「妥協点」と「落としどころ」は決定的に違う
複数の人とクリエイティブな作業をしていると、
必ず、意見が分かれるときがあります。
人それぞれ、感性が違うので、あたりまえのことです。
誰の言うことが正しくて、誰の言うことが間違っている、
などということではありません。
一般論や常識や慣例は、この際一切関係ありません。
ゼロから創り上げるものだからこそ、
自分の感性にぴったりくるものを創りたいというのは、
クリエイターなら誰もが持つ、当然の欲求。
音楽でも、CMでも、ウェブでも、出版でも、
それゆえに、制作現場では揉めちゃうこともしばしばです。
自分の感性に基づく意見をしっかり主張できるようになるのは、
ある程度、経験を積んで、自分の感性に自信が持てるようになってから。
かくいう私も、若かりし頃は、クライアントやスタッフ、先輩たちと意見が食い違うと、
「きっと私にはわからないんだ」と弱気になったり、
「わかってないね」と笑われたくない、と背伸びしたりして、
すんなり迎合していたこともありました。
しかし、納得できないのに折れてしまったり、
ま、いいかと妥協してしまったりすると、後から必ず後悔します。
何度聴いても、何年後に聴いても、 気に入らないものは気に入らない。
そして、その作品を聴くたび、目にするたび、
みぞおち辺りにいや〜な感覚が蘇ります。
なぜ、納得もできないのにOKしたんだろう?
それは世の中に作品を送り出すものとして、
ベストを尽くさなかったという後悔であり、
受け手に対する良心の呵責であり、
画竜点睛を欠く作品に対する「やっちまった感」であり、
意気地のない、弱虫な自分に対する「ばかばかばかばか・・・」です。
それでも、ものすごく結果がよければ、
人々に絶賛されれば、それなりに納得するのでしょうが、
自分が納得できていないものにそんな評価が下ったことは一度もありません。
それなりの作品はそれなりの評価しかされないんです。
「うん!これでいこうっ!」という感覚はある種のインスピレーションです。
ロジックじゃない。
なにか、カラダの中でかちっと部品がはまるような、
いわゆる腑に落ちると言う感じ。
複数のクリエイターで作業をしていたら、
全員の意見をそのまま通すのは不可能です。
でも、誰かの意見が通るということは
誰かが妥協を迫られるということ。
理想論かもしれないけれど、
制作に関わる人、みんなが腑に落ちるポイント、
「落としどころ」を模索することをあきらめてはいけないと思っています。
「妥協点」ではなく、「落としどころ」。
大切にしていきたいポイントです。
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