大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

作業量の多さにひるまない

   

英語を勉強しはじめたとき。

英語の辞書の重さをずっしり感じながら、
「こんなにたくさんのことばを覚えなくっちゃいけないんだ。
きっと、一生英語がしゃべれるようになるなんて無理だ。。。」
と絶望感に苛まれたものでした。

しかし、辞書は知らないことばを調べるために存在しているもの。

たとえば、平均的な日本人のおとなの語彙数は3万〜5万語。
対して、広辞苑の見出し語約24万語。

辞書のたった5分の1程度しか知らなくても、
立派に(そこそこ?)日本語を操っていることになります。

 

ギターのコードを覚えはじめたときもそうでした。

ギターのコード本を前に、
「なんてたくさんのコードネームがあるんだろう。。。
こんなの全部覚えるなんて、絶対に無理・・・」
と、がっくりしながらも、
ひとつ、またひとつとコードを覚えて行ったあの日。

あれから何十年も経ったけど、
今、自分が実際に弾くコードなんて、
もう笑えるくらいちょっぴり。
それでも成立するように、工夫したり、
いろいろな人に助けを求めたりしているわけです。

膨大な作業量や、作業工程にひるむなかれ。

結局、人は、自分自身のうつわ以上の語彙や知識は、
必要ないし、使いこなせないもの。

学ぶということは、単に語彙や知識だけを学ぶことではなく、
自分自身のうつわを広げて行く作業。

今の自分の能力に見合うだけの語彙と知識を手に入れることなんて、
ちょっとだけ粘れるならば、きっと誰にでも可能なこと。

例えば3万語を覚えることは、
果てしない作業に思えるかも知れないけれど、
1日約30語覚えれば3年、15語でも6年、
つまり中学で学びはじめた英語も高校を卒業するまでには、
そこそこ不自由なく話せるようになっている計算になります。

母国語で5万語知っているのはかなり物知りな部類だそうです。
日本語で自分が知り得ないことばは、
もちろん外国語で知っていても何の意味もありませんね。

 

機材やPC、ソフトウェアのマニュアルもおなじ。
楽譜だって、楽器だって、全部おなじです。

 

自分がやりたいことを可能にするために、
本当に学ばなくてはならないことは、案ずるよりずっと少ない。

一番大切なのは、知識や情報ではなくて、
なにを叶えたいか、
なにを可能にしたいかという、
マインドセットなのではないか。

思考の順番を間違えるから、
前に進む前に挫折してしまうのではないか。

学ぶべきことが抱えきれないほど多いと思えたときこそ、
立ち返りたい原点です。

【”ヴォイトレ365″ 毎日配信中】
声について知るべき知識のすべてを、毎日お届けしています。バックナンバーも読めますので、ご登録がまだの方はぜひ、こちらから。

 - Life, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

いつでもどこでも、歌あればこの世は楽し。

欧米人の友達に、「あなたは歌ったりしないの?」と訊ねると、 よく返って来ることば …

「情報」との関係性を見極める

学校で音楽や歌を学ぶ一番のメリットは、プロフェッショナルの先生方に、 そのノウハ …

「とろい」って言うなっ!

「キミは運転、向いてないねー」 この人生、 「向いてない」と言われたことは数々あ …

メイクに目覚める年齢 vs. あきらめる年齢

大学4年の頃、よく遊んでいた同級生の男子に、いきなり、 「っていうかさぁ、コサカ …

歌い手の声の印象はこれで決まる!

プロアマ問わず、 さまざまなシンガーの歌にアドバイスをしていて、 もっとも気にな …

「誰に学ぶか?」vs.「誰が学ぶか?」

中学1年でやっとの思いでピアノを買ってもらって、通い始めた近所のピアノ教室。 2 …

エネルギー不足で「やってられるか、ばかやろー」となったときなにをするか?

ガッツ不足に陥るときは誰にでもあります。   絶対うまく行くと思ってい …

歌がうまくなりたいなら、そろえるべきアプリ10選!

今日はヴォーカリストやトレーナー、歌がうまくなりたい人が持っていると便利なお勧め …

ああ、テクノロジぃい

音楽家ってのは、(いや、ヴォイストレーナーってのもそうか。)ゴールデンウィークと …

歌がうまくなるための「4つの要素」──練習の精度を上げるヒント

歌がうまくなるには、4つの要素があります。 どれも同じくらい大切で、それぞれ特徴 …