「なに聞いて歌ってんの?」
「なに聞いて歌ってんの?」
ワークショップや授業で生徒たちの歌を聞いた後、
よくこんな質問を投げかけます。
言われた方は、どうやら叱られたと勘違いするらしく、
一瞬顔をくもらせたり、困惑したり。
いやいや。誤解しないでください。
私はプロフェッショナルな興味で聞いてしまうだけなんです。
「だから、なにを聞きながら歌ってる?」
「え・・・、いや、オケですけど。」
カラオケで歌わせていて、
こういう答えが返ってくるならまだしも、
バンドでやっているのに、
同じように答える子が数多くいて、
そっか、そもそも、
誰かと一緒に演奏している、
歌っているという発想がないのだなと、
今度はこちらが驚くことしばしばです。
「伴奏」ということばがあります。
たとえば、主としてメロディを奏でる主役がいて、
その補助をする。
主声部を補ったり、引き立てたりする役どころ。
歌い手がどんなに自在に歌っても、
そこにぴたりと寄り添うようについてきてくれるのが伴奏者です。
極論を言えば、
歌い手はとんでもない音さえ出さなければ、
伴奏なんか聞かなくてもいい。
「あたしは勝手に歌うから、あなたついてきて。」ってな人も、
(本人が意識しているかどうかは別として)確実に存在します。
しかし、これでは誰かと一緒に演奏する意味はありません。
相手が誰でも、自分を引き立ててくれればいいわけです。
こんな発想で歌っていては、
コミュニケーションも、音楽の感動も生まれません。
一緒に演奏する人はなにを感じ、
なにを大切にし、どんな風に演奏しているのか?
演奏の中での自分の歌の役割はどこにあるのか?
なにを期待されているのか?
そんなことを感性を最大限に研ぎ澄まして、
よく聞いて、しっかり見て、思いきり感じて、
共有したり、ぶつかり合ったり、
高めあったり、感動しあったりしながら、
演奏するのが音楽ってもんじゃないのか。
ちゃんと聞く。
それこそが、
一緒に演奏する人に対する最大限のリスペクトであり、
音楽の意味ではないのか。
そんな風に意識を持って、はじめて、
オケを聞く余裕がない、
なにをどう聞いたらいいのかわからない、
聞いたところでどう反応すべきかわからない・・・
そんな自分に気づくわけです。
あたり前のことをあたり前にやるのが一番難しい。
今日も今日とて、修行です。
最初の一歩を踏み出せないでいるあなたへ、5日間のメッセージ。
関連記事
-
-
だって、そう聞こえるんだもん。
MTLワークショップの資料作り、 予想通りというか、予想を超えて難航しました。 …
-
-
よく目にする、「イケてないライブパフォーマンス」
おなじみ、イケてないシリーズ。 今日は、よく目にする、イケてないライブパフォーマ …
-
-
で、「グルーヴ」ってなんなん?
「あいつのプレイ、グルーヴしてないんだよね」 「もっとグルーヴ感じて歌わないと〜 …
-
-
リズムをカラダで感じるための初歩練習~Singer’s Tips#28~
音楽にあわせて足踏みをする。 手を叩く。 小さなこどもが音楽教室に入って、 一番 …
-
-
頑固な、間違ったプログラムを解除して、「声」を解放する
カラダの構造や、発声のメカニズムを教えて、左脳からアプローチしても、 カラダに触 …
-
-
ピッチが悪いの、気づいてます?
少し前のこと。 知人に誘われたとある会社のパーティー会場の片隅で、 いきなりジャ …
-
-
音楽家としての「表現の自由」を謳歌する
「テクニックを身につけるのは、選択の余地を増やすためである」 そんなお話をよくし …
-
-
情報の価値を最大化するための5つのヒント
おなじ曲を聴いているはずなのに、 聞き手によって、耳に入ってくる情報はまるで違い …
-
-
精度の高い”フォルティッシモ”を持て!
ダイナミクス、すなわち音量の強弱のコントロールが 音楽表現の大切な要素であるとい …
-
-
「切り替え」と「集中」で精度を上げる!
インプットとアウトプットを、 高い精度で両方一度にこなせるという人は 一体どのく …