「やる気」を引き出す3つの方法
2014/10/15
まれに、「やる気のない生徒にボイトレをする」という、
謎の事態に遭遇することがあります。
事務所やレコード会社の、
有望なアーティストを育成したい、という熱意から、
あるいは、本人たちの実力の不足や不調への不安から、
『虎の穴』と呼ばれている我が家に送り込まれてくるアーティストたち。
もちろん、ほとんどの子が真剣にレッスンに取り組み、
少しでも上達しようと、必死です。
しかし、中には、あからさまにやる気のない、
興味や熱意を持てないという子がいるのも事実。
アーティストたちだけではありません。
本人の意志で入学しているはずの音楽学校の生徒や、
音大生にも、やっぱりやる気のない子はいます。
個人的には、「やる気のない人に教えるのはお互いの時間の無駄」と考えていますが、
そこはトレーナー。
やる気を引き出すこともお仕事のうちです。
まして、高いお金を払ってレッスンに通わせているクライアントさんたちや、
親御さんを思えば、追い返すわけにもいきません。
単純に「こら!ふざけんな!やる気あんのか!?」なんて、
ガツンとシャウトすれば、しゃきっとする、というのなら世話はないのですが、
たいがいは、まったくの逆効果。
やる気がある風を演出する「仮面生徒」になって、
さらにイラッとさせられるのがオチです。
そんなとき、効果的だった3つの方法をご紹介してみます。
耳の痛い人も、やられた!と気づいちゃった人も、ご参考までに。
1.コミュニケーションを取る
相手の気持ちを受け入れることからスタートして、コミュニケーションを取る。
やる気が出ないのは、たいがい、
トレーナーとのコミュニケーションがうまくいかないから。
内心、ムッとしていても、そこはぐっとおとなになって、
相手の目線に立つと、ふいにラポールが成立することがあります。
ひとたび心が通い合えば、レッスンはいきなりスムースに流れ出します。
ただし、心が通い合いすぎて、おしゃべりばかりが盛り上がってしまうのは、
注意しなくてはいけませんけどね。(自戒)
2.質問をする
レッスンを受けるべき理由、自分が上達すべき理由は、
周囲がどんなに言って聞かせても、本当のやる気には結びつきません。
「やる気」は、自分の心の中に芽生えない限り、腑に落ちない限り、無意味なものです。
そういう意味でも、単なるお説教は意味がないのです。
そこで、その理由を自分で見つけさせるように、誘導してみます。
最近の現場での悩み、マネージャーさんやディレクターさんに言われたこと、
それについて自分はどう思うか、なにか変えたいことはあるのか、
自信を無くしていないか、反対にいい気になっていないか・・・?
などなど、質問を繰り返していくうちに、
だんだんと本人のコアに近づける。
そうしているうちに、少しずつ、本当の意味でのやる気が芽生えてきます。
3.「やめちゃえば?」と言ってしまう
なんで、好きでもないこと、やってんの?
もっと好きなことあるんじゃない?
やめちゃえば?
そんなことを言ってしまいます。
さすがにドキッとするようです。
そんなこと、言うオトナはいないらしい。
でも、私は、人生はいつだってリセットできると思っているので、
辞めたいなら、とっとと辞めちゃえばいいんじゃない?
と、言い放ちます。
すると、この段階でやっと、自問自答をはじめる子がいる。
「本当は好きじゃないのかな?」「やりたくないのかな?」
「やらされている」という意識でレッスン受けたり、仕事したりしている人には、
自分の内部に目を向けるという行為が絶対的に不足しているのです。
だから、ショッキングな言葉を聞いて、やっと我に返る。
そこから、急速に前向きになる子も実に多い。
ときどき、本当に辞めちゃう子というのがいて、
それはそれで、幸せになってゆくので、よし、と思っていますが・・・。
とはいえ、ここまで書いて、なんですが、
あの手この手で人のやる気を引き出す、というのは、実に疲れることです。
こちらのやる気と能力をぐんぐん引き出してくれる、
「スーパー生徒」ばっかりだったら、まぁ、本当にしあわせなんですけどね・・・。
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