大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「はい、はい。わかった、わかった。」

   

「あんた、あんたって、、、んん〜〜っもう、ったくぅ〜〜。
く・・・くやしいぃいいいいいいい」

相手に激昂して、文句を言おうとするんだけど、
感情が高ぶるあまり、ことばも声も制御不能になって、
最後は泣きだしてしまう人、いますね?

そうかと思うと、

「それがさぁ〜〜。あははははは。。いやぁ〜〜もうぅ。。。くくくくく。。あの人がさぁ・・・わっはっは。。。」

自分が話そうと思うことが面白すぎて、相手に伝える前に自分が笑い転げてしまう人。

聞いている方はあまりに本人がウケているので、
なんだかシラケてしまう、ということも多々あります。

 

逃げる恋人に追いすがって、
激しく、「だって、好きなのよぉ〜〜」と訴えれば訴えるほど、
相手はどんどん引いていく、ということもあります。

 

送り手の感情が暴走すれば、伝わるどころか、
むしろ、受け手の感情は冷めてしまう。

北風と太陽のたとえではありませんが、
押しの一手では、相手の感情を動かすことはできないのです。

 

 

では、どうしたら、聞く人の心を動かすことができるのか。

 

感情が伝わるかどうかは、
いかに受け手の気持ちになれるかどうかにかかっています。

冒頭のように、アホほど腹を立てている人は、
感じているのではなく、興奮しているわけです。

自分の話に大笑いしてしまう人は、
自分の記憶を反芻して、
目の前にいる人を取り残している。

そして、逃げる男に追いすがる時は、
執着のエネルギーに引っ張られて、
相手の気持ちを受け取る努力ができません。

 

歌い手にも同じようなことが言えます。

感情ばかりが暴走すれば、
肝心のヴォキャブラリーが乏しくなります。

ただただ激しく、感情的に訴えれば、
その一本調子な押しつけがましいパフォーマンスに、
聞く人は疲れてしまうでしょう。

そんなときの人の反応はおなじです。

「はい、はい。わかった、わかった。」

 

そうかといって、自分の歌に自分が酔いすぎては、
聞き手は心動かされるどころか、
置き去りにされた気分になるでしょう。

自分本位の感情表現では、
聞く人は傍観者に回ってしまいます。

「何言ってんだろ、この人。なにが楽しいんだろう。」

理由もなくニコニコ笑顔を振りまきながら歌うのも、
必要以上に悲しそうに歌うのも、
聞き手の心をかえって冷めさせるものです。

 

とはいえ、相手に自分の気持ちをわからせよう、とするばかりに、
情念むき出しも、聞く方はつらい。

ある程度、聞き手との関係性がつかめてからならともかく、
いきなり、ど〜〜んとのしかかられて、
自分の感情をぶつけられたら、
聞く人は逃げ出してしまうでしょう。

では、どうしたら伝わるのか。

 

自分自身が語ったことで、
聞く人の心が動いたという経験は誰しもあるはず。

そのとき、自分の心の置き所はどこだったのか。

どんな感情レベルで、
どんな距離感で、
どんな目線で相手に語ったのか。

その時自分は、どんな声の調子で、
どんな音色で、
何にフォーカスしながら語ったのか。

 

よい歌い手は、語るように歌うもの。

伝えたいことがある人ほど、
歌いすぎない。
伝えよう、伝えようと意気込まない。
 

感情との距離がいつだって鍵なのです。

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