大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「無神経」も「曖昧」もダメなんです。

      2016/03/06

「MISUMIってさぁ、お勉強は出来るけど、頭悪いじゃない?
あ・・・ごめんね。あたし、正直だから。ウソつけないんだよね。」

 

自分のことを「正直だ」という人は、たいがいの場合、「無神経」をともなって、
相手のためにというよりも、
自分が言いたいことを言ってスッキリするためにものを言っている。

 

若かりし、
(誰も信じないかも知れないけれど)意外にいじめられキャラだった頃、
そんな結論に達しました。

 

この手合いは、「正直」を免罪符に
相手の欠点でも、隠し事でも、言いたくなったら、
それが例え相手を傷つけるようなことでも、即座に口に出します。

そのくせ、こういう人に限って、自分は繊細で、
人の気持ちがよくわかって、思いやりがあって・・・などと思っていたりする。

いやはや。困ったちゃんっているもんです。

 

 

さて、ここまで極端な人の話はさておき、今日の本題です。
人にものを教えるときは、常に、
白魔女と黒魔女、二つの心の戦いのようなところがあります。

 

例えば、生徒の演奏がうまく行っていないとする。

教える側としては、
その演奏を限りなくよいレベルに持っていかせるのが仕事です。
しかし本人は自分の演奏のまずさに気がついていない。
むしろ、いい気分でプレイバックを聞いている。

 

こんなとき、どう言うか?

どう言うのが、もっともわかりやすく、
本人も前向きにとらえられ、しかもやる気を引き出せるか?

 

本人の気分をよくすることを第一に考えれば、
「うん、いいね」と誉めるのがいいかもしれません。

実際、生徒の顔色をうかがうばかりに、
生徒の演奏をやんわりとしか批判できないという先生もいます。

または、「まぁ、生徒というのはこんなもの」と、
勝手に限界を決めて、そこそこの演奏ならよしとする先生もいます。

 

しかし、それでは、まず、

「生徒の演奏をよくする」という自分の仕事を放棄していることになりますし、
「生徒の限界」を勝手に設定して、伸ばす努力をしていないことにもなります。

 

だからといって、いきなり罵倒したり、全否定したりすれば、
本人を深く傷つけ、自信を失わせ、
かえって結果を悪くしてしまうケースもあるでしょう。

 

では、どうするか?

 

私が大切だと考えているポイントは3点です。

 

伝えたい情報、

受け手である生徒の性格、

よい結果を導くための方向性、

 

この3つを考慮してことばを選ぶこと。

躊躇なく、断固とした、しかし愛情を持った態度で相手に接すること。

 

 

相手や状況によっては、ときに、厳しいことばを選ぶときもあります。

反対に、とにもかくにも勇気づけることが必要なケースもあります。

 

どんなバランスがベストなのかはケースバイケース。

 

正解は人の数だけあるでしょうし、定石などというものはありません。

 

ただ、逃げないこと。向き合うこと。自分自身のことばに責任を取ること。

 

この覚悟さえあれば、きっと心もことばも通じるものだという信念は、
今もゆらぎません。

 

 

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 - イケてないシリーズ, ボイストレーナーという仕事

Comment

  1. TAKA より:

    アドバイスとして「グサッ!」と来ることを平気で言う人はいますね。

    それが事実でなかったり嘘であれば、気になることは無いでしょう。
    それを言う人の方がおかしいってことで話は終了しますから。

    嫌な思いをするのは、それが多少なりとも当たっている場合。
    「そりゃそうかもしれないけど、言い方ってものがあるでしょう?」から始まって、「この人はデリカシーが無い」とか「この人は知性ってものが無いのか?」ってことにも広がっていく。
    いずれにしても、こういう言葉を投げかけられるのは気持ちの良いものではない。アドバイスとは言え、そういうのが良いこととは思わない。

    その上で。

    あえてこう言いたい。

    自分が圧倒的に優れていれば、そもそも、そんな言葉を投げかけられることは無いのだと。

    例えば、「あんた、自分で美人と思ってるかもしれないけど、実際は人並み以下だからね」とか言ってくる人も、否定のしようがない絶世の美女に対しては、ときに卑屈な笑顔を浮かべてすり寄ってきたりする。

    他人の歌や演奏にダメ出しをする人も、世界的な名声を得ている人の世界最高レベルのパフォーマンスを見ると、自分の「素晴らしい、感動した!」という気持ちを伝えるためにやってくる。
    そして笑顔、時には涙を浮かべながら会場を離れていく。「よかった~、ほんとによかった~」とか言いながら。

    人間は、圧倒的に優れたものに対しては、問答無用で「降参」するわけです。

    だから、「正直だからさ。ウソつけないからさ」という枕詞と共に何か言ってくる人がいた場合、「そうか。いずれにしても、まだ自分は圧倒的なレベルに至っていないんだな」と考えれば良いと思います。圧倒的なレベルに到達すれば、その人も必ず卑屈な笑顔ですり寄ってくるので。
    そうなる日を目指そうと考えれば良いと思います。

    生徒達にもこういう教えをしてあげると良いかも???

    プロレスは、殺し合いではないので「相手に怪我をさせない攻撃」をします。それは重要事項。しかし、もう一つ重要なのは「厳しい攻撃から身を守る受け身の技術」。

    他人に優しく。そして、自分には・・・・・受け身の技術を。
    強い自分になるには、両方必要じゃないかと思うわけです。

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