大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

15分間の名声(15 minutes of fame)

   

「誰もが知っている有名人」は、
自分が有名であるという認識こそ、もちろんあるけれど
その「有名さ」と自然に付き合っているというか、
気負いもないし、誇示もありません。
 
その人たちが周囲に対し、
ごく普通に接し、語りかけるようすに、
身構えたり、緊張したりしてしまうこちらの方が、
思わず、恥ずかしく感じられさえします。
 
それでいて、確実に、
「有名人のオーラ」のようなものを
全身から発していて、思わず目を奪われる。
 
「有名人のオーラ」って、
自分で自分が有名だと「知っている」、
みんな、自分のことが気になると「わかっている」、
そんな人が醸し出す空気感なのかもしれません。

 

とはいえ、「誰もが知っている有名人」でも、
あらゆるメディアと無関係な生活をしている人にとっては、
単なる「人間」にすぎません。
 
日本で「国民的」と言われるレベルの人でも、
ひとたび海外に出れば、やはり「ただの人」。
 
そう考えると「有名」とは、
実に曖昧で不思議な定義でもあります。

 

さて。

 

「有名人」は、この「誰もが知っている」レベル以外にも、

ある時期ちょっとだけ、の「にわか有名人」、
そういえば知ってる気がする「地味系有名人」
その筋のマニアの間では有名な「知る人ぞ知る有名人」、
あるコミュニティだけで有名な「プチ有名人」などなど・・・
さまざまな形で存在しています。
 
「有名」であるかどうか、
どんなレベルの「有名人」なのかは、
自分ではなく、周りの人が決めること。
 
ある時期、周囲からちやほやされることがあったり、
特定のコミュニティでもてはやされたりしても、
それは、その時、その場のマジックのようなものですから、
いつもおなじ状況を期待しても、
なかなか期待通りにはいかないもの。

 

「誰でも知っている」レベルの有名人、
もしくは、かつて、そういう存在だった人ほど、
そういうことをよくわかっている。
 
むしろ、「あぁ、この人は自分のこと、知らないんだな」と、
ほっとすることさえある。
 
だから、自然に振る舞えるのかも知れません。

 

ところが、「そうでもない」レベルの有名人ほど、
周囲の対応に過剰反応しがちです。
 

自分はすごいんだということをわからせたい。
 
周囲が自分のことをちゃんと認めているかどうかが気になる。
 
遠回しに、時にダイレクトに、
自分のすごさを相手にアピールする。
 
相手に自分が期待するような扱いをされないと、
苛立ったり、不機嫌になったりする・・・etc.etc.

 

自分を大きく見せるパフォーマンスほど、
無意味でむなしいものはありません。

めんどうくさい人と思われたり、
痛々しい印象を与えたり、
かえって「小者感」を漂わせてしまうことさえあります。

誰からも「有名人」として扱われたかったら、
「誰でも知っている有名人」になるしかないのです。

 

 

人にはそれぞれの居場所があります。
ステータスもポジションも、
今、自分がいる場所に、他人が勝手に名前をつけるだけ。

 

自分の居場所と役割を正しく理解して、
そこでベストを尽くすこと。

そうして、その居場所を少しずつ、
上に上に押し上げる。、広げていく努力をすること。

それこそが、
15minutes of fame(15分間の名声)にこだわるよりも、
たぶんずっとずっと大切なこと。

そうやってがんばっているうちに、
まわりの認識が変わったり、
本当に「有名」になったり、
するものなのかもしれませんね。


◆コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』。限定公開のレッスン映像もごらんいただけます。購読はこちらから。

◆自宅で繰り返し、何度でも。ヴォイス&ヴォーカルのすべてが学べる【MTL Online Lesson12 10月生受付終了しました。】

 - Life, 夢を叶える

  関連記事

シンプルでもいい。複雑でもいい。「生きる」を楽しむ。

学生時代、小笠原の父島という島を、 友人たちと共に自転車を担いで訪れたことがあり …

「声」は自分で選ぶ。〜Singer’s Tips #8〜

「●●みたいな音楽やりたいんですけど、声質が向いてなくて」 「△△さんみたいに歌 …

穴を埋めるのか。山を高くしていくのか。

スタジオのお仕事が軌道に乗り始めた頃のこと。 私の歌を気に入ったから、プレゼン用 …

あぁ、時は不思議に巡るのです。

「MISUMIちゃん、日本にもいい音楽いっぱいあるよ。 たまには、日本の音楽聴い …

「今の自分」を信じられないなら、「未来の自分」を信じる

「音楽学校って、夢をあきらめるためにくるところだって、先輩が言ってました」 &n …

成長に痛みが伴うのは、 本気度を試されているから。

高校1年の夏だったと記憶しています。 手足が痛くて、眠れない夜が続きました。 筋 …

時間には密度があるんだ

今日のレッスンで、 「10000時間の法則」の話をしました。 じっと聞いていた彼 …

ギターソロが邪魔くさいぃ〜!?

「最近の子はギターソロになると、曲を飛ばすんですよ」 え?なんですか、それ? と …

パッションから目をそらさない!

「え?MISUMIさん、そこまでやるんですか?」 何度言われてきたかわからないこ …

つい、この間まで二十代だった気がする?

「先日、MISUMIさんがUPしてたママさんたちのコーラス、 すごくカッコよかっ …