大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人生のワームホールに飛び込む

   

大好きな作家、ロバート・A・ハインラインの小説の中でも、
とびきりワクワク読んだのが、『スターマンジョーンズ』。

主人公が、家族もお金も教育もないというどん底の世界から、
運と才能を余すところなく利用して、
宇宙飛行士にまで上り詰めるまでを描いた、
実にワクワクする少年SF小説です。
 
 
主人公は自分に、特別な才能があることを気づいていません。
なぜなら、その才能が試されるような生活をしていなかったからです。

ある社会では、まったく役に立たない才能が、
別の世界では、とんでもなく価値のあるものだったりする。

ひとつだけの価値観に縛られて、
物事を一方方向からしか見ないなら、
けして、その全体像をつかまえることはできません。

当然、その先にある可能性にも、気づくことはできないのです。

 

『スターマンジョーンズ』の主人公がすごいのは、
そんな、どん底の、夢も希望もない状況にありながら、
情熱と夢に引っ張られて、突拍子もない行動をしてしまうこと。
 
「まとも」に考えれば勝因はひとつもない。
いや、むしろ、敗因を数え上げたらきりがない。
 
それでも、彼は、前に進みます。
 
結局、主人公は、行動した者しか見ることのできない、
次のステージ、そのまた次のステージへと駒を進めることになるのです。

 

数あるハインラインの小説の中でも、この作品の、
この主人公がとびきり好きなのは、
 
彼が、常に、迷いながら、ひるみながら、
自分自身に自信が持てないまま、
それでも、心の信じるままに、一所懸命前に進んでいくところ。
 
そして、主人公の挑戦する心と情熱が
ついには、彼を人生のワームホールに飛び込ませてしまうところ。

 

地道に歩き続けるだけでは、
人生の景色をがらりと変えることはできません。
 
時には目をつぶって、心の向かう方向に、
後ろ向きに、どぼ〜んと身をゆだねてみる。
 
それは、あまりにもおそろしく、
限りなく不安を感じることなのだけれど。

 

どんな生き方をしたって、明日への不安は変わりません。
人は未知なるものを恐ろしいと感じるようにできています。

 

不安がブレーキになって、自分の才能に気づけないまま、
自分自身の可能性を試せないまま、
人生を終えることの方が、よほど恐ろしいではないか。

 

人生をくっきりと折り返した今になっても、
まだそんな思いが私を離してくれません。

 

たくさんの挑戦と勉強と出会いに彩られた愛おしき2016年も、
残すところ23時間。
 
2017年。
ワームホールに飛び込んでいくような気持ちで、
新たな年を迎えます。
 
今年も『声出していこうっ!」を読んでいただいて、
本当にありがとうございました。

35090458 - wormhole

35090458 – wormhole

 - Life

Comment

  1. MIKI より:

    ハインラインは結構読んでいるのですが、「スターマンジョーンズ」は読んだことがありませんでした。早速読みます。
    私も人生の折り返し点をはっきり越えていますが、毎日挑戦、毎日成長です。MISUMIさんのブログには、教えられることがたくさんです。
    ありがとうございます。
    2017年もよろしくお願いします!

  2. otsukimisumi より:

    >MIKIさん
    是非、読んでみてください。私はいつ読んでもワクワクします!
    いつもありがとうございます!
    本年もどうぞよろしくお願いいたします。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

Never Too Late!今しかない!

大好きな英語表現に”Never too late”があります。 直訳すると「〜す …

「悔しい」「うらやましい」「憎たらしい」がパワーの源

自分が叶えたくて仕方のない夢を、 身近にいた人があっという間に実現してしまったと …

セルフイメージは声に出る

歌のレッスンをしていると, 歌う前から、「歌えない」「失敗する」と決めている人に …

人はアウトプットすることで成長する

「学ぶ」といえば、本を読んだり、音楽を聴いたり、人の話を聞いたりと、 インプット …

「できないこと」は「やらないこと」よりも、ずっとずっとマシ

「いつかやりたい」「いつかやろう」と思い続けていること、いくつありますか? &n …

「情報過多」なのではなく、「思考過多」。

毎日、ものすごい量の情報にさらされています。 朝、PCを立ち上げ、webを開いた …

「できないこと」ではなく、 「今できること」に意識を向ける

うまく行かないときに、 うまく行かないところにばかりフォーカスすると、 本来でき …

自分が生きてきた時間を過小評価しない。

誰にでも、自分が取るに足らないと感じるときはあるものです。 傍からは、順風満帆に …

声の変化と向き合う vol.2〜変化を受け入れ、味わい、楽しんだものが勝ち

「声の老化」についての第2回です。   第1回は、年齢を免罪符にせず、 …

人生を変えてくれた、最善と最悪に感謝する

最近、自分の人生の棚卸し作業というのをしています。 長年生きているというのもあり …