「そんなことやってても売れないよ」
「そんなことやってても売れないよ」
「もっと売れてるもん聞かなくちゃダメだね〜。」
若かりし頃、業界の人が言う、この「売れる」「売れない」ということばが、
本当に嫌いでした。
音楽ってそういうことじゃないでしょ?
「売れてるもん」とかって、1曲も好きな曲ないのに、どうしろって言うの?
業界の人たちの言う「売れる」「売れない」ということばには、
ある種「芸能界」の匂いがあって、
(少なくとも、当時の私にはそのように感じられて)
その匂いがどうにも鼻について、
と同時に、その匂いが苦手な私自身を否定され、拒絶されているように思え、
ますます、嫌いになりました。
ことばは時代の匂いをまとうものですから、
アイドルやニューミュージック全盛であった当時、
洋楽しか興味のなかった私がそう感じてしまったのは、
無理からぬことかもしれません。
しかし、です。
ここ数年、ビジネスや出版を学んだ事で、
音楽の世界を客観的に見られるようになりました。
そして、「売れる」も「売れない」も、
単なる尺度のひとつに過ぎないと思えるようになったのです。
ちょっとわかりやすくするために、
自分のつくる作品を、別のもの、
たとえば、「カレーライス」に例えてみましょう。
どんな家にもその家のカレーライスがあります。
ある人は「お母さんのつくるカレーライス」が大好きで、
世界一だと思っている。
こんなに美味しいカレーライスを、
世の中の、美味しいカレーを食べたことのない人たちに食べさせてあげたい。
それで、飲食の専門家に、
「うちのお母さんのつくるカレー、めちゃくちゃ美味しいんだけどさ、
これ、もっとたくさんの人に食べてもらいたいんだけど?」
と話したとします。
するとその人はこう答えるでしょう。
「ま、カレーは誰でもつくれるからね。ただ美味しいだけじゃあダメでしょ。
なにかわかりやすい特徴とか、売りとかがなくちゃ。」
そこで、
「わかりやすい特徴って、どういうの?」と聞けば、
「人気店のカレー、食べ歩かなくちゃ。
口コミになるものには、それだけ理由があるからね」
などと言われる。
どんなに美味しいものでも、まずは人に知ってもらわなければ、
食べてもらうことはできません。
よしんば食べてもらえたとしても、
自分が美味しいと思うものを、誰もが美味しいと言うとも限りません。
まずは食べてもらうことができなければダメ。
食べてもらうには、口コミを起こさなくてはダメ。
口コミを起こすには、わかりやすい特徴や、人に話したくなる理由が必要で・・・
料理や、他のものに例えると、「売れる」「売れない」は、
こんなにシンプルでわかりやすくなります。
つまり、音楽を仕事にする以上、
冒頭のようなことばを言われるのは、ある意味、当たり前のことなわけです。
一方で、シンプルで当たり前のことを言われても、
音楽のこととなると、どうも感情的になってしまうのは、
自分のクリエイトする音楽が、多くの音楽家にとって、
閉じられた、とてもプライベートなものだからではないか。
「お母さんのカレーライス」を美味しいと思うのは、
単に味のせいだけではなく、家族で食卓を囲んだ想い出や、
お母さんの笑顔や、食べるときの自分の心情などのせいでもあります。
そんな、自分のプライベートな世界に踏み込まれれば、
誰だって、嫌な気持ちになるわけです。。。
そこをあえて、客観的に見ること。
自分がつくった音楽にまつわる感情を、一旦リセットすること。
それらができて、はじめて、「売れる」「売れない」ということばを、
ことば通りシンプルに受け止めることができるのではないか。
自分のプライベートな世界に、土足で踏み込まれたくないのなら、
「売れる」「売れない」とは無縁の状況に自分を置くしかないのではないか。
どちらが正しい、間違っているはありません。
自分の選択。それだけです。
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