大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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歌が劇的にうまくなる必勝練習法

   

昨年から育成に携わっていた新人アーティストたちが、先日レコーディングを終えたと、スタッフさんから、音源が送られてきました。

ごく一般的なティーンエイジャーレベルだったのに、個性的で、しっかりとした歌いっぷり。
「はじめてのレコーディングとは思えないくらい安定していて、スタッフ一同驚いている」と、いうご連絡。
なんだか私まで誉めていただいたようで、めっちゃ鼻が高くなりました。

 

アーティストのトレーニングは、ほとんどの場合、具体的なゴールが設定されています。

3ヶ月後にツアーがある。
来月からリリイベがはじまる。
半年後にデビューが決まっている。

つまり、いわゆる、ケツカッチン。

限られた期間と、限られたスケジュールの中で、いかに求められる結果を出していくか。
アーティストも、スタッフさんも、そして、私も、真剣勝負です。

こうした状況下では、ボイトレだけでなく、当然ながら、具体的なレパートリーのトレーニングを効率よく、確実にやっていく必要があります。

そんなとき必ず行うのは下記の5つ。
劇的にうまくなる、必勝練習法でもあります。

  1. “音”にこだわる

    どんなに上手に歌っても、肝心の「音色」が悪かったら台無しです。
    1音にこだわる。
    とにかくどこを切り取っても「いい声」になるように。

  2. いきなり歌わず”地獄聴き”する

    上達しない人は、ほんっとにちゃんと聞けてない。
    耳から入ってくる情報の解像度があまりに低い。
    この解像度を徹底的に上げていくことが肝要です。
    そのためには、”地獄聴き”。
    メロディを、リズムを、オケを、ニュアンスを、徹底的に聞き込むことです。
    オリジナルを歌っているなら、まずはメロ譜を起こす。リズムを分析する。
    この一手間が結果を大きく左右します。

  3. 歌を”因数分解”して、ひとつひとつの要素を攻める

    メロディ、リズム、ことば。歌の要素は大きく分けて3つ。
    さらに、メロディは、1音1音の音の高さ、細かいピッチ、フレージング、強弱、音色の変化に。
    リズムは点 (ビート)と線(音価と休符)とグルーブ(強弱)、ことばは、発音、音色、意味、感情表現…と、歌をどんどん因数分解して、その一つ一つの要素を徹底的に攻めて行きます。
    気が遠くなりますか?
    しかし、この因数レベルの精度を上げることが、上達の近道であり、黄金の道です。

  4. “歌いやすい音量””歌いやすいテンポ”で、精度を徹底的に上げる。

    大声で歌おうとしない。強い声を出そうと張り上げない。高い声を気張って出さない。歌えてるかどうかも気付けないようなテンポで歌わない。
    歌いやすい音量で、歌いやすい音色で、歌いやすいテンポで、精度を徹底的に上げることです。
    声を張らなきゃ出ないのは発声が間違っているから。
    速いテンポの方がうまく歌える気がするのは、細かいところに気付けないから。
    いい声が出る音量で、ゆっくりのテンポで、完璧に歌う。
    そのスピードと音量をちょっとずつ上げて行く。
    これしかありません。

  5. 自分の歌を録音して徹底チェックし、”セルフフィードバック機能を磨く”

    どう歌いたいかという具体的なイメージを描くチカラを磨くこと。
    歌っている時の自分自身の感覚と、実際のパフォーマンスを一致させていくこと。
    上達の究極の鍵はここにあります。
    セルフフィードバック機能さえ磨かれれば、歌はひとりでに、どんどんうまくなります。

このプロセスを、期間を決めて、確実に踏んで行けば、歌は必ずうまくなります。
忍耐とくふうが必要ではありますが、ぜひチャレンジしてみてください。

 - Singer's Tips, The プロフェッショナル, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, 歌を極める

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