自らの夢想の傍観者でいてはいけない。
「MISUMIちゃんの書くような曲なら、俺、100曲書けるぜ。」
ずいぶん昔のことになりますが、
友人である某ミュージシャンに、いきなりそう言われました。
その日、私が演奏したオリジナル曲を、
まわりの人が口々に「感動した」と誉めてくれて、
気分よくアフターライブのひとときに浸っていたときのことです。
彼は、そう言うと、私から目をそらして、
他の人と話しはじめました。
思わず、カチンときて、
「ちょっと、それって・・・」と言いそうになる私の気配を察して、
近くにいた共通の友人が私に耳打ちしました。
「あいつ、悔しいんだよ。きっと。」
思い返せば、いい年をしたおとなが、
他人が誉められているのが悔しくて、
そんなケチの付け方をするなんて、
わかりやす過ぎて笑えるくらいなのですが、
さすがに、その時はそんな風に考えられませんでした。
私はこの人に認められていないんだ。
私の書く曲は、彼が100曲書けるくらい平凡なんだ。
いい気分を台無しにされて、
そんなことをぐるぐると考えていました。
・・・ちょっと待ってよ。。
じゃ、なんで、あの人は100曲書かないんだろう?
胸に湧いた疑問こそが、探していた答えでした。
「100曲書ける」と口で言うのと、
実際に書くのとは全く別のこと。
「100曲書く」ことと、
その1曲1曲に歌詞をつけて、
歌としての解釈をして、
声をのせて、
人前でパフォーマンスする、というのは、
もう、全然異次元のこと。
彼はそれをちゃ〜んとわかっていて、
だから悔しくって、あんなことばを言っちゃったのだなぁ。
そんな風に思えたら、すっきりしました。
「あの発明品、私なんか何年も前に考えついていたわよ。」
「あの映画のストーリー、
俺が昔考えてたこと、誰かがパクったんじゃないかな?」
アイディアを考えつくことは、素晴らしいことです。
しかし。
誰だって一生の間に、ひとつやふたつ、
世界の誰も考えついていないような、
斬新なアイディアや特別な発明を思いつくのではないか。
それが「発明」や「アイディア」と呼ばれないのは、
思いついた、そんな大切なことを、
日常の中に置き去りにし、埋没させ、
形にしたり、行動したりしなかったからではないのか。
新しいものを生み出し、
発信していくクリエイティブな活動の中で最も難しいパートは、
頭の中にある夢想を具現化するための行動に出る、
まさに、その瞬間です。
夢想を具現化するパワーを持つ人だけが、
本物のクリエイタ−。
どんなに美味しそうに描いたって、絵の中の餅はただの絵です。
よいしょと力をふりしぼって、
汗水垂らしてつき上げてこそ、
お餅に、リアルな価値が生まれるのです。
自らの夢想の傍観者でいてはいけません。
一歩前に進んでこそ、自分の夢想に価値が生まれるのです。
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