リスペクトくださいっ!
私の通った女子校には、なんとも不思議な風習がありました。
学校のある駅を降りた瞬間から、
その謎めいた光景ははじまります。
下級生は(主に運動部でしたが)、
駅を降りた瞬間から、
きょろきょろと落ち着きなくあたりを見回す。
そして、上級生らしい姿を認めるや否や、
びっくり人形のようにどぎまぎとしながら、
上級生にかけよって、
大変申し訳ないことをしたというようなようすで、
口を覆いながら、
いかにもひそひそ声で、
「おはようございます」と蚊の鳴くような声で挨拶をし、
そのまま、校門を入って、それぞれの教室へ向かうまでの間、
その上級生の後ろにぴたりとついて歩く。
上級生が、誰かと立ち話をすれば、
そのまま適当な距離を保ったまま待ち、
なにかの理由で走ろうものなら、一緒にどどどとひっついて走る。
時には、上級生の後ろに下級生の列がぞろぞろとできて、
走る上級生の後ろを、ぞろぞろと一斉に移動する様は、
さながらバッファローの大移動のようでした。
好きな上級生(女子高ですから)を、
そうやって毎朝追いかけていたという子もいましたし、
そんな下級生に対して、
「もういいから行って!恥ずかしいから!」
と言う上級生もいれば、
「あの子、あたしのこと無視したよね!?」と、
後ほど、その下級生を呼び出してお説教をした上級生もいたとか。。。
今考えれば、これぞ文化。
昭和の女子高の微笑ましい光景とも言えましょう。
どちらも好きでやっているわけですから、
文句を言うようなことではないでしょう。
しかし、反骨精神旺盛だった当時の私は違いました。
単に1年や2年、早く生まれたというだけの理由で、
一体全体どんな優劣があるというのか、
優劣でなければ、その序列の根拠は何なのか、
真剣に悩み、憤っていたものです。
先生方ともめることも、多々ありました。
友人との会話の内容が「女子高生に不適切だから」という理由で、
生徒証を取り上げられる。
「音楽室でシャウトしたから」という理由で、
音楽の成績をいきなり6段階も落とされる。
先生に理不尽なことを言われた、された、
と号泣する同級生を引き連れて、
職員室で「納得できるように説明してください!」と
談判したことも何度かあります。
なんとも生意気な生徒でした。
尊敬する、大好きな先生もたくさんいる一方で、
一部の先生たちを、
「先生」という肩書きの元に、
無条件に私たちの尊敬を得られると考えている、
思い通りに私たちをコントロールできると思い込んでいる、
どんな理不尽なことも、力業で納得させようとする・・・
などなどと一方的に決めつけ、
圧倒的な不信感を感じていました。
ティーンエイジャーゆえの誤解も、
思い込みも多分にあったでしょう。
しかし、あの頃芽生えた「反抗心」は、今も変わりません。
先生や先輩に敬語で接する、というのはわかる。
ものを教えてくれる先生や先輩に対する尊敬や感謝はもちろん大切です。
私自身、礼儀に欠く人は苦手ですし、
他者に対する尊敬や感謝のない人と一緒にいると、
居心地悪く感じることしばしばです。
しかし、礼儀と服従とは別です。
自分が自分でいることに許しも免罪符もいりません。
一方的に押しつけられる「根拠ない序列」は、
何十年経った今も受け入れられません。
誰にだって、自分の意見を持つ自由、
自分の意見を口にする自由、
それを表現する、体現する自由はあるはずです。
誰かの意見が気に入らないと、
誰かの存在が気に入らないからと、
相手との関係性を一方的に断ち切ったり、
相手の存在を完全否定したりする。
そんな権利は誰にもない。
自分のボスは自分自身なのです。
自分自身をリスペクトするのと同じように、
人をリスペクトする。
100人なら100人、
すべての人の意見を受け入れることは不可能だから、
100人には100人の意見があると言うことを受け入れる。
そして、そのひとつひとつをリスペクトする。
そんな簡単なことがなぜ、そんなに難しいんだろう。
とりとめもなく、そんなことを考えた一日でした。
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