大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

仕事が嫌ならいつでもリセットすればいい

   

レコーディングの仕事に呼ばれるようになったばかりの、
駆け出しのころ。

現場の雰囲気に飲まれ、
譜面は読めない、音は取れないという自分に嫌気がさし、
周囲の人が自分にあきれているに違いないという恐怖感に苛まれ・・・
まともな声も出せないまま、
仕事が終わってしまうという日々が続いていました。

当然誘ってくれた先輩たちに叱られます。

譜面が読めるようになるための努力をちゃんとしているのか?
どうして、いつもできることが仕事になるとできなくなるのか?
そもそも、スタジオの仕事をやっていく気があるのか・・・?

スタジオの仕事は一期一会です。
「はじめまして」という挨拶ではじまり、
「お疲れさまでした」まで、1プログラム平均1〜2時間。
その1回きりで、悪い印象を与えれば、二度と呼ばれることはありません。

先輩たちも真剣勝負です。
新人とか、駆け出しとか、呼んでくれた人たちには関係ない。
いい仕事をしてくれるか否か。それだけです。
コーラスの仕事ですから、グループの誰か1人でも下手をすれば、
それはすなわち連帯責任。自分たちの評判に関わります。

お仕事の話をもらうたびに、具合が悪くなりました。

自分の容姿にも歌にも性格にも、自信が持てないという時代。

自信がないからいい声が出ない。いい仕事ができない。
だから評判が悪い。
なおさら自分が嫌いになるという、負のスパイラルのど真ん中でした。

ある日、
最早これまで。やっぱり無理!やめた方がいいんだ!

という結論に達したときのことです。
ふと、「音楽の仕事やめて就職しちゃえば、
ギョーカイの人とは二度と会わなくていいんだ!」

そんなあたりまえのことに気づいて、気持ちがすっと軽くなりました。

結局、自分を値踏みしたり、傷つけたりする人の存在なんて、
自分自身が作り出している幻想みたいなもの。

いつでもリセットできるなら、徹底的にチャレンジするのもありかもね。

そんな風に思えたのです。

どこにも逃げ場のない状況や、
誰かに強制されていることなんて、そこにはなにひとつありません。

やりたいか、やりたくないか。

そして、「やりたい」を選んだら、
後はいかにそれを成功させるかという「くふう」なのだと。

くふうもしないで、
「どうせあたしなんか・・・」とやさぐれて、へこたれて、
やめられるなら、所詮そこまで。
とっととリセットして、次のゲームをはじめればいいのです。

そんな風に思えたとき、
やっと自分自身の問題がひとつひとつ、ハッキリと見えてきました。

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