デビューを夢見る若者は「白馬の王子さまシンドローム」?
白馬の王子さま。
苦しい人生を一転させてくれる、素敵な男性の代名詞です。
白馬にまたがって、どこからともなくやってくる、
ハンサムでパワフルでお金持ちの王子さまは、
八方ふさがりの現状を甘いキスひとつで変えてくれます。
そして、彼に迎え入れられさえすれば・・・
Live happily ever after。
めでたし、めでたしのハッピーエンドというわけ。
こんな夢のようなストーリーを、人はどこかで信じたい。
だから『プリティ・ウーマン』や『アメリカンアイドル』や、
『スター誕生』がウケるのでしょう。
しかしです。
白馬の王子さまは意外に気まぐれかもしれません。
要求が多かったり。
時に嘘つきだったり。
浮気をしたり、浪費癖があったりするかもしれません。
ひょっとして、のんびり屋過ぎて、イライラさせられたり、
金銭感覚が全然ないかも知れないし、
アニメオタク、ゲームオタクかもしれません。
夢を壊すわけじゃないけれど、
Nobody’s Perfect。
完璧な人間なんてひとりもいないものです。
夢にまで見てやっと手に入れた幸せは、
次の苦労のはじまりでしかなかった、というのはよくある話です。
これを、デビューを夢見る若者の話に例えるなら、
白馬の王子さまは「デビューさせてあげる」という事務所の社長か、
レコード会社のプロデューサーでしょうか。
王子さまは、あなたに「痩せろ」と言い、「売れる曲を書け」と言い、
「とりあえず路上でライブをやって、チケットを売ってこい」というかも知れない。
こうなるとシンデレラは、たちまちマッチ売りの少女に早変わりです。
「CD買ってください。」「これ、売れないと、叱られるんです。」
「お腹がすいてひもじいんです。」
マッチを擦ると見られる夢は、CDに録音された夢の世界ですね。
やがて、王子さまは、約束通り、デビューさせてくれ、
テレビやラジオに出させてくれるかも知れません。
気がつけば、昼も夜もスケジュールで埋まり、
どこへ行っても人に囲まれて、息つく暇もない。
過密スケジュールの中で、
次々と作品を作ることを要求され、
人と会うことを要求され、
成長する時間どころか、休養する時間すら与えてもらえず、
そのくせ、突然、青天の霹靂のように、
「君はちっとも成長していない!」
「この先、どうするつもりなんだ!?」
などと、問題を突きつけられたあげく、
「卒業!」とばかりに、契約を切られてしまう。
まるで物語を紡ぐことを忘れたとたんに殺されてしまう、
アラビアンナイトのシェヘラザード。
疲れていても、辛くても、
とにもかくにも何か生み出さなくてはいけない姿は、
鶴の恩返しか・・・。
ここで言いたいのは、「夢を見るな」ということではありません。
もちろん、「白馬の王子さまなど、信じるな!」ということでもない。
ストーリーには必ず続きがあって、
自分で選んだストーリーの続きは、必ず自分で、
責任を取らなくちゃいけないということです。
「こんなはずじゃなかった」はないのです。
物語の続きも含めて、自分が選び取っているゴール。
その先のストーリーも含めての自分の選択です。
けして、誰かが自分を幸せにしてくれるわけではない。
自分の幸せは自分自身で切り開くもの。
そのことをきちんと理解し、納得したら、
心ゆくまで、白馬の王子さまとの巡り会いと恋、
美しきハネムーンを、思いきり楽しむことも大切ですね。
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