大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

覚えたはずの歌詞が出てこないのは、脳のバグ?

   

人間の脳は経験したことを実はすべて詳細に記憶している、といいます。
ただ、情緒を守るために、その記憶が取り出せなくなるだけだとか。

とすれば、1度聞いた歌の歌詞だって、理論的には、すべて、脳に記憶されているということ。

ただね、歌詞は「ことば」。
実際の経験なら、誰かに出会った時、その人の顔に感情を動かされたり、同じ名前の人を思い出したり、どこかにいたとすれば、匂いや、その場所の温度や湿度までもが、その場所の印象となって心に刻まれる。
だから、自分が実際に体験したかのように、感情や感覚と紐付けしやすい歌詞ほど、覚えやすいものです。
歌詞を覚えるのが苦手な人は、この紐付けして、感情を取り出す力を磨くことがお勧めです。

あたかも実際に経験したかのように感じられることばは、しっかりと胸に、カラダに刻まれます。
だから、たとえ形容詞が入れ替わったとしても、同義のことばがすっと出てきたりするものです。

ところが、こうして、しっかり記憶に刻んだはずのことばが、恐ろしいくらい出てこなくなる時があります。
これ、私、脳のバグだと考えています。

スラスラと口から出てくるはずの思考や感情の流れを、「え〜と、次なんだっけ?」という余計な思考が止めてしまう。
そ、バグです。
しょっちゅう逢っているはずの人の名前が出てこなくなる、あれ、です。

こうしたことが起きるのは、たいがい、疲れているとき、集中力が途切れるような出来事が起きた時、そして、自信のない時。

とにもかくにも、徹底的に、自分の中の経験と歌詞を紐付ける。
感情がわき起こるまで、歌詞を「経験する」。
自分のことばのように出てくるまで、反芻する。
そして、歌う前夜はしっかりと脳を休めることです。

後は、本番前にひたすら、おまじないのように繰り返すのみ。

脳は忘れない。脳は忘れない。脳は、絶対、忘れない・・・。

 - MISUMIの日記&メッセージ, 歌を極める

  関連記事

悪意の不在

ニューヨーク時代、 毎日のように遊んでいたアメリカ人の友人D君が 長期の予定でブ …

くちびるに歌を持て!

心に太陽を持て。 くちびるには歌を持て。 ふと、こんな詩を思い出し、ググってみた …

ちゃんと鳴らせ。

以前、お世話になった大洋音楽出版の水上喜由さんが、 「スティーブン・スティルスが …

「自分らしさ」、一回置いておきません?

どんなヴォーカルスタイルが「自分らしい」んだろう? 「自分らしい声」って、どんな …

フェンダー持ってる小学生?/カラダという楽器の価値とポテンシャルをちゃんと知る!

年明けくらいから、ご新規の若手アーティストたちが、次々とやってきてくれる雰囲気が …

脱・発信ジャンキー。

2020年の仕事納めから、 本年の仕事はじめである昨日まで、 意識的に発信断ちを …

ROCK、来てます?

昨日の朝のこと、 切らしてしまったオーツミルクを買いに近くのスーパーに行くと、 …

歌が劇的にうまくなる必勝練習法

昨年から育成に携わっていた新人アーティストたちが、先日レコーディングを終えたと、 …

「フォームは乱れるもの」と心得る。~Singer’s Tips #1~

どんな名プレイヤーも、 長期間試合に出続けていると、 急に成績不振になったり、 …

歌詞の理解を深める~Singer’s Tips #12~

どんなことばで語られようと、 心ない政治家の原稿丸読みの演説や、 稚拙な役者のセ …