「機材がない」を言い訳にしない。
時折、アーティストの卵たちや、学生たちに、宿題を出します。
その時課題にしている曲、または、今自分たちが取り組んでいる曲を、
「先生、これが今の自分の実力のすべてです」と言い切れるまで、
歌い込んで、録音して、提出するように、というものです。
先日の記事、
『ヴォーカルが絶対上達するスーパートレーニング』
を読んだ方ならおわかりと思いますが、
私がこうした課題を出すときは、マルチをつかって、
かなりなグレードまで追い込んでやってくることを期待しています。
テクニックの細かいところは、さっさと卒業して、
パッションやエネルギーの宿るパフォーマンスができるステージに、
一日もはやく昇って欲しいからです。
もちろん、やり方も、その理由も延々と説明しますし、
よほど切羽詰まったアーティストたち以外には、ある程度の期間を与えています。
しかし、残念ながら、いつもギリッギリに出される課題の、
9割以上が一発録り。
しかも、カラオケ屋さんで、または、ギターやピアノを弾き語りしながら。
それぞれ、ある程度は練習はしているのでしょうが、
残念ながら課題の意図はほとんどクリアできていません。
さすがにもう慣れっこなので、怒り狂うことはありませんが、
最初は、かなりがっかりしたものです。
理由のほとんどが「機材がないので」。
(中には「時間がないので」などと言う度胸のいい子もいますが)
今日は、『「機材がない」を言い訳にしない。』
をお届けします。
さて、先日もお伝えしたとおり、そろえるべきは、
MTR(マルチトラックレコーダー)、
またはPCがあるなら、DAW(デジタルオーディオワークステーション)。
こと、こうした話になると、「あ゛〜〜」と頭を抱える人がいますが、
正直、こうした環境を整えるのに努力が必要であるということは、
どんな状況にいる人でも変わりません。
どんなにベテランだって、新しいソフトを入れたり、機材を変えたりするときは、
みんな「あ゛〜〜」です。
最初に機材を触るときの、ちんぷんかんぷんさにかけては全員平等なのです。
「あ゛〜〜」の後、人が取る行動はふたつにひとつ。
逃げるか、立ち向かうか、です。
逃げ出したくなる理由は、だいたいにおいて3つ。
1.なんのことかさっぱりわからない。
2. やたらお金がかかりそうで、怖い。
3. そんなもの使いこなせる自信がない。
ここでハッキリ言っておきます。
人間の脳の情報処理スピードのピークは20才くらいという説が有力です。
もちろん、その後も学習能力は努力次第でどんどん向上するはずですが、
20才前後であまりに楽をさせてしまうと、
その後10年に大きく差がついてしまいます。
今、面倒と感じることは、1年後、3年後、5年後には、
何倍も面倒と感じられ、「はじめる」という苦痛もふくれあがるはずです。
こんな時代。わからなければ、情報を収集する方法は文字通り無限にあるはず。
アンテナを立てないところには、情報は飛び込んできません。
確かに、お金はある程度かかるでしょう。
でも、何かをはじめる、何かに取り組む、
ということにブレーキをかけるのがお金の問題なら、
絶対に、なんとしてでも、そのお金をつくる方法を考えるべきです。
可能の発想を持てば、今の時代、できないことはないはず。
そもそも、「お金がなくて」という学生のほとんどが、
飲み代だけは惜しげなくつかっているものです。
そして、そんな思いをして手に入れた機材なら、
絶対に使いこなします。
って言うか、人間はケチなんで、「元を取ろう」と思うものです。
お金をかけて、努力して、
必死に手に入れたら、それこそ、
絶対の絶対に元を取ろうと使い込むはずなのです。
いかがですか?
この記事を読んで、胸が痛いと感じたら、まさに、はじめどき。
な〜う。
or ネバーです。
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