絶望的に長い年月、積み重ねる「少しずつ」
こどもの頃好きだった忍者漫画で、
忍者の家に生まれたこどもは、ごく小さな頃から、
縄を飛び越える訓練をはじめさせられたという話を読みました。
最初はほんの数センチに張った縄も、
毎日、毎日、数ミリずつそのハードルをあげられてゆく。
だから、成人になる頃には、苦もなく、本当に高いところまで、
飛び上がれるようになるというのです。
そんな風に、さまざまな訓練をするから、
分身の術や、火遁の術が使えるようになるというお話で、
忍者にあこがれていたこどもの頃は、
真剣に「忍者の家に生まれたかった」と思ったものです。
ほんの少しずつ。
こうした微差が、やがて大差を生む、という話が、
なぜか、こどもの頃から、心に残ります。
誰かに毒を盛ろうとする人間は、
長年にわたり、ごくごく少量の毒を服用し続ける。
まずはほんの1滴。やがて、それが何十滴にもなるように。
ある日、毒を盛る相手と同じものを食べて、相手を毒殺し、
免疫の力で自分だけ生き延びるも、疑われることはない。。。
なにかの小説で読んだ、完全犯罪です。
ほんの少しずつ。
年々、すこしずつ首輪の幅を増やして、
自らの首の長さを伸ばしていくというタイの首長族。
思春期から唇に小さなお皿をはめ込んで、やがて少しずつ、
その大きさを大きくしていくというエチオピアのムルシ族。
こどもの頃から小さい足にするために指を折って布をまかれるという、
中国の纏足。
「少しずつ」のパワー。その不思議。
映画『ショーシャンクの空に』では、主人公が20年間かけて、
脱獄するために壁に穴を掘っていきます。
あれは、フィクションのお話ですが、
大分県には、禅海という僧が、鑿と鎚だけで、
30年もの歳月をかけて彫ったという全長約342mもの洞窟が実在します。
最初の1センチを飛ぶとき、
いつか自分が2メートルを飛び越えられる日がくるなどと、
想像できるでしょうか?
最初の鑿を打ち下ろすときは?
1滴の毒を飲むとき、
最初の首輪をまくときは?
真っ暗な、1ミリ先も見えない暗闇で、
地図さえもなく、ゴールさえも見えずに、
ただただ、絶望的に長い年月を、
毎日1センチ、いや1ミリ積み重ねていく。
何かを信じていることも、何かに向かっていることも、
忘れてしまうこともあるかもしれない。
変化の見えない、先の見えない毎日に、
心折れそうになることもあるかもしれない。
不安や、恐怖、妄想と戦いながら、
ただ、ただ、肉体的な習慣として、
小さな、小さなことを少しずつ積み重ねていくこと。
ときに、こうした挿話が鮮明に心に蘇るのは、あこがれか。
それとも、自分へのエールか。
ほんの少しずつ。
積み重ねていることが、ありますか?
関連記事
-
-
「バンマス・マニュアル」〜ライブ編〜
メンバーがあつまったら、さっさとライブを決める。 いや、なんなら、メンバーは集ま …
-
-
まだやれるから悔しい。 まだ行けるから苦しい。
音楽で食べていかれるかどうか。 そんなことを本気で心配し始めるのは、 大学や音楽 …
-
-
「変」なのか?才能なのか?
先日、とある会社にお勤めの、 才能あふれる、知的な若者とごはんしていた時のこと。 …
-
-
アイディアは、ポンと降ってくるギフト。
クリエイティブなアイディアって、 頭で考えているうちは絶対に出てこないもの。 作 …
-
-
なにをハンディとするか、 なにをチャンスと考えるか。
「やっぱなぁ〜。東北人は、生まれながらにハンデ背負ってんだなぁ〜」 カツゼツとビ …
-
-
「やってみたいこと」を「できること」「やったこと」に変える
「やってみたい」と思うことは、いくつくらいありますか? 特定の場所 …
-
-
セルフ・プロデュース時代を勝ち抜ける
「事務所に入りたい」 「メジャーデビューしたい」 そんな夢を抱いて、オーディショ …
-
-
スタジオ配信ライブ初体験。/「生まれて初めて」を恐れない!
誰にだって、何にだって、 「生まれて初めて」はあります。 まして、テクノロジー …
-
-
好きであることは自分への責任であり、義務である。
「好きなことをみつけて、それを一所懸命やれよ。 好きなことのない人生はつまんねー …
-
-
どんなに優れたアイディアも、 形にならなければ存在しないも同然
昔読んだ本に、「完璧主義のぐず」ということばがありました。 とにか …
- PREV
- 「飲みニケーション」は死んだのか?
- NEXT
- 「教える者」であるということ

