大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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クリエイターの「売る努力」ってなんだ?

   

人が望むものをつくる「職人」と、
自らが望むものをつくる「アーティスト」。
クリエイターには2種類しかいないと長年信じていました。

だから、自分がつくりたいものが、人が望むものと一致すること、
すなわち「売れるアーティスト」であることは、
なんて恵まれたことだろうと、羨ましく思ってもいました。

一方で、売れ線を狙って作品をつくる、いわゆる商業アーティストを、
「えせアーティスト」と、忌み嫌っていたような側面もあって。

だから、自分がつくりたいものが、世に認めらないなら、
生業は生業で営みつつ、作品は作品として、つくっていくしかないんだと、
半ばあきらめていたわけです。

 

ビジネス書著者のためのセミナーに出席したときのこと。

「自分が書きたい事だけ書いて売れるほど、出版業界は甘くない」。
出版の師、土井英司氏のカミソリのようなひと言に、ドキッとしました。

「じゃあ、売れそうなネタで書けばいいのかというと、
そんな薄っぺらい著者は、編集者にも、読者にもすぐに見透かされます」。

自分のためだけに作品をつくる「オタク系」も「売れ線狙い」も全否定です。
ではどうすればいいのか。

「自分が寝ても覚めてもそのことしか考えられないくらい大好きで、誰よりも得意なこと。
そして、人が本気で知りたいと思っていること。
書くべきなのは、それだけです」。

頭から水を浴びせかけられたような気持ちになりました。

5才のこどもに語りかけるなら、
5才のこどもに理解できることばを選んで、
彼らの興味を惹きつける表現で話す。

表現は、人ありき。

そんな当たり前のことを、まったく考えてこなかった自分に、驚いたのです。

誰に聞いて欲しいか、わかってないから、誰も聞いてくれないんだ。

自分は、「聞いて」とすら、語りかけてないじゃないか。
ホントに、人に聞いて欲しいと思っているのか?
自分のためだけにつくってきたのじゃないのか?

それじゃ、壁に向かってブツブツとひとりごとを言って、、
「誰も自分のことをわかってくれない!」
とダダをこねているのと同じです。

長年、自分がやってきたこと、やってこなかったことを、俯瞰する思いでした。


「書く努力と同じくらい、売る努力をすべし」。

出版の勉強を通して学んだことは、
音楽でも、仕事でも、
すべてそのまま、自分の人生に通じることばかりです。

オタク体質は変える術もありませんが、
没頭している時ほど、届けたい人たちの顔を思い浮かべる。
それだけで、自己陶酔の世界から抜け出して、
繫がる表現を選び取れる気がします。

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 - Life, クリエイト

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