仕事が嫌ならいつでもリセットすればいい
レコーディングの仕事に呼ばれるようになったばかりの、
駆け出しのころ。
現場の雰囲気に飲まれ、
譜面は読めない、音は取れないという自分に嫌気がさし、
周囲の人が自分にあきれているに違いないという恐怖感に苛まれ・・・
まともな声も出せないまま、
仕事が終わってしまうという日々が続いていました。
当然誘ってくれた先輩たちに叱られます。
譜面が読めるようになるための努力をちゃんとしているのか?
どうして、いつもできることが仕事になるとできなくなるのか?
そもそも、スタジオの仕事をやっていく気があるのか・・・?
スタジオの仕事は一期一会です。
「はじめまして」という挨拶ではじまり、
「お疲れさまでした」まで、1プログラム平均1〜2時間。
その1回きりで、悪い印象を与えれば、二度と呼ばれることはありません。
先輩たちも真剣勝負です。
新人とか、駆け出しとか、呼んでくれた人たちには関係ない。
いい仕事をしてくれるか否か。それだけです。
コーラスの仕事ですから、グループの誰か1人でも下手をすれば、
それはすなわち連帯責任。自分たちの評判に関わります。
お仕事の話をもらうたびに、具合が悪くなりました。
自分の容姿にも歌にも性格にも、自信が持てないという時代。
自信がないからいい声が出ない。いい仕事ができない。
だから評判が悪い。
なおさら自分が嫌いになるという、負のスパイラルのど真ん中でした。
ある日、
最早これまで。やっぱり無理!やめた方がいいんだ!
という結論に達したときのことです。
ふと、「音楽の仕事やめて就職しちゃえば、
ギョーカイの人とは二度と会わなくていいんだ!」
そんなあたりまえのことに気づいて、気持ちがすっと軽くなりました。
結局、自分を値踏みしたり、傷つけたりする人の存在なんて、
自分自身が作り出している幻想みたいなもの。
いつでもリセットできるなら、徹底的にチャレンジするのもありかもね。
そんな風に思えたのです。
どこにも逃げ場のない状況や、
誰かに強制されていることなんて、そこにはなにひとつありません。
やりたいか、やりたくないか。
そして、「やりたい」を選んだら、
後はいかにそれを成功させるかという「くふう」なのだと。
くふうもしないで、
「どうせあたしなんか・・・」とやさぐれて、へこたれて、
やめられるなら、所詮そこまで。
とっととリセットして、次のゲームをはじめればいいのです。
そんな風に思えたとき、
やっと自分自身の問題がひとつひとつ、ハッキリと見えてきました。
関連記事
-
-
孤独を怖れず、自分自身と向き合う。
あっという間に4月。 音大の新学期が始まりました。 キラキラと目を輝かせている新 …
-
-
「歌う環境」をつくる。
5年ほど前、某レコード会社のディレクターさんに連れられて、 女性R&Bシ …
-
-
ミュージシャンに向いている人って?
「ミュージシャンに向いている人ってどんな人ですか?」 そんな質問を時々受けると、 …
-
-
ショービジネスの世界で生きるということ
昨夜はレッスンを受け持っているアーティストのライブに行ってきました。 初めての大 …
-
-
「運」を手に入れる方法
「どんなに才能があっても、どんなに努力しても、運がないヤツは成功できない」 そん …
-
-
プロフェッショナルの徹底ピアノ調整!
10月末から1週間ほど休業&家を留守にするということで、 思い切って、ピアノの一 …
-
-
本番に強くなるマジックワード!?
「あんなにリハーサルうまく行ったのに・・・」 「どうして本番になると、いつもボロ …
-
-
1年前の、1年後の自分との距離感。
1年という時間はあきれるほど速く流れて行きます。 その速度は生きた年月に比例して …
-
-
ノドだけ労わりゃいいってもんじゃないので。
秋はスケジュールの動くときです。 勝負をかける大きなイベントを秋に持ってくるアー …
-
-
技術によって人間は進歩するのか、退化するのか?
技術によって人間は進歩するのか、退化するのか? はじめてレコーディングのお仕事を …
- PREV
- トレーニングの最大の難関は「はじめる」
- NEXT
- 絶対的なクオリティしか口コミは起こせない
