大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

説得力のある人は、エネルギー値が高いのだ。

   

聞く人の心にどかんと飛び込む「説得力あるパフォーマンス」。

はじめてギターを抱えて人前に立った高校生の頃から、ひたすら、このテーマに取り組んで来ました。

マイクの前に立つその瞬間、一声発したその刹那に、ガツッとオーディエンスの心をつかむ人は、いったい何が違うのか?

どんなに歌がうまくても、人の心を動かせるとは限りません。
美人も、ハンサムも、スタイルバツグンも、業界には掃いて捨てるほどいます。
弾き語りがうまいとか、難しい歌を完璧に歌えるとか、声が大きいとか、露出度の高い衣装をつけているとか、そういうことでも全然ない。

伝えるべきメッセージがあるか、
迷いなく表現する覚悟はあるか、
確実に届けるための気合いは十分か。
そして、徹底した準備をしているか。

この4つこそ、パフォーマンスにおける最重要事項であり、人前に立つ人にとっての普遍的なテーマです。

プレゼンやスピーチの研修でも、このポイントはゆらぎません。

原稿を書くことも、見栄えのいいパワポ資料をつくることも、バリッと見た目をキメることも、もちろん、すべて大事な準備には違いありません。

しかし、それだけでは聞く人の心は動きません。
人の心を動かすのは、エネルギーだからです。

スピーチを通して「伝えたいこと」をシンプルなことばに落とし込む。
そのことばを最大限に伝えるための表現、すなわち、声の音色、抑揚、間の取り方、リズム表現、手や目線の使い方を、研究し、シミュレーションし、カラダにたたき込む。
細部にこだわって準備するから、本番に集中できる。
集中するから、エネルギー値があがる。

歌とスピーチ。
全く別物のようですが、人間のすることの本質は、結局、ひとつです。

 - The プロフェッショナル, ビジネスヴォイス

  関連記事

「華がある人」になる

「あの人は華がある。」、 反対に「華がない」ということばを耳にします。 &nbs …

「才能の超回復」を繰り返して、人は成長するのである。

「超回復」ということばを聞いたことがあるでしょうか? 筋トレで傷ついた筋肉は、 …

「プロ」「アマ」という線引きは、 もうそろそろ卒業したい。

「俺なんか、ただのセミアマだからさー」。 高校時代に、 一緒にバンドをやっていた …

歌詞カードを丸暗記するより大切なこと。

本番直前になると、こういうブログを書いていることを、心の底から後悔します。 &n …

「切り際」で、歌は素晴らしくも、へったくそにもなる。

昨日、「音の立ち上がり」は、 歌い手の声の印象を大きく左右する、 というお話をし …

「ステージの上って、どこ見て立ってたらいいんですか?」

「ステージの上って、どこ見て立ってたらいいんですか?」   謎の質問で …

誰に話しても「ウソぉ〜」と言われるOnline映像制作秘話②

まだセミアマぐらいだった頃、 映像系音楽プロデューサーの アシスタントをしていま …

音楽には「顔」がある。「オケと歌」、じゃないんです。

楽器の人たちと話していると、 演奏中、ヴォーカリストとは全然違う視点で ステージ …

本当に大切なことは現場が教えてくれるんだ。

某映画のバンド演奏のシーンの撮影に立ち合ったことがあります。 役回りは、出演者の …

「もっと心をこめて歌ってよ」!?

「歌は心」的な話は苦手です。 心をこめて歌おう、 情感たっぷりに歌おうとがんばる …