大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「才能の超回復」を繰り返して、人は成長するのである。

   

「超回復」ということばを聞いたことがあるでしょうか?

筋トレで傷ついた筋肉は、
休養と栄養を与えることで、24〜48時間で修復されます。
このとき修復される筋肉はトレーニング前より、
筋肉量が増加すると言われています。

この現象を超回復と呼ぶわけです。

この超回復、筋トレさえすれば誰もが得られるというわけではありません。

「筋トレで筋肉を傷付ける」には、
自分をある程度限界まで追い込まないとダメ。

筋肉痛が起きるくらいの強度のトレーニングをしなければ、
そもそも筋肉が傷ついていないので、超回復も起きません。

軽いトレーニングを楽〜にこなしているだけでは筋肉は成長しないわけです。

 

さて。

 

プロになっても伸び続ける人と、伸び悩む人というのがいます。

一般の人が、ひとつの仕事を何年もしていれば、
どんどんノウハウやスキルがついて、
その仕事のプロフェッショナルになっていくように、

ミュージシャンだって、
毎日音楽をやってごはんを食べているわけですから、
当然、年々経験を積んで、
ノウハウやスキルが身について、
それなりに実力が上がっていくのは当たり前のことです。

 

しかし、ポイントは、
「長年やっていれば、誰でも実力がつく」というところ。

10年経てば10年分、
20年経てば20年分、
キャリアや実力が積み重なっていくのは、みな同じ。

その観点から行けば、
同世代のミュージシャンは、
せ〜ので、全員同じように成長をしていくはず、
と言うことになります。

 

ところが、実は、5年、10年、20年と
キャリアを積むうちに、明らかに、
それぞれの成長に、どんどん差がついてきます。

最初は目立たなかった人が、気がついたらぐっと実力的に浮上していたり、

反対に、そこそこ顔を売っていたプレイヤーが、
目立たない存在になっていることもあります。

 

成長は超回復のたまものと考えるなら、伸び悩む原因は2つにひとつ。

トレーニング不足で「そもそも筋肉痛が起きていないか」、それとも、
「必要なだけの休養と栄養が取れていないか」のどちらかです。

 

では、「そもそも筋肉痛が起きていない」とは、
どんなパターンを言うのでしょう。

最初は必死にならないとできなかった仕事に、次第に慣れてくる。

譜面を読むことも、曲を覚えることも、
スタジオでヘッドフォンをかぶることも、
クリック通りに演奏することも、
モニターの調整も、
パフォーマンスの見せ方も、

ある程度自分の「型」ができあがって、
そこそこのグレードで演奏できるようになると、一安心。

要求されている最低限のお仕事さえすれば、
現場で叱られることもなく、
ちゃんと約束のギャラを支払ってもらえます。

長年、同じ仕事をしていると、誰にでも起きることですが、
「こんなもんでいいか」という意識が、多かれ少なかれ働いて、
身を切られるような苦しさを感じることも、
ほとんどなくなっていきます。

 

これでは、慣れきったトレーニングを
毎日ルーティンでこなしているのと同じ。

「超回復」は期待できません。

 

もうひとつは、「必要なだけの休養と栄養が取れていない」、
ワーカホリックパターン。

自分を限界まで追い込んだり、その状態を克服したりすると、
人間の脳はご褒美に脳内快楽物質をくれて、
「いい気分」にしてくれます。

次々と新しいことに挑戦しては、
それを克服していくことで、周囲にも認められる。
自分で自分を誉めたくなることもしばしば。

やがて、その脳内快楽物質に中毒してしまうと、
どんどん自分を追い込むようになります。

手帳が埋まっていないことで、不安や罪悪感を感じ、
ガツガツとむしゃらな行動ばかりが先行するようになります。

中毒症状というのは、
ニコチンだろうが、アルコールだろうが、麻薬だろうが、
たとえ、脳内物質だろうが、同じです。

「やめられなくなる」のです。

しかし、冒頭でも紹介したように、
超回復をするためには、「休養と栄養」が不可欠。

現役スポーツ選手でも、
トレーニング中に出る脳内物質に中毒して、
カラダを壊してしまう人が後を絶たないのと同じ。

休養と栄養(=学習)なしには、成長どころか、
回復すらできないのです。

 

この「自分を追い込む」と「休養と栄養を取る」をバランスよく
取り入れていくのは、実に難しいもの。

ほとんどの人がどちらかに傾きがちです。

 

しかし、人間は変化するのが前提ですから、
成長しないものは、後退、衰弱していくだけです。

 

自分に甘んじず、
しかし時には自分を甘やかして、

どんどん成長していきたいものです。

51615593 - photo of a man sitting backstage practicing his guitar.

コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』
購読はこちらから。

 - The プロフェッショナル

  関連記事

ヴォーカリスト必読!マイクとモニターの超絶役に立つお話!!!〜前編〜

昨夜のブログ、そしてメルマガにて、モニターやマイクのお話を書いたところ、 なんと …

パフォーマーはいつだって、その美意識を試されているのだ

ヴォーカリストは、すっぽんぽんになって、 自分の内側外側をさらけ出すようなお仕事 …

楽しくやるから、いい仕事ができる。

ニューヨーク時代、日々の生活で最も気になったのは、 巷で働く人たちのやる気のない …

「なんとなく」や「しかたなく」でキーを決めない。

作曲、作詞、アレンジ、レコーディング・・・ 作品づくりにはさまざまな過程がありま …

プロフェッショナルの徹底ピアノ調整!

10月末から1週間ほど休業&家を留守にするということで、 思い切って、ピアノの一 …

失敗も含めて「ライブ」なんだ。

どんなに、どんなにがんばって準備をしても、 ライブやコンサートには、失敗やアクシ …

自分との約束

プロフェッショナルやスペシャリストを志すとき、大切なことはシンプルなことばかり。 …

ヴォーカリストのための「練習の3つのコツ」

プライベートレッスンでも、MTL12でも、そして音大でも、 クライアントやアーテ …

「自分の名前」と、今一度向き合う。

作詞者は曲のタイトルを。 編集者は、本のタイトルを。 起業家は会社名を。 そして …

ことばに「自分の匂い」をしみつける

ことばには、話す人の匂いがあります。 同じことを言うのにも、ことばの選び方や言い …