「魅せたい自分」を演出する
スポットライトの中の3時間を支えるのは、
何千時間もの、気の遠くなるような、自分と向き合う時間。
ファンの目に移るのは、
キラキラと輝く、アーティストたちの「魅せたい世界」で、
その「魅せたい自分」を演出するために、
アーティストたち、スタッフたちはあらゆる仕掛けや、
努力をしているものです。
よく、メーキングビデオのようなものがありますが、
もちろん、それさえも、彼らの「魅せたい世界」。
少しでも、アーティストとしての自分たちのブランドに反する映像は、
すべてカットされ、編集されています。
そうした細部に至る気遣いや仕掛けが、
スターや、アーティストたちの魅力やカリスマ、ブランドを支えている。
存在そのものがアート、作品といえるゆえんです。
映画『イマジン』の中で、ジョン・レノンが、
自分の家の庭に侵入した熱烈なファンに、
「俺は君たちの偶像じゃない。普通の人間なんだ」と話すシーンは、
あまりにも有名です。
某・超有名アーティストは、こんなことを言っていました。
「あるとき、自宅に突然訪ねてきたヤツらは、
俺がTシャツに短パンで出迎えたことにひどく驚いてた。
俺がバスローブでブランデーグラス片手に現れるとでも思っていたようだった」
人は目に触れた一部分を元に、全体を想像するものです。
一部しか見えないからこそ、想像力をかき立てられ、
ますます魅了される。
かつて、レッドツェッペリンに心酔していた頃、
ロバートプラントもジミーペイジも、
美容院で髪にパーマをかけているのかな・・・などと考えては、
そんな思考に至った自分を恥じました。
とあるロックギターリストは、
「ファンにはトイレに行くところもみられたくないんだ」とも、
言っていました。
反対に、すべてをさらけ出すことが美学と考える人もいます。
しかし、それすらも、「すべてをさらけ出す」という演出だということを、
けして忘れてはいけません。
コーラやビールのパッケージングは、味そのものにも影響を与えます。
いかに自分を演出していくかが、音楽や歌の評価に関わることは、
疑いのない事実です。
SNSの時代、
アーティストやプレイヤーとしてのブランドを大切にするなら、
(意図的に、自分の売りの一部としてするのでない限り)
特に大切なことは・・・・
1.むやみに人の悪口を言ったり、下世話な話をしない
2.自分のブランドと矛盾するメッセージを投げない
3.不用意にプライベートを公開しない
4.親しみが増すのでは?という狙いで、庶民的なネタを披露しない
5.家庭の内情や心身の不安定さをさらけ出さない
などなど。
「見せないこと」も、
「見せたいものを効果的に魅せるための演出の一部」ということを、
忘れないようにしたいものです。
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