「高い声が出ない」という理由だけでキーを決めてませんか?
どうしてなんでしょうね?
どうして、「高い声が出ない」という理由だけで、
みんな、キーを決めちゃんでしょうね?
いや。気持ちはわかります。
もちろん、高すぎるキーで、キーキー声になっちゃうと、
歌う方も、歌われる方もきついですが。
キーって、それだけで決めちゃっていいんですか?
あまりにも多くのシンガーが、
「高い声が出ない」というだけの理由で、
キーを下げて、
低すぎて抜けない声で、
歌詞も聞き取れないくらいの音量で、
なんだか響かない、もこもこしたイケてない音色のまま、
おまけに、「低い低い」と意識するあまり、
思いっきりフラットして、
イケてない歌を歌っています。
大事なのは、メロディの高いところだけですか?
AメロもBメロも、低くて全然聞こえないのに、
いきなりサビだけいい声出たって、
曲の魅力は全然伝わらなくないですか?
そもそも、そんな風にキーを決めて、
肝心のサビだっていい声で歌えていますか?
ハッキリ言います。
「高い声が出ない」という理由だけでキーを決めるのは、
あまりに早計です。
しかし、この理由だけで曲のキーを決めている人は、
ヴォーカリストに限らず、作曲家やアレンジャー、
ディレクターにもたくさん、たくさんいます。
おかげで、アーティストが、
ライブになると、息しか出ないような、
奈落の底のような低い声で、
メロディにならないメロディ、
聞く人が想像で補うしかない歌詞で、
AメロやBメロを歌うしかなくなるんです。
「あのアーティスト、ところどころ声が抜けなくて」と、
エンジニアさんは頭を悩ませますが、
そもそも出てないんだから抜けないのは当たり前なんです。
では、キーはどうやって決めるんでしょう?
本来、一番考えるべきなのは、
「聞かせどころがいい声になるキーにすること」。
出だしのメロディが印象的なら、
そのメロをいい声で歌えるキーを探すべきです。
極端に言えば、
出だしのメロディが聞かせどころで、
そこをいい感じで歌えるキーに設定したら、
高音が地声で出ないと言うなら、
高いところはファルセットで歌ったって、いいわけです。
アレンジ次第で、サビで転調するということだって考えられる。
聞かせどころがいい声になるように設定するには、
半音単位でキーを変えて、すべて録音してチェックし、
こだわってキーを決めるのが一番です。
その後で、
じゃあ、高いところはどう歌うか?
惜しい音域なら、どうやって出すか?
というところに議論が行くべきなんです。
もっと言えば、
ある程度の音域はシンガーの絶対条件です。
自分の歌える最低音から最高音までを、
可能な限り均等な音量で、
均等な音色で歌えるようなテクニックを持てれば、
キーは、
自分の声の美味しいところ、
音楽的にメロディが生きるところ、
アレンジ的に心地いいところ・・・などで、
自在に決めることができるわけです。
よいパフォーマンスをしたいなら、
基礎力というのは、やっぱり不可欠。
それこそがヴォイトレの音楽的意味です。
コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』購読はこちらから。
関連記事
-
-
あなたのパフォーマンス、「政治家の謝罪会見」や「大根役者」になってませんか?
声の表現力について説明するとき、必ずやって見せる、 「政治家の謝罪会見」と「大根 …
-
-
「一生うまくならない人」
いろいろなところで、「歌は誰でもうまくなる」と書き続けてきました。 今でもそれを …
-
-
「面白くないな」と思ったら、まずは自分自身を見直す
「教える側が優秀な生徒や、可愛い生徒を贔屓(ひいき)するのは当然だ。 世の中不公 …
-
-
「なに聞いて歌ってんの?」
「なに聞いて歌ってんの?」 ワークショップや授業で生徒たちの歌を聞いた後、 よく …
-
-
そんな情報、いりますか?
私が最も嫌いな人種に、 「いらんことをいうヤツ」というのがいます。 本人にはどう …
-
-
「練習しなくちゃ」と思ってしまう時点で、 ダメなんです。
「やらなくちゃいけないってわかっているんですけど、なかなかできなくて・・・」 & …
-
-
早急になんとかしたい、姿勢・筋力・体力。
「最近の若者は・・・」などということが言いたくなるのは、 お年をめしてきた証拠で …
-
-
そのオリジナル曲、イケてる?イケてない?
オリジナル曲を人に聞いてもらうときには、 曲自体のクオリティ、構成などはもちろん …
-
-
最後は「自分の声」を聞くのだ。
「MISUMIサンはね、 もっと、自分じゃ恥ずかしくって赤面するくらい、 下世話 …
-
-
「そんなピッチで気持ち悪いと思わない自分をなんとかした方がいいよ」
「ああ〜〜、やめてぇ〜〜、気持ち悪いぃ〜〜〜っ」 音楽がなんとなくわかった気にな …