安定したパフォーマンスのカギは「微調整」
「自分、毎日同じようにストレッチして、声出しするんすけど、
なっかなか思ったように声が安定しないんすよ。
迷わず、ポンと鳴らせる時もあれば、
どうやっても思ったように響かないときもあって。
何が原因なんすかね〜?」
マジトレには時折、”アスリート系”アーティスト(と私が勝手に呼んでいる)が
レッスンにやってきます。
運動能力が非常に高く、学生時代は音楽よりもむしろスポーツに夢中になった、
特定のスポーツでそれなりの成績を残してきた子たちです。
陸上、球技、武道、体操、水泳などなど、競技はさまざまですが、
アスリート系に共通の特徴は筋感覚、軸感覚が優れていること。
そして、そして非常に熱心に練習に取り組むこと。
つまり、ありがたいことに、
ベーシックトレーニングが面白いようにどんどん消化されていくのです。
ハリー(仮名)もそんなアスリート系のアーティストのひとり。
練習熱心で、毎日欠かさず一連のトレーニングを行っているようです。
正しいトレーニングを続ければ、結果は確実についてくると知っているのです。
冒頭の台詞は、そうやって毎日コンスタントに練習しているからこそ出てくる疑問です。
「なにが正しいのか、だんだんわかんなくなってきちゃいました・・・」
ここで、反対に、運動音痴の私からハリーに質問します。
「ねぇ。ハリー、バスケのフリースローの成功率ってどのくらいなの?
100発100中ってわけじゃないの?」
「え?・・・いやぁ、とんでもない。
プロのバスケット選手でもフリースローで成功率が7割越えたら、
すごいって言われますね。」
「相手がいるスポーツならともかく、フリースローだの、ボーリングだのみたいに、
常に同じコンディションでやるはずのことなのに、
毎回同じ結果が出せないのはなんでなの?」
「それは、人間のカラダのコンディションが毎日微妙に違うからで・・・」
そこまで言ってハリーは気づいたようです。「なるほど。そういうことっすか・・・」
そう。そういうことなんす。毎日微妙に違うカラダのコンディション。
安静時の呼吸の量や圧力、スピードも毎日微妙に違います。
全身の緊張具合も違う。もちろん、声帯や声道の緊張具合も振動具合も違います。
つまり、声は生き物。
毎日違うのが当たり前なんです。
自分のコンディションの微妙な変化を敏感に察知して、
最適なパフォーマンスができるように微調整を加えること。
アスリートでも、ミュージシャンでも、
安定したパフォーマンスのできるプロフェッショナルには不可欠のスキルです。まぁ、こんな禅問答のような会話でさらりとすべてわかってくれて、
結果に結びつけられるのは、
ほんと、よほど気合いの入ったヤツか、アスリート系だけなんすけどね。
関連記事
-
-
言い訳のない歌を歌う~Singer’s Tips #24~
「今日はちょっと調子悪くて」 「最近ちょっと歌えてなかったから」 「自分、まだま …
-
-
上達と進歩は一瞬でやってくる!
どんなに練習しても、ちっともうまくならない・・・ そんな時はだれだって、心が折れ …
-
-
「からだレベル」でグルーブを感じる
8ビートは4分の4拍子の8分音符が8つで、16ビートはその倍で・・・ アクセント …
-
-
雑念チェーンをぶった切る!
練習や課題に集中できないとき、どうしていますか? 凡人には雑念がつきものです。 …
-
-
ピッチの悪い歌が致命的な理由
音楽はピッチ(音の高さ)という概念があるから成立するもの。 どんなにリズム感がよ …
-
-
仕事が嫌ならいつでもリセットすればいい
レコーディングの仕事に呼ばれるようになったばかりの、 駆け出しのころ。 現場の雰 …
-
-
話す発声と歌う発声?
「話す発声と歌う発声って違うんですよね?」 よく耳にする、不思議な疑問文です。 …
-
-
反面教師という大切な存在
「こんなピッチの悪い歌をわざわざ持ってきて、人に聴いてくださいって言える神経がわ …
-
-
ボイストレーナーになるということ
先日、知人のライブを見に行ったときのことです。 ひとり、ライブ開始を待っていると …
-
-
上達のキーワードは「イメージ力」
歌は、誰かに教われば上達するというものではありません。 もし、有能なトレーナーに …
- PREV
- ノドだけ労わりゃいいってもんじゃないので。
- NEXT
- 「そんなの歌ってても売れない」!?
