「そこにいること」の大切さを語りすぎることは、たぶんない。
長年、音楽の仕事をしていると、
「そこにいること」の大切さが、しみじみわかります。
たまたま一緒に飲んでいたミュージシャンに、バンドに誘われる。
たまたま出演したライブを見に来ていた業界の人の耳にとまる。
たまたまボランティアで参加した作品が、突然仕事につながる。
その時、そこにいなければ、
絶対に出会なかった人がいて、
けして恵まれることのなかった仕事があって、
そんなことの積み重ねが、
やがて「キャリア」をつくっていくのです。
もちろん、いつでもどこでも顔さえ出せばいいということではないし、
やはり、自分自身の実力を上げる努力や、
相手になにかしら印象を残す努力は必要ではあるのだけれど。
初めて出会って、
あぁ、いいやつだな、と感じて、
プレイを聞いたら、なかなかよくて、
「また誘うよ」と言い合って、別れて・・・
心の中のリストに、その人の名前が刻まれたとしても、
毎日が、そんな繰り返しの音楽業界。
日々、リストは更新され、記憶は上書きされていくものです。
その時そこにいない人は、存在していないも同じ。
1度か2度、会ったことのある、
才能あふれる、よく知らない人よりも、
今、目の前でご機嫌に飲んでいる相手に、
人は声をかけるものです。
アクセス不能な人を、あの手この手で探し出して、
連絡をくれるような奇特な人は滅多にいません。
だから、定期的に人に会いに出かけたり、
作品を発表したり、ライブをしたり、
自分を発信したりすることが、
駆け出しのミュージシャンはもちろんのこと、
何年ミュージシャンをやっていても大切なのです。
さて。
「たまたま居合わせること」よりも、
もっともっと大切なのは、
「いるべき場所には必ず現れること」。
病気や他の仕事との兼ね合いで、
1度トラを入れたら(代役を立てたら)、
その人の方が気に入られて、
自分には二度と仕事がこなくなった、などという話は、
当たり前のように聞かれます。
どんな事情であれ、
大きな仕事で一度でもすっぽかしや大遅刻などの粗相をすれば、
向こう数年、業界を悪い噂が駆け回ってエライ目にあうことになります。
大きなイベントで大役を終えて、
次の現場があるからと、打ち上げに参加しなかったおかげで、
別のアーティストが主催者にすり寄って、
翌年のイベントの主役の座を奪われたという人もいました。
リハや、打ち合わせにいなかったせいで、
大事なことを聞き逃し、関係者の怒りをかったり、
やるべきことの情報が入ってこなくて、恥をかいたり。。。
「そこにいなかったこと」を問題と考える世代は、
まだまだ健在です。
体調管理には万全を期し、
けしてスケジュールには、穴を開けないこと。
約束した現場には、確実に現れること。
約束が果たせないかも知れない、どんなリスクも回避すること。
打ち合わせや打ち上げには、可能な限り出席すること。
出席できなかった場合には、確実に情報を受け取れる状況をつくること。
カラダに刻んでおきたい業界の流儀です。
関連記事
-
-
声の温度。歌の肌触り。音の匂い。
ボタンひとつで音色を自在に変えられる、 いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場し …
-
-
自分自身を幸せにすることなんて、 本当はめちゃくちゃシンプルなことなんだ。
ロンドンに長期滞在したい、という思いは、 もう何年も前からあります。 最低でも半 …
-
-
「それは、MISUMIさんが無理だって思っているからです」
後に圧倒的な成功を手にすることになる、 ある若き女性と、 食事をしていた時のこと …
-
-
価値は受け手が決める 受け手は送り手が選ぶ
他に認めてもらうことで、はじめてその価値が生まれるというものがあります。 誰かの …
-
-
We Gotta Get Out Of This Place!
夢中で毎日を過ごすうちに、気づけばずいぶんおとなになっていた。 あまりにもずっと …
-
-
理解できない相手がクソなのか、させられない自分がダメなのか。
誰にも歌を認めてもらえず、 今日辞めようか、 明日ちゃんとした就職先を探そうかと …
-
-
ミュージシャンのランク付け
ランク付けをしたがるのは人間という動物の本能と言います。 「天は人 …
-
-
「好きなことやれよ」
「好きなことやれよ。 好きなことのない人生なんて、つまんねーぞ。」 私の人生にも …
-
-
飽きず、 腐らず、 あきらめず。
自らが選んだ道の上で、 人に選ばれ、 人に望まれ、 人に期待されること。 &nb …
-
-
「中毒」か?「夢中」か?
先日、アルコールやドラッグ、セックスなどの中毒患者のためのリハビリテーション施設 …

