自意識の暴走を屈服させる
ボーカリストも、ミュージシャンも、役者も、ダンサーも、
おそらくはパフォーマーと言われるすべての人が、
自意識と常に向き合い、共に歩き、あるときは距離を置き、しながら、
親密に、大切に付き合っています。
自分自身のあり方を意識、分析することなしに、
パフォーマーとしての表現も進歩もありません。
高い自意識があるからこそ、
自己管理をし、肉体を研ぎ澄まし、テクニックを磨き、
いつ人から見られてもいいような、自分自身を生み出すことができる。
そして、だからこそ、自然体でいながらにして、
カリスマ性や魅力を失わないパフォーマーになれるのです。
自意識は、実に大切な友といえます。
しかし、この「自意識」。
うまくコントロールできずに暴走させてしまうと、これほどやっかいな敵はいません。
人に気にして欲しい。
誉められたい。
誰よりうまくやりたい。
という、気持ちが先行したり、
うまくできなかったらどうしよう?
人は自分をどう思っているんだろう?
どうせ私なんか・・・。
などという、ネガティブな思いがどんどん湧いてきたり。
その結果、パフォーマンスがしどろもどろになり、
顔が真っ赤になり、
恥ずかしさにいてもたってもいられなくなり、
しまいには涙まで出てきます。
ティーンエイジャーの頃の
好きな子に意地悪をしてしまったり、
好きな子の前に出るとしゃべれなくなったり、
反対に、くだらない馬鹿話をして、笑いばかり取ってしまったり・・・
そんなメンタリティを、いつまでも卒業できずに抱えているかのようです。
さて、自意識の暴走を、どうしたら止められるか。
大切なことは、視点と発想の転換、そして行動です。
まずは、人は自分ほどには自分のことを気にしていない。と気づくこと。
誰もが同じくらい、自分のことに一所懸命で、
ああでもない、こうでもないと他人の揚げ足を取るほど暇じゃないのです。
同じパフォーマーやミュージシャン同士なら、
みんな、それぞれが同様に自意識を研ぎ澄ましてその場にいる。
他人のことどころじゃなく、今の自分と同じくらい、
泣きたい思いでそこにいる人もいるでしょう。
では、オーディエンスなら?
オーディエンスとして自分がその場にいたらどうか?、と想像してみてください。
「なんだ、こいつ、ださい!」といちいち、揚げ足をとりますか?
その場にいるのは、楽しみたいから、応援したいからではないですか?
楽しみたい、応援したいと言う気持ちのない人は、
所詮、どんなに素晴らしいパフォーマンスにでもケチをつけます。
そんな輩は端から相手にしないで、放っておけばいいのです。
そうやって、発想と視点を変えてみた上で、
もうひとつ大切なこと。
そんな自意識の暴走を屈服させるくらい、
徹底的に準備して、がむしゃらに臨むことです。
がむしゃらに準備して、ひたむきに行動すれば、
暴走気味の強い自意識と、
準備によって得た自信が、ふと折り合う瞬間を体験できます。
その瞬間が、自意識を敵のまま放置するか、味方につけられるかの分岐点。
結局は、そこまで自分を追い込んで行かれるかどうかの勝負なのです。
関連記事
-
-
リズムの「点」に意識を向ける
リズムのある音楽には、必ず「点」がある。 これが、私の解釈です。 …
-
-
練習の結果が出ない3つの理由
「毎日練習してるんですけどね・・・」 結果の出ない人ほど、 自分がいかに練習に時 …
-
-
ネックの曲がったギター vs. 姿勢の悪いヴォーカリスト
姿勢やフォームが悪いヴォーカリストは、 ネックの曲がったギターに例えるのがもっと …
-
-
分解して聞く。分解して練習する。~Singer’s Tips#27~
「片手ずつ練習しなさい。 右手と左手、一緒に弾いていたら、 間違っていることに気 …
-
-
練習の成果は「ある日突然」やってくる
はじめて「上のF」が地声で出た瞬間を、 今でも鮮明に覚えています。 学生時代は、 …
-
-
焦燥感や無力感が、 明日の自分をつくるエネルギー
もしも、人間のカラダに、 「歌がうまくなるスイッチ」というものがついているなら、 …
-
-
ピッチの悪い歌が致命的な理由
音楽はピッチ(音の高さ)という概念があるから成立するもの。 どんなにリズム感がよ …
-
-
練習するのは、全てを忘れるため
「テクニックなんかどうでもいいんですよ、歌は。」 ピッチだ、リズムだ、表現力だと …
-
-
うまくなる人の5つの条件
「うまくなりたかったら、やっぱヴォイトレしなくちゃダメですかね?」 「学校みたい …
-
-
ヴォーカリストだって、もっと「音色」にこだわる!
「ロックは出音とグルーヴ、ステージプレゼンス」 と繰り返し書いてきました。 筆頭 …
- PREV
- 挑戦か?ブランドか?
- NEXT
- 「なぜだろう?」の先に、進歩がある。