「そんなの歌ってても売れない」!?
時々、不思議な質問を受けます。
先日のキャサリン(仮名)の質問がまさにそれ。
「私、ジャズとか歌った方がいいんですかね?」
「は?ごめん。言ってる意味がわからないんだけど?」
「このあいだ、よく出させてもらってるライブハウスの社長さんに、
『キャサリンはああいうロックみたいなのより、
もっとジャズとか歌った方がいいね』って言われちゃったんです。」
出た出た。
こういう話を聞くたびに、またかと思ってしまいます。
そういう音楽は売れないから、もっと売れ線やった方がいいとか。
キミの声はR&Bには向いてないから、ポップス歌った方がいいとか。
まぁ、他人というのは、わかったようなことを言いたいものです。
相手が、音楽的にも人間的にも全面的に信頼できる人で、
自分の発言に対して、きちんと責任を取ってくれそうな場合以外、
そんな意見は「なるほど、そういう意見もあるのね」程度に、
軽く受け流しておくのが賢明です。
「そもそもさぁ、世の中には子どもの頃からジャズが大好きで、
何年も何年も、寝ても覚めてもジャズのことしか考えられないくらい、
必死でジャズをやっている人が死ぬほどいるのに、
『ジャズとかやった方がいいんですかね』レベルで、対抗できると思うなんて、
おめでたすぎるでしょ?」
若かりし頃、そうした無責任な発言にさんざん乙女心を弄ばれてきた私は、
人一倍、この手の話に腹が立つので、ついつい口調が荒くなります。
「『そんなことやってても売れないよ』くらい、愛のない発言、ないと思わない?
そんなこと断言できるの神様だけでしょ?お前は神か?って話でしょ?」
「『これが売れる』とか言われて、言いなりになって、
やりたくもないこと何年もやったあげく、鳴かず飛ばずだったときに、
一体全体誰が責任取ってくれるの?
その時、キャサリンは、誰を恨むの?
人間は、本当に好きで好きでたまらないことしか一所懸命できない。
「好き」のレベルで負けるなら、どんなにがんばったって、絶対に勝てない。
結局さ、どんなにつらくても、自分の道は自分自身で選び取るしかないのよ。」
絶対売れないと言われても、その道を貫き通して、やがてブレイクした人もいます。
売れなくても、好きなことだけをハッピーにやりたいんだと、
悟りの境地に入った人もいます。
大好きな音楽で何の苦労もなくブレイクして、
幸せに活動を続けるラッキーな人もいれば、
「売れ線」を追求して、どんなに嫌なことも売れるまでの我慢と耐えて、
結局、鳴かず飛ばずのまま業界を去って行った人もたくさんいます。
運命は自分で選べないのだとしても、自分の未来への地図は自分で描きたい。
それが、少なくとも、納得できる生き方というものだと、私は信じています。
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