大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「夢喰って生きられないぞ」

   

大学3年だったか、それとも4年生だったか。

アルバイトをしていた東京タワーのおみやげ物やさんの店先で、
来る日も、来る日も、
これからどうしよう、
これからどうなるんだろう、
と悩んでいた頃の、心の重さとつらさは、
今でも、胸の鈍い痛みとなって、瞬時に蘇ります。

Jpopが大の苦手で、邦楽にまったく興味が持てない。
テレビに出たいわけじゃない。
有名人や芸能人になりたいのでもない。

漠然と、
「セッションミュージシャン」とか
「スタジオミュージシャン」、
「一流ミュージシャン」ということばにあこがれて、

でも、それがどんなものかもわからない。

 

人と違った道を夢見るとき、
周囲からのネガティブなコメントには事欠きません。

「夢喰って生きられないぞ」

「芸能界だもん。やっぱりそれなりのルックスがないと無理でしょ?」

「プロになるなんて、毎日カラオケつくる仕事するようなヤツのことだぜ」

「そんな程度の歌で、プロなんか無理でしょ?」

 

頭では全部わかっていることが、どうしても心では納得できない。

 

そして、心が納得できないことに、
限られた人生の、限られた時間や若さを注ぐ勇気はなかったのです。

来るかどうかわからない明日のために、
今日という日の夢を押さえ込んで、

安全や平和や安定という、
「プロミュージシャン」という言葉と同じくらい漠然としたものを買うのに、
一体なにを差し出せというのか?

自分の才能に自信のあるミュージシャンや、
すでに、あちこちから引きのあるアーティストなら、
けしてそんな迷いは持たなかったでしょう。

しかし、私が持っていたのは、若さと希望。
そして、持てあますほどの情熱だけでした。

 

そんなある日、ふと手に入れた音楽雑誌を飾っていた、
有名プレイヤーたちの写真を見るうちに、強い決意が目覚めました。

この人たちと、いつか、一緒に歌おう。
この人たちに、いつか、「キミの歌、いいね」といわれる人になろう。

 

どうやってそこに行くのかはわからない。
本当にやれるのかどうかもわからない。

ただ、それが私の決意でした。

心を決めた瞬間。
自分の心を支配していた重さが、少しだけ軽くなった気がしたものです。

 

それから10年。20年。
いや、もっともっと長い時間が経ちました。

当時あこがれていた、
あの雑誌を飾っていたミュージシャン、すべてと、
さまざまな形で共演することができました。

お褒めのことばもいただきました。

 

「何十年もやってりゃあ、そりゃ、そんなこともあるさ。」

「ついてたんだね。」

「そんなこと書いてるけど、実は元々、結構イケてたんじゃないの?」

 

なんとでも言ってください。
どれもきっと、正しいでしょう。

 

闇雲に、夢を追いかけろなんて、無責任なことを言うつもりはありません。

私に言えることは、

「心の声に従え。」

「決意したら、何があってもひるむな」

そして、

「戦場では最後に立っていた者が勝つのだ」。

 

今も、この言葉を座右の銘にして、日々戦っています。

 

まだまだ、これからです。

28862053 - woman lying in bed while reading a magazine

 

 - Life, 夢を叶える

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