大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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どんなに優れたアイディアも、 形にならなければ存在しないも同然

      2017/06/05

昔読んだ本に、「完璧主義のぐず」ということばがありました。

 

とにかくなんでも、妥協なく完璧にやりたい。

そんな想いが強すぎて、何年経っても、何も完成できない。
酷い場合になると、なにもはじめられない、
そんな人のこと。

 
似たような人を何人も知っているせいか、
その本のタイトルも覚えていないのですが、
このことばはいまだに、
ことあるごとに使いたくなる、インパクトのあることばです。

 

どれだけ優れたアイディアも、
形にならなければ存在しないも同然。

どれだけ才能がある人でも、
作品を作り出さなければ、凡人となんら変わりません。

どれだけ素晴らしいパフォーマーも、
演奏を披露しなければ、なにも演奏できないのとおなじ。

 
これが”Real Artist Ships”、
「本物のアーティストは”出荷”する」と、
スティーヴ・ジョブズが語ったことばの真意でしょう。

 
誰に乞われるわけでもなく、
誰かが待っていてくれるわけでもなく、
 
無から、自分だけのエネルギーで、
作品をクリエイトし、
とにもかくにも、自分の落としどころまで完成させ、
“出荷”するための、道を開くことは、

それをなし得たことのない人にはとうてい理解できない、
困難と苦悩の連続です。

 

作品のクオリティや、
自分自身のアイデンティテイにこだわるほど、

 
「これで完成」という落としどころ見えなかったり、
完成前に、自信を失って、放り出してしまったり。

 
せっかく完成したとたんに、
とてつもなくつまらないものをつくっているような気がして、
そのまま倉庫にしまい込んだり、ぶち壊してしまう人さえもいます。

 

そうして、いつまでたっても自分自身の作品を、
完成させられない人に限って、

誰か他の人がしていることを
面白くもなさそうに批判したり、

「あんなことなら、オレの方がよほど早く考えていた」
というような、ことを言うものです。

 

クリエイターにとって、価値観はいろいろですから、
一概に何が正しいと言うつもりはありません。

 
しかし、私自身は、

最高級の材料が集められて、
すべて完成したら、世界一の作品になるはずの、
倉庫に積まれた未完成の部品の山よりも、

自分の身の丈にあった、
ベストオブミーの作品を、
全力で完成させ、”出荷”することに、
よほど大きな意味を感じます。

 

そこで、評判なり、評価なり、人気なり、
なんかしらのフィードバックを受けてこそ、
クリエイターもパフォーマーも、成長していくもの。

 

そうして、勇気を出して、
自分自身を試してこそ、
真の完全性は磨かれていくものなのではないか。

 

 

人生は短い。
他人の思惑を気にしたり、
躊躇したりしている暇はありません。

Just do it!

心配するのは、それからだ。

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