作業量の多さにひるまない
英語を勉強しはじめたとき。
英語の辞書の重さをずっしり感じながら、
「こんなにたくさんのことばを覚えなくっちゃいけないんだ。
きっと、一生英語がしゃべれるようになるなんて無理だ。。。」
と絶望感に苛まれたものでした。
しかし、辞書は知らないことばを調べるために存在しているもの。
たとえば、平均的な日本人のおとなの語彙数は3万〜5万語。
対して、広辞苑の見出し語約24万語。
辞書のたった5分の1程度しか知らなくても、
立派に(そこそこ?)日本語を操っていることになります。
ギターのコードを覚えはじめたときもそうでした。
ギターのコード本を前に、
「なんてたくさんのコードネームがあるんだろう。。。
こんなの全部覚えるなんて、絶対に無理・・・」
と、がっくりしながらも、
ひとつ、またひとつとコードを覚えて行ったあの日。
あれから何十年も経ったけど、
今、自分が実際に弾くコードなんて、
もう笑えるくらいちょっぴり。
それでも成立するように、工夫したり、
いろいろな人に助けを求めたりしているわけです。
膨大な作業量や、作業工程にひるむなかれ。
結局、人は、自分自身のうつわ以上の語彙や知識は、
必要ないし、使いこなせないもの。
学ぶということは、単に語彙や知識だけを学ぶことではなく、
自分自身のうつわを広げて行く作業。
今の自分の能力に見合うだけの語彙と知識を手に入れることなんて、
ちょっとだけ粘れるならば、きっと誰にでも可能なこと。
例えば3万語を覚えることは、
果てしない作業に思えるかも知れないけれど、
1日約30語覚えれば3年、15語でも6年、
つまり中学で学びはじめた英語も高校を卒業するまでには、
そこそこ不自由なく話せるようになっている計算になります。
母国語で5万語知っているのはかなり物知りな部類だそうです。
日本語で自分が知り得ないことばは、
もちろん外国語で知っていても何の意味もありませんね。
機材やPC、ソフトウェアのマニュアルもおなじ。
楽譜だって、楽器だって、全部おなじです。
自分がやりたいことを可能にするために、
本当に学ばなくてはならないことは、案ずるよりずっと少ない。
一番大切なのは、知識や情報ではなくて、
なにを叶えたいか、
なにを可能にしたいかという、
マインドセットなのではないか。
思考の順番を間違えるから、
前に進む前に挫折してしまうのではないか。
学ぶべきことが抱えきれないほど多いと思えたときこそ、
立ち返りたい原点です。
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