「夢に向かって邁進する」は美徳でもなんでもない。
学生時代、本の取り次ぎ店にバイトしていました。
バイトは朝の9時から夕方5時まで。
本が大好きだった私は、
春休み、夏休み、冬休みと、大学が休業期間に入ると、
毎回必ずそこでバイトをさせてもらっていました。
実家のあった品川から、神田神保町までの往復時間を入れて、
(お金がなくて、ロードランナーでバイトに通っていた時期もあります。)
バイトに取られる時間は10時間×週5.5日。
その以外の時間に、歌のレッスンがあり、
ピアノレッスンがあり、ダンスレッスンがあり、
バンドの練習があって、
レッスンも練習もないときは、
家に帰って練習するか、曲や歌詞を書くか、
本屋に寄って、本を見て回るか・・・
それが私の日常で、いかに、スキマ時間をつくらないように、
自分の夢に向かって時間を最大限に使うかということが、
当時の(今もですが)ひとつの目標でもありました。
同じバイト先に、実家住まいで花嫁修業中の、まぁ、今で言うフリーターのような、
20代半ばくらいの女性がいました。
いつもほんわかした、優しい空気感のある人で、
私は彼女が大好きでした。
あるとき、私が、毎日の暮らしぶりを何の気なしに話したところ、
彼女はふと、こう言ったのです。
「あらまぁ、な〜んて毎日、盛りだくさんで忙しいんでしょう。」
そのとき、生まれて初めて、
「あ。何にもしないっていう暮らし方もあるんだ。」と気づいたのです。
当たり前のことのようですが、
私のように生きて来た人間にとっては衝撃でした。
そっか。
朝起きて、バイト来て、帰って、寝る。
それ以外、何にも予定のない毎日というのが存在するんだ!
なんてゆとりのある、なんてゆったりした時間だろう。
だから、彼女のように、優しい空気感が出せる人になれるんだ。。。
言うまでもないことですが、人間の価値観はひとつだけではありません。
夢に向かってがつがつ生きる。
一分一秒も無駄にしないで目標に向かって邁進する。
そんな生き方は、別に美徳でもなんでもない。
それはひとつの生き方であるというだけです。
学生たちを見ていると、
なんだか、ひとつの価値観にとらわれている気がするときがあります。
つまり、「がつがつ邁進」「ビッグになるぜ」というマインドを持つのが正しくて、
がんばっている人はすごい。前進している人こそカッコいい。
という価値観です。
あのね〜。講師やっているんで、練習なんかしなくていいよ、とは言えません。
高っい高い授業料を払って、いろんなことを投げ打ってやってくる、
ポテンシャルもやる気もたくさんある人に最高の教育を、
というのが音楽大学というものと信じているので、
もちろんこちらも、それなりに厳しくやります。
でもね。そもそも、ほんわか、優しい毎日に幸せを見出している人が、
「がつがつ邁進」的価値観に自分の価値観を転換しようとするのは苦痛なはず。
それは、私にとって「ゆったりのんびり優しい人生」があり得ないのと同じくらい、
あり得ないし、苦しいはずです。
インターネット、SNSのおかげで、
人々の嗜好は多様化してきたと言われていますが、
今まで以上に、価値観は似かよってきていると思えてなりません。
人に注目されること。評価されること。
お金をたくさん持っていること。
有名になること。
成功すること。
可愛く見られること。若く見られること。。。
目標を持つのは素晴らしい。
そういう生き方はカッコいいかもしれない。
でも、がつがつ生きない。
今の自分の人生をゆったり楽しむ。
毎日、時の流れるのを味わう。
そんな生き方だって、絶対カッコいい。
春が来ました。
自分にとって、本当はどんな風に生きるのが心地よいのか、
じっくり考えてみたいシーズンです。
関連記事
-
-
ゼロ地点に戻れる曲は あるか?
KIMICOKOライブ以来、不定期ながら朝練を続けています。 最近のお気に入りは …
-
-
好きであることは自分への責任であり、義務である。
「好きなことをみつけて、それを一所懸命やれよ。 好きなことのない人生はつまんねー …
-
-
パッションこそが推進力
「ボーカル、どうしてやりたいの?」 かつて教えていた音楽学校で、こんな質問をした …
-
-
「数字」に価値を見出す
先日たまたまYoutuberのヒカキンさんが、 「Youtuberって、要は、他 …
-
-
夢をかなえるためのすべて
“If you build it ,he will comeR …
-
-
「歌うのが嫌い」という人の本当のわけ
「音楽に興味がない」「興味が持てない」という人は、ときどきいますが、 「音楽が嫌 …
-
-
「ミュージシャン同士のカップルってどうなんですか?」
ミュージシャン同士に限らず、同業者同士のカップルは、 なかなかうまく行かないもの …
-
-
お前はまだ、立ち続けているか?
『戦いに勝つのは、最後まで立っていたヤツ』 人の戦い方はいろいろです。 100メ …
-
-
「なぜ創るか」、「何を造るか」と同じくらい、「どう魅せるか」にこだわる
名曲といわれる歌は、 それを演じていた歌手たちのイメージやパフォーマンスと共に蘇 …
-
-
「悔しい」「うらやましい」「憎たらしい」がパワーの源
自分が叶えたくて仕方のない夢を、 身近にいた人があっという間に実現してしまったと …
- PREV
- いわゆる「事務所」ってなにしてくれるの?
- NEXT
- 「無神経」も「曖昧」もダメなんです。

