいわかっているよ)
ということばがあります。

文字通り、自分が何をしているかわからなかったら、
プロとは言えない。

プロもアマチュアも、人の評価まかせにするのは、いい加減やめましょう。
それは、「甘え」なんですよね。

 - 未分類

  関連記事

うまく行かないときは、自分自身の棚卸しをする

世の中は結構不公平にできています。 必死に必死にがんばっていても、 なかなか認め …

no image
「歌う環境」をつくる。

5年ほど前、某レコード会社のディレクターさんに連れられて、 女性R&Bシ …

no image
「これが正しい」は自分で選び取る

アーティストや学生たちと接していると、 「何が正しいのかわからなくなってしまいま …

no image
夢のチカラ

「こんなことができたらいいな。」 「こんな風になれたらいいな。。」 毎日のように …

no image
声の印象を変える?

声は人の印象を決める上で、とても大切な役割をしています。 ある研究によれば、人は …

no image
1年前の、1年後の自分との距離感。

1年という時間はあきれるほど速く流れて行きます。 その速度は生きた年月に比例して …

no image
技術によって人間は進歩するのか、退化するのか?

技術によって人間は進歩するのか、退化するのか? はじめてレコーディングのお仕事を …

no image
本気でぶつかりあう。

一所懸命やっている子には、一所懸命教えたくなる。 めいっぱいがんばっている子は、 …

no image
Obsession〜頭にこびりついて離れないもの〜

プロとアマチュアの分岐点はどこにあるんでしょう? 何かが好きで、夢中になることは …

no image
見せ方のうまい人の共通点

自分をどう見せたいか。どう見せるべきか。 人前に立つときのスタイルは誰もが気にす …