大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

変声期後の、いわゆる「音痴」をなおす方法

   

さて、昨日は変声期とはどういうものかについて書き
興味深い資料のリンクをご紹介しました。

変声期という声の一生にとっての大転換期を経て、
音程が不安定になり、高い声が出なくなり、
歌が苦手になってしまったという男性が、実にたくさんいます。

上記の症状は、いきなり声帯の長さが倍近くになったことによる、
筋感覚のブレや、筋力の不足のせい。
トレーニングを積めば、なんなく克服できるどころか、
低音が充実している分、女子よりも広い音域を歌うことも可能です。

しかし、思春期の男子は、たった一度恥をかいただけでも、
「二度と人前で歌わない」と決意をするのに十分なくらい傷ついてしまいます。

音楽の時間や、カラオケで、はたまた大好きな女子の前で、
「お前、音痴じゃん」とひとこと言われて以来、
一度も人前で歌っていないという人は、驚くほどたくさんいるのです。

変声期前の発声器官をウクレレ、
変声期後の発声器官をギターにたとえてお話しましょう。

ウクレレとギターは、見た目も演奏方法も非常に似かよった楽器ですが、
ギターのネックや弦の長さはウクレレの3倍近く。
チューニングも違えば、フレットの広さも、弦の張りも全然違います。

たとえウクレレの名手と言われる人でも、
いきなりギターを渡されて、同じように演奏することは不可能ですよね?

もしもこのウクレレの名手が、ギターも同じように自在に演奏しようとするならば、
ギターの弦、一本一本のチューニングを学び、
フレットの幅と、指の開き方、押さえ方を確認し、
思い通りに弾けるようになるまで、繰り返し繰り返し練習して、
筋感覚と筋肉をギターに慣らすしか手はありません。

声も同じです。

まずは、変声期前に、ある音を出すときに感じていた筋肉の緊張感覚が、
変声期後、倍の長さになった声帯で、
同じ音を出そうとしたときに必要な筋肉の緊張感覚と、
どのくらいぶれているのかを、確認する作業が必要なのです。

これまで私が行った中で、最も有効だったトレーニングをご紹介しましょう。

まずは「感覚のブレを自覚するトレーニング」。
<感覚のブレを自覚するトレーニング>

1.お手伝いしてくれる、音のわかる人とピアノなどの楽器を用意する。

2.お手伝いの人に、ピアノでぽーんと任意の音を弾いてもらう

3.その音を出すつもりで「あー」と声を出し、伸ばす

4.お手伝いの人に、あなたが実際に出した音をピアノで弾いてもらう

ここでたいがいの人は、自分の出そうと思っていた音が、
実際の音よりも1オクターブ近く低いということに気づくはずです。

中には、3度上を歌ってしまう、5度上を歌ってしまうという人もいます。
これが感覚のブレなのです。

まずは、感覚のブレを自覚することが大切です。

ブレに気づいた時点で、すぐに音を修正できる人は、
そのまま、上記のトレーニングを続けていただければ大丈夫。
後は繰り返し、筋肉に覚え込ませるだけです。

しかし、長年チューニングがあわせられずに来た人は、
このトレーニングだけでは、
どのようにブレを修正したらいいのかつかめず、不十分です。
そんな方は、続けて、
「感覚のブレを修正するためのトレーニング」をやりましょう。

<感覚のブレを修正するためのトレーニング>

1. 上記1~4は同じ

2.そのままあなたの出している音から目的の音まで、
1音1音、階段をのぼるように、ゆっくりピアノを弾いてもらって、
それにあわせて声も音の階段を昇って行く。

3.目的の音まで到達したら、その音を伸ばして、筋感覚をつかむ。

4.再度、同じ音を弾いてもらって、その音を出してみる。

5.一度でぴたっと合うまで繰り返し練習する。

上記トレーニングを数回繰り返すだけで、
声のチューニングはビックリするくらい合うようになります。

大切なことは、あきらめないこと。
「僕は生まれつき音痴だから・・・」などと思わないこと。
そして、恥ずかしがらないこと。

これに尽きます。

Good Luck,Boys!

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